真珠湾攻撃から80年:イスラエルがシリアのラタキア港を奇襲、イランから輸送されたミサイル破壊が目的か
日本海軍が米国ハワイ準州オアフ島真珠湾の米海軍基地および太平洋艦隊に対して行った奇襲攻撃、いわゆる真珠湾攻撃から12月7日で80年が経ったが、世界では今も各地で戦闘、そして爆撃がやまない。
奇襲攻撃を受けるシリア
アジア大陸の西の端に位置するシリアも12月7日に異例となる奇襲攻撃を受けたが、日本をはじめとする西側諸国のメディアがそれを報じることはほとんどなかった。
奇襲を仕掛けたのはイスラエルだった。
国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、イスラエル軍戦闘機が午前1時23分にラタキア市南西の地中海沖上空からラタキア港内のコンテナ・ターミナルに対してミサイル多数を発射し、これによって商業用コンテナ多数が炎上した。
運輸省の発表によると、火災は、ラタキア港公社とラタキア国際コンテナ・ステーション社の社員らの消火活動によって数時間で沈下され、船荷の積み降ろしとコンテナの輸送作業は炎上・破損したコンテナが撤去されたのちに再開された。また、幸いにも深夜の奇襲だったことから、人的被害はなかったと見られる。
標的はイラン製のミサイル?
奇襲攻撃に関するイスラエル政府、軍の公式発表はない。だが、イスラエルの『エルサレム・ポスト』は、ボスポラス海峡の船舶の動きを監視しているトルコのヨルク・イシュクのツイッターの書き込みなどに基づき、それが最近シリアに到着したイラン製のミサイルを狙ったと思われると伝えた。
イシュクは12月2日、米財務省が制裁対象としているコンテナ船アルタバーズ号がイランのバンダレ・アッバース市からラタキア市を経由してトルコのボスポラス海峡を通過し、黒海に入り、ルーマニヤのコンスタツィアに向かったと綴っていた。
イシュクは、この書き込みを補うかたちで奇襲攻撃の直後、「アルタバーズ号は11月26日にラタキア市に到着、11月28日に出港した」、「攻撃はアルタバーズ号が貨物を荷揚げしたまさにその場所に対して正確に行われた」と書き込んだ。
イスラエル首相の発言
真偽は定かではない。だが、イスラエルのナフタリ・ベネット首相は、中東における「悪の部隊」(bad forces)と常に戦っていると主張し、シリア各所に展開する「イランの民兵」、そしてこれを支援するイランを狙って攻撃を行ったことを暗に認めた。
「イランの民兵」とは、シーア派宗徒とその居住地や聖地を防衛するとして、イランの支援を受けてシリアに集結し、シリア・ロシア両軍と共闘した外国人(非シリア人)民兵の総称である。イラン・イスラーム革命防衛隊、その精鋭部隊であるゴドス軍団、レバノンのヒズブッラー、イラク人民動員隊、アフガニスタン人民兵組織のファーティミーユーン旅団、パキスタン人民兵組織のザイナビーユーン旅団などを指す。
キプロス、ギリシャとの三カ国首脳会談後の記者会見で、ベネット首相はこう述べた。
アサド大統領のいとこがロシアを批判
一方、リフアト・アサド元副大統領の息子でアサド大統領のいとこでもあるドゥライド・アサド弁護士はフェイスブックを通じて、イスラエル軍のミサイル攻撃をめぐるロシアの対応を厳しく批判した。
アサド弁護士は、ロシアがシリアに供与しているS-200、S-300に装備されているレーダー装置が遠距離で標的を捕捉し、迎撃できたはずだとしたうえで、「ロシアがイスラエルの空爆について事前に承知していたとしたら…、ロシアは(防共)協定が規定している通り、シリアに対するあらゆる外部からの攻撃を防御する責任があり、それゆえに困惑はさらに増幅する」と非難した。
イスラエル軍に2021年1月以降だけで、シリアへの攻撃(ミサイル攻撃、砲撃)は30回に及ぶ(1月6、13、22、30日、2月3、15日、3月1、16日、4月8、22、24日、5月5、6、10、14日、6月8日、7月19、22、25日、8月17、19日、9月3日、10月8、13、25、30日、11月3、8、17、24日)。これらの侵犯攻撃のほとんどは、日本では報じられていない。
なお、シリアとイスラエルは、1948年5月のイスラエル建国宣言以降、現在に至るまで戦争状態にある。