Yahoo!ニュース

「学生のエントリーが来ない」…悩む企業人事担当者と、その活路とは

酒井一樹就活SWOT代表
(ペイレスイメージズ/アフロ)

「学生のエントリーが来ない」、今企業人事担当者はそんな問題に頭を悩ませている。

あるいは、「エントリーは来るが会社説明会に来てもらえない」という声もある。

新卒採用を行う企業の中には、いきなりエントリーシートを受け付けて選考に進むのではなく、一旦は会社説明会への参加を必須にしているところも多い。

しかしそれに対して学生からは「説明会に行かないとエントリーできないなんて面倒だ」「時間が限られているのにわざわざ行かないといけないなんて不親切」との声も多い。

(もちろん企業側は嫌がらせで説明会を必須にしているわけではなく、実際にそう感じて発言をする学生がいるという事実を説明しているにすぎない)

これは今に始まったことではなく昔からそういった声はあった。

しかし採用を実施する企業の増加と採用枠の増加、学生の活動の鈍化により、より深刻になってきているのだ。

【説明会必須=嫌がらせではない】

採用する側の視点としては、自社を理解してもらい志望度を高めてもらうためにも説明会に来てから選考に進んで欲しいと考えるのは自然なことである。特に就活を始めたばかりの学生の多くは「一般消費者として持つ企業イメージ」でエントリー先を選ぶ事が多く、エントリーする企業について表面しか知らない事が多い。

もちろん説明会を介さずに情報を伝える方法はあり、企業もあの手この手で就活生に自社の情報を届けようとはしているが、就活に関する情報は氾濫しており、「いつでも見られる」情報は大体が後回しされてしまう。

結果として、「説明会に来てもらう」「会って話す(リクルーターなど)」というわかりやすい手法が自社を伝えるための手段となってしまっている。

ただ近年は就活生の総数自体が減少傾向にあり、かつ一人あたりの「会社説明会の参加回数」も減っている。

就職みらい研究所の調査によると、「第一志望群」に内定できている学生は8割を超えており、

当の学生(内定者)も、「最初の方でエントリーした企業の中で決まってしまい、持ち駒を追加する必要がなくそのまま内定承諾をした」と話すことが多い。

人事目線で見ると、就活スタートして間もない時期に学生にアプローチしておかなければ接触する事すらできなくなってしまう。

2020年卒の採用を行う企業は、ナビサイトに情報を載せている企業だけ数えても数万社に上る。

ただ会社説明会を企画しても母集団形成できるだけの学生は集まらず、埋もれてしまうのだ。

【活路はウェブ説明会?導入事例が如実に増加中】

そんな中で企業側も「ウェブ説明会」の開催を徐々に増やすようになってきている。

移動の必要がないため地方の学生にもアプローチがしやすく、学生にとっても負担が少ないと好評だ。

「ウェブで会社の魅力が本当に伝わるのか」と最初は不安な人事も多いが、適宜リクルーターや少人数制の座談会を併用する事でうまく棲み分けをしているようだ。

ウェブ説明会に「チャットボット機能」を導入し、その場で質疑応答を受け付けるという工夫も行われている。

採用支援会社でウェブ説明会の導入支援を行う担当者は、「数年前は、ウェブ説明会を企画しても視聴してくれる学生は少数派だった。しかし19卒学生への調査では、4割以上の学生がウェブ説明会の視聴経験があったことがわかりました。徐々に市民権を得ています。」と普及状況に自信を持つ。

学生の意見としても「ウェブ説明会なら、現時点で興味がない企業でも気軽に参加できる」「ホームページを読んでも理解しづらいのでウェブ説明会の方がいい」と情報収集の手法として評価しているようだ。

リアルでの会社説明会と比較して、すぐに参加できることも短期決戦・早期化する就活市場においてアドバンテージだ。

録画型のウェブ説明会であればエントリーしてそのまま視聴できるよう設定しておくこともでき、設置したアンケートでそのままフィードバックを得ることも可能だ。

短期間で終わる就活だからこそ、学生に歩み寄っていかないと母集団形成すらままならない…。そんな状況がまだしばらく続きそうだ。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

酒井一樹の最近の記事