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レイザーラモンRGの「あるある」はなぜ面白い?

ラリー遠田作家・お笑い評論家

2013年、テレビの世界を席巻している芸人と言えば、AKB48の前田敦子のものまねでお馴染みのキンタロー。だろう。2012年にはワイルドキャラのスギちゃんがその位置にいた。時代を象徴する芸人というのは、毎年のように誰かしら出てくるものだ。

そんな中で、今から8年前の2005年に一世を風靡していたのが、レイザーラモンHGだ。黒いホットパンツに身を包み「ハードゲイ」を名乗って、ひたすら腰を振りまくる。「フォー!」という彼の決めぜりふは流行語にもなった。

だが、強烈なキャラを持っている芸人ほど飽きられやすいのは世の常。1年足らずで徐々に勢いは衰えて、彼の姿をテレビで見かける機会はどんどん減っていった。

それから8年。2013年の今、お笑い界で脚光を浴びているのは、HGではなく、その相方を務めるレイザーラモンRGである。彼はいまやバラエティ番組やお笑いライブシーンでは欠かせない存在になりつつある。この7/1(月)にはレイザーラモンRGが主演を務める特番『あるあるJAPAN』(TBS)も放送される。

「レイザーラモン」とはHGとRGの2人から成るコンビの名前である。もともとはそれぞれ別の芸名を名乗っていたのだが、RGはHG(ハードゲイ)を名乗る相方の人気に便乗して、自らも芸名をRG(リアルゲイ)と改めて、リアルなゲイというキャラクターを売りにしていった。

だが、HGが大ブレイクしていた時期には、HGばかりがもてはやされていて、RGにはなかなか活躍の機会がなかった。そして、HGの人気が収束すると、RGがテレビに出る機会はほとんどなくなってしまった。

だが、彼はその後も地道な努力を続けていた。リアルゲイに代わる新たなキャラを求めて、いろんなことに手当たり次第に取り組んでいた。例えば、少し顔が似ているからということで、市川海老蔵のものまねキャラ「市川AB蔵」を演じたこともあった。

そんなRGが、試行錯誤の末にようやく見つけ出したのが「あるある」だった。「あるあるネタ」を懐メロに乗せて華麗に歌い上げる、という新しい形の歌ネタが、芸人仲間のあいだでじわじわと話題になり始めたのだ。

RGは、何かお題を与えられると、それにまつわる「あるあるネタ」を即興で考えて、歌に乗せて披露すると言う。そして、突然歌を歌い始める。でも、その歌の歌詞には肝心の「あるあるネタ」がなかなか出てこない。周りの芸人たちがしびれを切らして「早く言え!」などと言うのも構わず、延々と歌い続ける。そして、もったいぶって最後の最後にあるあるネタを披露する。

このネタは、あるあるネタで笑わせることを主な目的にはしていない。あるあるネタを売りにするのではなく、それをなかなか言わないで引っ張る、ということ自体をネタにしているのだ。これは笑いの技法として画期的だった。

RGがあるあるソングを歌うと、周りの芸人たちは驚きあきれながらもツッコミをいれ、苦笑いを浮かべる。そんな芸人たちとのコラボレーションによってこのネタは成立している。このネタがヒットしたことで、RGの人気も急上昇。彼はいまや、HGにおんぶにだっこの存在ではなく、レイザーラモンというコンビを支える屋台骨となっている。

スマホ版『情報・知識事典 imidas』より改変

禁・無断転載

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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