乗客の戻る東海道新幹線により充実したビジネス環境を 「S Work」リニューアルが細かい!
東海道新幹線の利用者がもとのように戻りつつある。JR東海は東海道収入の運輸収入について、2018年度に比べて80%まで戻ると想定している。現在までの四半期決算を見ても、第三四半期が前年同期比2.6倍となっており、運輸収入の回復が大きく影響している。
筆者も少し前に取材の行きかえりに東海道新幹線に乗車し、グリーン車までも混雑している状況に驚かされた。
そんな東海道新幹線は、コロナ禍前は旺盛なビジネス需要に支えられていた。東西を行き来するビジネスパーソンが多く乗車、車内ではパソコンを開いて、というのがよく見られる光景だった。
コロナ禍にあって東海道新幹線の利用は大きく減った。そんな中でも、コロナ禍終了後に東海道新幹線の利用者はかなり戻って来ると考えたJR東海は、「S Work」車両を東海道新幹線に2021年10月に導入した。直通するJR西日本の山陽新幹線でも同じ車両を設けている。
完全になくならない「対面」を見据えたJR東海の戦略
コロナ禍終了後に鉄道の利用者は戻ってこないのではないか、という悲観的な見通しを立てた多くの鉄道事業者に対し、JR東海は対面でのビジネス需要は無くなることはなく、かなりの程度乗客が戻って来ると考えている。
コロナ禍はいまだ収束せず、感染の再拡大が懸念されている状況だが、それでも東海道新幹線の乗客は戻っているという状況になった。
人々は「対面」を求めている。とくにビジネスシーンでは、「対面」が重要であることもある。
そんな中で、よりいっそうビジネス利用を促進させようという戦略を取っているのが、JR東海である。
その中に位置づけられたのは、「S Work」車両である。新幹線の中でも、パソコンの使用などの環境を充実させることで、ビジネス需要をしっかりとつかむ。落ち着いてゆったりしたい一般客と、寸暇を惜しんでビジネスに取り組むビジネスパーソンの要求に応えるべく、ビジネスパーソン専用の車両を設けた。
そんな「S Work」車両が、この秋さらに変わろうとしている。
新しい「S Work」車両とは?
まずは「S WorkPシート」の導入だ。7号車の一部の3人がけ席の中央(B席)にパーティションなどを設置し、A席とC席を「S WorkPシート」とする。合計10席である。パーソナルスペースがより広くなり、より快適に仕事ができるようになる。パーティションにはドリンクホルダーも設置する。ノートパソコンなどの入力がしやすくなるように、手元にスライドさせると傾くテーブルに改良する。10月20日のサービス開始の際にはEXサービスで利用できる普通車指定席として発売を開始するが、2024年春ころには駅窓口でも発売する。この座席を使用するには、通常の普通車指定席に1,200円を追加した額を必要とする。
また東海道・山陽新幹線の「S Work」車両は「ひかり」「こだま」にも拡大する。
「S Work」車両全体にもいえることとして、リクライニングの角度を小さくし、前席の背もたれが倒れてきてもモバイル端末などを利用しやすい環境とする。ほかにも、わかりやすいようにロゴマークを掲出する。
細かな工夫で、「S Work」車両はビジネスパーソンをアシストする。
またビジネス利用の関係では、N700S全編成に「ビジネスブース」を整備し、予約システムと連動した電気錠を設置、有料化する。2024年度中にN700S全編成に導入する予定だ。
細かいリニューアルでビジネス利用者の心をつかむ
ふつうの新幹線での座席では、ビジネス利用にちょっとだけ心地が悪いということはある。新幹線は座席の間隔が広いため、テーブルがちょっと遠い。リクライニングが深くできるため、ノートパソコンと当たる。3列席はちょっと狭いのでもっとゆったり仕事をしたい。こういった細かいところの改良で、「S Work」車両はより使いやすくなる。
細かい改良は、JR東海のもっとも得意とすることである。その特性を活かし、「S Work」はより快適なビジネス環境を提供することになるだろう。
個人的には、行きかえりの新幹線くらいゆっくり休めるほうがいいのでは、と思うものの、「休む人」と「働く人」を分けるためにも、こういった車両は必要なのだろう。