アマゾンの顧客満足度が低下、競合ECサイトを下回る 検索結果や商品に不満か
米アマゾン・ドット・コムは、この四半世紀の間に急成長を遂げた米テック大手の1社。その経営理念は顧客満足度向上の追求だが、ここ最近のデータを見ると、同社に対する消費者の熱意が低下しているようだと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。
「大変満足」80%下回る、パンデミック時65%
米金融調査大手エバコアISIがアマゾンの顧客を対象に実施した調査によると、サービスに「非常に満足」あるいは「大変満足」していると答えた人の割合は79%だった。ほぼ10年前のピーク時の88%と比較して大きく低下した。2020年の新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)時には65%まで下がったという。
米国ミシガン大学で開発された顧客満足度指数(ACSI、American Customer Satisfaction Index)を使用した、400社超を対象にした調査によると、アマゾンのスコアは100点満点中78点で、5年前の86点から低下した。2000年以来最も低いスコアだ。また、20年と21年は、会員制スーパーの米コストコ・ホールセールや米百貨店大手ノードストロームのEC(電子商取引)サイトを下回った。
マーケットプレイスの急拡大や検索精度が要因か
アマゾンは米国最大のオンライン小売業者であり、会員プログラム「Prime(プライム)」の世界加入者数は2億人超だ。米調査会社のCIRP(コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ)によると、米国ではPrime会員になって2年以上の人のうち98%近くが更新を続けている。離脱する人がほとんどいない状態だという(米シアトル・タイムズの記事)。
こうした中、アマゾンの顧客満足度が低下した。その要因は複数あるとアナリストやアマゾンの元従業員らは分析している。アマゾンはサードパーティーと呼ばれる外部小売業者が出品する「マーケットプレイス」事業を急拡大してきた。今やその流通取引総額(GMV)は同社ECサイト全体の半分以上を占める。
アマゾンはサイト内で広告事業を展開しており、サードパーティーが商品検索の広告枠を購入できるようにしている。前者によってカスタマーサービスの品質が低下し顧客に不安を与えている。後者によって検索精度が低下し、顧客の不満が高まっている可能性があるとアナリストはみている。
エバコアISIは、「サードパーティーの拡大と検索広告が、マーケットプレイスの質を低下させた可能性がある」と指摘する。「アマゾン評価の低下は、近年競合小売業者が自社サービスの質を向上させたことも関係する」(エバコアISI)。
アマゾンの従業員らによると、同社は顧客の不満が高まっていることを認識しており、さまざまな施策を講じている。例えば検索履歴に基づき、個々の顧客に合わせたアルゴリズムを採用することで、ユーザー体験の向上を図っている。
アマゾンの広報担当者によると、傘下のスーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」のセクションでは厳選した商品を提供している。21年は模倣品や詐欺などの不正行為の対策に巨額を投じた。悪質なサードパーティーによる偽の評価は検索結果に影響を及ぼすため、その対策も講じているという。
偽評価や模倣品の横行で対策強化
かねて、アマゾンのECサイトには偽の評価や模倣品が横行していると指摘されており、同社は対策に力を入れている。22年7月には、SNS(交流サイト)のFacebook上で活動するグループ1万件以上の管理者を、アマゾン本社のある米ワシントン州の裁判所に提訴した。
アマゾンによれば、これらのグループは、アマゾンのサイトに偽の評価を投稿する人を募っていた。金銭などと引き換えに、販売につながる高評価を投稿するよう依頼していた。カーステレオやカメラの三脚などアマゾンサイトで販売されている商品数百点が対象になっていた。こうした行為は、米国や英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、日本のサイトで横行している。
また、アマゾンが22年6月に公表した模倣品対策に関するリポートによると、同社は昨年、取り組みに9億ドル(約1300億円)以上の費用と1万2000人以上のスタッフを投じた。
未然に食い止めた悪質アカウントは250万件以上。300万点以上の模倣品を突き止め、顧客への被害と他の流通網での再販を阻止したという。詐欺や権利侵害、模倣品、粗悪品といった重大な問題があった出品は計40億件以上に上り、消費者に被害は及ばなかったと説明している。
(本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2022年11月23日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)