来春JRダイヤ改正で消える特急の自由席 タイトな乗り継ぎ対策、「着席こそサービス」に認識が変化
先日、2024年3月16日のダイヤ改正について発表された。
大きな目玉は、もちろん北陸新幹線金沢~敦賀間延伸である。敦賀まで延伸することで、福井から東京方面がより近くなり、新幹線ネットワークが拡大していく。併せて並行在来線の第三セクター化で、地域の実情に見合った高頻度ダイヤが実現する。なにせ、北陸本線は「特急街道」。普通列車はすき間を縫って走っていたのだ。
来春のダイヤ改正では、もう一つ注目すべきことがある。多くの幹線系特急で、普通車自由席が廃止になり、指定席のみになることだ。
JR東日本、かつては自由席ニーズが高かった特急が指定席オンリーに
JR東日本では、「さざなみ」「わかしお」「しおさい」といった房総特急が全車指定になる。これらの特急は、現在では通勤向け特急という位置づけが強くなり、朝の東京方面と夕方の房総方面が混雑しているという状況になっている。
自由席が主体の現在では、車掌が車内を回って自由席特急券を販売するという風景がよく見られたものの、それが現在では手間となっている。
指定席にし、チケットレス特急券で割安にすることで、より多くの人に座ってもらえるようにしたいという考えである。
房総特急は、速達性はそれほど高いわけではなく、定時性くらいしか売りがなかったりする。その場合、特急列車の自由席で乗客を立たせるということが正しいのか? ということになる。もちろん、正しくはない。速達性がサービスというよりも、着席こそサービスという考えが、通勤客の多いこれらの列車を指定席オンリーにしたといえる。
着席ニーズの高い列車を全席指定にするJR北海道
JR東日本と同じ「えきねっと」の予約システムを使用しているJR北海道では、「北斗」「すずらん」「おおぞら」「とかち」が全車指定席に、「カムイ」「ライラック」が指定席を拡大する。
「北斗」などは短編成化しているものの、指定席は混雑しており、着席したいというニーズが高い列車といえる。「おおぞら」「とかち」も同様だ。この3列車は気動車列車であり、増結が容易であるとはいえるものの、増結しないで着席する人を増やすにはどうしたらいいのか、ということを考えた結果であると見ることができる。繁忙期の増結時も全車指定席となる。「すずらん」は、札幌~東室蘭間が「北斗」と並行しており、それに合わせたといえる。
なお、特急定期券「かよエール」については、追加料金なく座席指定を確保することが条件付きで可能になる。
新幹線乗り継ぎ列車を全車指定にするJR西日本
JR西日本では、「サンダーバード」「しらさぎ」「スーパーはくと」「スーパーいなば」「やくも」が全車指定席になる。「サンダーバード」「しらさぎ」は、北陸新幹線との乗り継ぎが前提となったダイヤとなり、大阪や名古屋から金沢方面をめざす利用者は全員敦賀で乗り換えとなることから、これらの人への着席サービスの保証として、全車指定にしたと見ることができる。敦賀での乗り継ぎ時間は8分程度なのだ。
「スーパーはくと」は、大阪発着列車(新大阪発着列車ではない)がほとんどとなり、姫路での「のぞみ」との乗り換えを前提にしたダイヤとなった。途中駅での乗り継ぎのため、指定席である必要性が高いといえる。「スーパーいなば」は、車両や経由区間が「スーパーはくと」と重なるため、合わせたのだろう。
「やくも」は、4月6日から新型車両273系を導入するのを前に、新幹線からの乗り継ぎをより短時間でできるように全車指定にしたといえる。273系は、1編成4両と非常に短編成であり、全車指定にすることで着席サービスを徹底化させなければならないという課題もある。また273系は振り子式車両であり、立って乗るのがつらいという問題もある。
指定席全盛の時代で自由席が残る列車とは?
私鉄の有料特急は、全車指定席となっている。「着席こそサービス」という考えだからだ。特急に自由席があるのは、JRだけである。JRも以前では特急は指定席が原則であり、自由席は主に急行列車のものだった。「エル特急」という呼び名が国鉄時代に導入され、高頻度運転や自由席連結などをアピールし、特急の大衆化の役割を果たした。
だが、自由席は現在のように着席したいというニーズが高いと、かえって不人気なものになる。
JR九州やJR四国などは自由席主体の特急を走らせ、その他のJRでも自由席が多い列車がある。
これらの列車は近距離利用が多く、かついつ乗っても座れる程度の乗客しかいない列車である。そういった列車は、着席のことを考慮しなくてもいいため、自由席を残していても問題はないのだ。
来春ダイヤ改正で自由席が消える特急列車は、混雑が問題になりやすい列車であり、「着席こそサービス」ということになりやすい列車であるといえるだろう。