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イチローと同時に殿堂入りするのは…。251勝の左腕や422セーブの左腕にAJやTJも!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
イチロー(左)とCC・サバシア JULY 1, 2010(写真:ロイター/アフロ)

 11月18日、記者投票による2025年の殿堂入り候補が発表された。28人のうち、半数の14人は、2019年までメジャーリーグでプレーした選手だ。あとの14人は、前回の投票で得票率5%以上75%未満を記録し、今回も候補に名を連ねた。前回の得票率が63.9%のゲリー・シェフィールドは、投票にかかったのが10度目だったので、記者投票の候補から外れている。

筆者作成
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 イチローの殿堂入りは、まず間違いない。例えば、イチローよりも多くのヒットを打った23人のなかで、殿堂に入っていないのは、野球賭博によって追放処分を受けたピート・ローズ(4256安打)、2020年以降もプレーしたアルバート・プーホルス(3384安打)とミゲル・カブレラ(3174安打)、薬物違反のアレックス・ロドリゲス(3115安打)の4人だ。

 イチローと同じく、CC・サバシアも、初の投票で75%以上の票を得て、殿堂選手となる可能性は高い。251勝&3093奪三振のサバシアを除くと、250勝以上&3000奪三振以上は14人。殿堂入りしていないのは、薬物疑惑のロジャー・クレメンス(354勝&4672奪三振)と現役投手のジャスティン・バーランダー(262勝&3416奪三振)の2人だ。今オフ、FAになったバーランダーは、来年2月で42歳だが、まだ引退する気はないらしい。

 また、ビリー・ワグナーアンドルー・ジョーンズカルロス・ベルトランの3人は、前回の得票率が50%を超えた。それぞれ、73.8%、61.6%、57.1%を記録した。今回の候補に残ったあとの11人は、いずれも、得票率35%未満だった。

 ワグナーの422セーブは、歴代8位に位置し、左投手に限ると、424セーブのジョン・フランコに次ぐ。400セーブ以上の殿堂選手は、マリアーノ・リベラ(652セーブ)、トレバー・ホフマン(601セーブ)、リー・スミス(478セーブ)の3人だが、ワグナーの奪三振率11.92は、この3人とフランコを凌ぐ。防御率2.31は、200セーブ以上の54人中、リベラ(2.21)に次いで低い。記者投票にかかるのが最後の10度目ということもあり、ワグナーの得票率は75%に達するのではないだろうか。

 アンドルーとベルトランも、殿堂入りしてもおかしくない。アンドルーのゴールドグラブ10度は、外野手3位タイ。12度のウィリー・メイズロベルト・クレメンテに次ぎ、アル・ケーラインケン・グリフィーJr.、イチローと並ぶ。イチローとアンドルー以外の4人は、いずれも殿堂選手だ。メイズとグリフィーJr.と同様に、アンドルーもセンターを定位置とした。

 ベルトランは、ラスト・イヤーの2017年にヒューストン・アストロズでプレーしたことが、これまでの得票率に影響したような気がする。この時期のアストロズは、ホームのミニッツメイド・パーク――今オフにダイキン・パークと改称――で相手バッテリーのサインを盗んでいた。当時、アストロズの監督だったA.J.ヒンチは、2019年のオフに1年間の停職処分となり、直後に解任されたが、2021年からデトロイト・タイガースで采配を振っている。300本塁打以上と300盗塁以上の「300-300」を達成した8人のなかで、スイッチ・ヒッターは、ベルトランだけだ。

 記者投票の他には、委員会による選考の候補に、ディック・アレンケン・ボイヤースティーブ・ガービートミー・ジョンデーブ・パーカールイ・ティアンの6人と、ニグロリーグでプレーしたジョシュ・ドーナルソンビク・ハリスが挙がっている。

 こちらの予想は難しいが、少なくとも、ジョンは殿堂入りに値するはずだ。後にトミー・ジョン手術と呼ばれるようになる肘の手術――執刀はフランク・ジョーブ――を挟み、手術前の12シーズンに124勝と、手術後の16シーズンに164勝を挙げた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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