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高校のグラウンドで車を横転させる死亡事故 生徒は無免許運転の罪に問われる? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

埼玉県の高校のグラウンドで深夜に男子生徒(16)の運転する軽乗用車が横転し、助手席の窓から外に身を乗り出していた男子生徒(17)が挟まれて死亡しました。普段からそこに置かれていたグラウンド整備用の学校の車で、生徒らは無免許でした。警察が危険運転致死などの容疑で捜査しています。では、こうした高校のグラウンドの場合、道路交通法の無免許運転の罪に問えるでしょうか。理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

「学校の敷地内だとしても道路とみなされることが多く、(中略)校庭や神社の境内なども道路とされる場合がある」
出典:スポニチ 2024/11/18(月)

「学校の校内の通路や学校の広場、空き地っていうのは、不特定多数の人が通行できる」「どういう管理になっていたのか」
出典:テレ朝news 2024/11/18(月)

「車は無施錠で、鍵が車内に置かれた状態だった」「『過去にもグラウンドで運転した。遊ぶために乗った』などと話しているという」

出典:読売新聞オンライン 2024/11/19(火)

【独自】「過去にもグラウンドで運転した」埼玉栄高校グラウンドで生徒が無免許で運転し横転 助手席の男子生徒死亡 生徒の運転は常態化か|TBS NEWS DIG

エキスパートの補足・見解

道路交通法の「道路」には公道だけでなく「一般交通の用に供する場所」が含まれます。立地や広さ、利用状況などを踏まえ、不特定多数の人が自由に通行・利用できる状態だったか否かによって判断されます。

これに該当すれば私有地などでも「道路」とみなされます。飲食店やコンビニの駐車場が「道路」にあたるとされる一方、限られた契約者しか使えない月極駐車場だと「道路」にあたらないとされた裁判例もあります。

この高校のグラウンドが普段から一般に開放されていたのか、保護者や業者などを含めて人や車が自由に出入りできていたのかが重要です。そうした状態だったのであれば「道路」での運転ということになり、無免許運転の罪が成立します。

ただし、道路交通法の「道路」か否かと危険運転致死罪の成否とは関係ありません。「道路」以外の場所での事故でも罪に問われる規定だからです。制御技能を有しないで走行させる未熟運転も「危険運転」の一つとされており、最高で懲役20年です。これにあたらないとしても、無免許過失運転致死罪に問われれば最高で懲役10年になります。学校側による車や鍵の管理体制の不備も問題となるでしょう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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