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丑年に食べたい牛、丑年に買いたい店

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト

2020年も牛肉をたくさん胃袋におさめました。大晦日も牛肉料理の試作に追われながら、年越しそばをたぐる前に、すき焼きをいただきました。2021年は丑年ということで、年末にはいくつかの雑誌で牛肉の企画に関わらせていただきました。

さて年明けということで、2020年にお世話になった関係各位に深く御礼を申し上げつつ、今回は2021年にモー烈な勢いで前進してほしい牛肉について考えてみたいと思います。そして美味しい牛肉を手に入れるには、お肉好きな方々が自分の好みのお肉について考え、語り、発信することが欠かせません。本記事がそのための一助になれば幸いです。

牛肉の世界は知るほどにいろいろと難しい問題を抱えています。そして「おいしい牛肉とはなにか」という問いに対する答えもやっぱり難しい。ただひとつはっきり言えそうなのは「肉自体の味わいがしっかりした肉」にはおいしくなるポテンシャルがある。それは間違いありません(日本語が微妙ですが、この言い回しについては後述します)。

おいしい肉とはなにか

何をもって肉のおいしさの指標とするかは本当に難しい問題です。少なくともメディアや消費者や飲食店が「A5」をおいしさの目安かのように使うことに、僕は違和感があります。

そう言うとときどき「A5がおいしくないと言っているのか」とお叱りをいただくことがありますが、そうではありません。おいしいA5もあるし、そうでもないA5もある。「A5=おいしい肉とは限らない」「そもそも基準が違う」ということを繰り返しお伝えしているつもりです。

では「おいしい肉」とはなにか。どうすれば巡り会えるのか。生産者や精肉店など、そのお肉に携わった人を見極めることで、おいしい肉に当たる確率を上げることはできる。「A5=おいしい肉とは限らない」というのは、つまるところそういうお話です。

「おいしい食べ物」とは最後は「好み」です。米の品種やラーメンについて考えていただくと、「おいしい」と「好み」の関係がおわかりになると思います。いろんなおいしさが世の中にはある。そのなかで「最後に食べたいのは」とか「今日の気分は」というのが好みです。

そして自分がどういうときに、どういう肉を食べたいのかということに自覚的になれば、「おいしいお肉」について自然と口にすることは増え、近所のスーパーの棚にはそのおいしい肉が並び、購買者が増えれば棚が増えていく。幸いにして現在の日本には選択肢は無数にあります。一食一食どんな肉をどう食べるか、考えながらメニューを選ぶ。自発的にお肉を選び、感想を発信することでマーケットさえも動かし、自分の食生活を豊かにしていくのです。

牛肉の味を決定するもの

肉の味には、大きく次のような要素が関わっていると言われます。

1 血統

2.飼料

3.月齢

4.環境

5.保存

1.~4.は畜産農家領域、5.は問屋や精肉店の仕事です。

黒毛和牛は目利きで選ぶ

特に一般に流通する黒毛和牛の場合、①の血統と②の飼料が重要だと言われます。「やわらかい肉質」「細かいサシ」という特徴の黒毛和牛の肉質は血統や飼料をベースとした、飼育方法に大きく左右されます。

つまりいい黒毛和牛はいい畜産農家を選べば、かなりの確率で当たりを引くことができます。しかしわれわれは直接畜産農家と取引はできません。

そこでわれわれ一般消費者は「どこで買った牛肉か」をしっかり覚えておきましょう。精肉店、スーパー、百貨店。いい目利きのいる店にいい生産者が育てたいい肉が納められます。いい生産者の肉が目利きのできない問屋や精肉店に買われることはありません。

自分の好みの肉が置いてある店には、自分と好みの合う目利きがいる。そして和牛の98%以上は黒毛です。流通量も多い黒毛は目利きの力量が問われるお肉。だから黒毛は目利きで選ぶべき、なのです。

ちなみに僕が都内で黒毛和牛を選ぶときには、以下のような店で買います。

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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