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AIロボットと人類の共生時代、ロボットには『名前』をつけてあげよう!

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:ガストにて筆者撮影 『ゴー』ちゃん

KNNポール神田です。

2023年、家族でファミリーレストランという日常の景色のなかで、近年、自動配膳ロボットを見かける機会が増えてきた。

去年と違っていたのは、ロボットにシールで『名前』がついていたことだ。しかし、この『名前』があるだけで印象は大きく変わった…。

 名前がないと単なる配膳ロボットだったけど、名前があることによって、見事に擬人化しtがキャラクターに昇華していたのである。

 今日の『ゴー』は何kmを運びました。とか、今日の『なな』は何時間働いていますとかのデータでも表示すると、思わず『おつかれさま!』とお声がけしたくなるだろう。

閑散とするアイドルタイムでは、簡単な遊びで子どもの気をひいてくれてもよさそうだ。

出典:ガストにて筆者撮影 『なな』ちゃん
出典:ガストにて筆者撮影 『なな』ちゃん

■ロボット配膳がスタンダードとなる日

 2019年、中国の『海底撈火鍋』がロボットが配膳しているということで、深センにまで取材に飛んだのが懐かしい。ロボットのいるのが当たり前の手塚治虫さん的未来にようやく達したと思う。その後、『X未来レストラン』『ROBOT.HE』のような産業用ロボットを飲食店に置き換える動きもでてきた。同時にその間、人間は何をするのかという新たな課題と対峙するうようになったともいえる。

今では、日本でも多く見かけるようになり、日常の風景となった。そのうち、人間が配膳するお店にはとても、行けなくなる時代がやってきそうでもある…。

これは、かつての『回転寿司』の進化論と同様で、寿司屋は、回る寿司のほうが、スタンダードとなり、職人が握って眼の前で出してくれるサービスが高級となり、庶民やファミリーの足が遠のくといった進化の流れだ。

さらに、イタズラ防止や廃棄ロスゼロを目指し、『直送レーン』のような回らない方式の『回らない回転寿司』がもはやスタンダードという独自の進化を遂げる。|

そうなると、キッチンと客席が直結であれば、もはや『寿司』である必要もなくなり、食べられるものならばなんでも提供でき、デザートまでジャンルは広拡大したレストランとなりつつある。

この『配膳ロボット』も、現在は普及期で珍しいが、もはやこれがスタンダードになる日は近いと推測する。

■『すかいらーく』は、2022年末で2000店舗での配膳ロボット導入

すかいらーくホールディングス3197】』が配膳ロボットを導入したのは、2021年10月18日。2022年末までに、2,000店舗での導入計画。

導入したのは、中国『PUDO』社製の『BellaBot』という配膳ロボット

■ロボットの価格からフェルミ推定すると人間アルバイトの10倍のパフォーマンス?

ガストの「ネコ型配膳ロボ」手がける中国発企業が「清掃」に参入、汚水も“秒で処理”効率は人の3倍

https://www.businessinsider.jp/post-273271

出典:リース料計算
出典:リース料計算

『BellaBot』1台推定価格300万円を2,000店舗で2台導入しても4,000台。

1台300万円を5年リースで、1.87%のリース料率で計算すると一ヶ月間のコストは、5万5,600円。この金額で365日満充電で12時間稼働。 

1日12時間365日稼働できると考えられる。年間経費は、66.7万円。2000店舗導入でも年間13.3億円

時給1,000円のアルバイトさんが1日12時間働くと、12,000円。つまり、4.63日間しか働いて貰えない。もちろん、8時間以上となると4時間の超過分に1.3倍とすると8000円+5200円で1万3,200円となり、交通費などで1日1,000円かかると1万4,200円となると、3.9日間分の労働コストだ。

ロボット30日間に対して、人間4日間とするとロボットと単純労働のアルバイトさんとでは、7.5倍のパフォーマンスの差が生まれる

当然、体調不良や突然の退職などのリスクを考えるとシフトには1.5倍で余力を確保しておくと、10倍近くものパフォーマンスの差が生まれていることとなる。

■人間には税金がかかるが、ロボットには税金がかからない

あまり、話題にならないが、ロボットのメリットは税金がかからないこともある。

人間の本人に渡るアルバイト代金は、健康保険料厚生年金保険料雇用保険料源泉所得税などを含めて約20%が課税されるので80%の11,360円の手取りとなる。つまり、人間の労働には2割の税金が課税され、労働の価値コストは常に20%毀損されていることとなる。しかし、ロボットのリース料金には経費に当てることでができ、そこに対して2割、課税されることは絶対にない。むしろ、ロボットの導入数に応じて、変動費を調整することさえできる。

■飲食ビジネスの『F/L比率』は50%

出典:AirREGIマガジン
出典:AirREGIマガジン

飲食ビジネスでの『フレームワーク』で重要なのは、『FLコスト』という『F=food(原価、材料費)30%、L=Labor(人件費)20%』の割合を50%以内、さらに『R=レント家賃』20%以内という黄金比だ。

 ロボットを導入することによって、『Lの人件費』比率を長期的には下げられるというのが一番の効率化につながる。

■すかいらーくホールディングス内でのガストの売上げは41.5% 

ガストの売上げは41.5%、1,261億円でシェアナンバー1だ。続いてバーミヤンの11.5%349億円、しゃぶ葉10.3% 314億円と続く。

出典:すかいらーくホールディングス2022年総合報告書より
出典:すかいらーくホールディングス2022年総合報告書より

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/ir_material_for_fiscal_ym18/134298/00.pdf

■売上高比率14% 428億円のDX推進投資

2021年6月に新株発行により調達した428億円は3 ,000台のフロアサービスロボット導入、全店でのPOSレジ刷新、一部店舗へのキャッシュレスセルフレジ導入などお客様の利便性向上と従業員の生産性向上のためのDX投資と、新規出店・業態転換・店舗改装などの店舗に係わる設備投資、工場への設備投資などに充当いたしました。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/ir_material_for_fiscal_ym18/134298/00.pdf

出典:出典:すかいらーくホールディングス2022年総合報告書より
出典:出典:すかいらーくホールディングス2022年総合報告書より

配膳ロボットは、2063店舗で3013台導入し、1店舗あたり1.46台で3.98kmの走行と発表している。つまり人間の労働力の3.98kmの移動が削減されていることとなる。新たなPOSレジでの32分の時短効果が5.4億円 セルフレジで27分の時短効果が1.2億円あわせて、年間6.6億円の時短効果も報告。

PayPayでのテーブル会計が15%の利用率。現在は2店舗で実験中などとあるのは、不正会計などの発生率などの調査実験のためなのだろう。

■お客さまをスタッフに昇華させるアイデア

業界最大手でありながら、積極的なDX化というよりも、キーワードは『セルフサービス化』という、お客様をスタッフに昇華させる戦略がそこから見える。それも、お客様がそれを好んで行ってくれればサービスとしても評価もされる。

配膳ロボットに名前をつけているのであれば、配膳用と下げ膳用とに分け、帰る時には、店内タブレットでのPayPayでのテーブル会計を終えた時点で、『下げ膳』をリクエストすれば、テーブルをきれいにして『下げ前用のロボット』において、ダスターで清掃してくれれば、さらに人件費が節約できることだろう。

PayPayの利用率に応じてポイント管理やクーポン管理ができるので、テーブルをきれいにしてくれるお客様にはくじ引きで次回のプレゼントが当たるような設定をすることが可能だ。値引きではなく単品のプレゼントが期限付きでもらると来店促進となることだろう。

■食後の『後片付け』を手伝うとクーポンがもらえるなど

ファミレスで配膳から商品を受取り、食事後、下げ膳用ロボットに渡して、スロットを回す、じゃんけんをする、会話をするなどで、次回のクーポンが当たるとなると、ロボットとのコミュニケーションなどが生まれることだろう。

それらも、ロボットにつけられた『名前』があったことで、無機的な配膳ロボットがとても有機的なロボットに見えたからだ。

人間のアルバイトさんには関心を示せないが、ロボットならば、キャラクターを設定しても関心を集めてもよさそうだ。

出典:ガストにて筆者撮影
出典:ガストにて筆者撮影

配膳ロボットに、名前があることによって、3歳になる長男が、『ななちゃん、ばいばいー!』『ゴーーくん、またきたねー』と、呼びかけていた。

これは、ファミリー客としても、子どもがロボットの後片付けをお手伝いして、ジャンケンポンしたり、お誕生日を聞いてもらったりとか、いろんなサプライズをロボットが展開して、歌ったり踊ったりするエンタメの世界も近そうだ。

アルファ世代はロボットと共生する時代。この子たちが10代になる頃には、人間よりも、ロボットやAIが自分の相棒となっているだろうし、20代、30代にはロボットとAI抜きでは生きられないような時代になっているはずだ。

それを考えると経営者は、AIとロボットでの効率化以上に潜んでいる、エンタメやコミュニケーションのありかたを考えるべきだろう。特に、レストランや外食は食欲を満たすだけではなく、時間あたりの、楽しい記憶を経験しにきているスポットであると再定義した方が良いだろう。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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