アリババの最先端スーパーマーケット『フーマーフレッシュ』のカオスっぷりに驚愕!
KNNポール神田です。
街中にあふれる、ブルーとグリーンのQRコード
2019年7月から中国の深センに滞在している…。キャッシュレス先進国の中国を実体験するためである。最初に訪れたのは、深センの中心地『会展中心駅』に直結したスーパーマーケット『フーマーフレッシュ』である。
アリババが出資したことでも有名なスーパーマーケットである。
中国のキャッシュレスは、完全に二巨頭体制であり、『アリババ』の『AliPay(アリペイ)』と『テンセント』の『WeChatPay(ウィチャットペイ)』が市場を完全に制覇している。街中のどこにでも、ブルーのアリペイ、グリーンのウィチャットペイのQRコードに溢れかえっている。
アリババがスーパーマーケットに出資する理由
アリババが出資をしたのが、ECではなくリアル店舗のスーパーマーケット『盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)』。
2016年に上海市にフーマーフレッシュ1号店を開業。現在では、上海市や北京市、深セン市など中国各地に107店舗に至る。
『O2O(オンラインtoオフライン)戦略』の一貫としての出資で、この店舗では、競合のテンセントのウィチャットペイは使用できない排他的な店舗となっている。そして、オンラインでは販売しにくい生鮮品を取り扱い、店頭の商品を最短30分以内に届けるという仕組みを構築している。
決済はすべて巨大ディスプレイによるQRコード自動レジ
ド派手なアーチ型のファサードから、通常のスーパーマーケットとは大きく違う。目立つのは自動レジだ。通常のスーパーで見られるズラリとならんだレジの光景をここでは見ることができない。レジの代わりにあるのが、大型のディスプレイを持つ、自動レジシステムだ。そして会計はすべてアリペイのQRコードによって決済することができる。
まさに食のフードテーマパーク!『フーマーフレッシュ』
スーパーマーケットでありながらも目立つのが飲食スペースだ。日本だと何かと衛生法上、販売スペースと飲食スペースは、明確に区分けされなければならないが、中国ではこのあたりがとてもフレキシブルだ。日本ではようやく『グローサラント』というグローサリー&レストランというカテゴリーが生まれてきたが、中国では昔から当然のようにある。店内で買ったきたものを調理してもらいその場で食するというスタイルだ。店内には古来からの『グラーサラントコーナー』と『イートインコーナー』があり、それだけでも、にぎやかだ。ザリガニをバケツに目一杯、手袋をしながら頬張る姿が散見される。
生きた魚にまでQRコードのラベルが…!
鮮魚スペースはそのまま水槽に生きた魚を捕まえる。これはまさに漁をする感覚に近い。金魚すくいならぬ鮮魚すくいというエンタメにもつながる。当然、係の人に頼むこともできる。
驚いたのが、魚のエラの部分にQRコードのラベルがプラスティックの糸でくくられていることだ。当然、魚にとては、目の隣にラベルが貼られているので前が見えないだろう。確かに食品としてのQRコードによってどこの産地で捕獲されたという証明になるので、顧客に安心感を与えるのかもしれないが、魚の命に対するリスペクトが微塵にも感じることができない。生き物=食品という感覚は、日本と中国とではかなり違うように感じる日々が続いている。
鮮魚スペースは手づかみで『インスタ映え』ならぬ『ウィチャット映え』
伊勢海老なども自分でつかみどることができる。日本ではインスタ映えだが、中国では、規制によって海外のサイトのいくつは規制されて利用することができない。特に、Google、YouTubeやtwitterやFacebook Instagramなどだ。だから中国国内の、微博(ウェイボー)やWeChat(ウィチャット)を利用する。特にWeChatの利用度の高さは驚く。8億4000万人(2018年1月)規模の利用者なのでほとんどの国民全員がWeChatでつながっているとさえいえる状態だ。
店内での撮影はどこでも自由。これもまた中国的だ。通常、日本では、店内での撮影禁止は多いが、中国ではどこでもが撮影を容認している。おそらく禁止しても禁止しきれないからであろう。また、店内の客も写真を撮影されることに対して、まったく抵抗がない。このあたりのプライバシーに対する意識は、すべて政府に監視されていることからの抵抗感のなさのようにも見受けられる。当然、プライバシー意識が低いから巨大なレジで自分の買った商品から支払い金額まで人に見えてもまったく平気のようだ。人からどう思われようがあまり気にならないのかもしれない。
天井にゆきわたる轟音の正体は宅配用商品がハンガーで流れていく様子だった!
天井からガラガラと轟音が鳴り響きだす。店内の天井にはなぜか網のロープが張り巡らされている。ここには宅配用の商品がピックアップされ、ロープに宅配バッグの商品のハンガーをひっかけて吊るされて流れていくのだ。その度、ごとにガラガラと轟音が店内に響く。なんだか流れ作業のベルトコンベアの工場にいるような気になりとてもカオスな瞬間だ。平日の昼間はさほど受注がなかったが、夕方はかなりの勢いでガラガラ音がなり続けている。中国にいると騒音もひとつのリアルな演出なのかもしれないと感じる。
宅配用のピックアップは人間がおこなっており、各場所の担当がピックアップしそれを一気に店内から持っていくのではなく、ベルトコンベアで、宅配専用の人が待つ出口へ一気に天井づたいで送ってしまおうという発想がとてもユニークである。実際に混雑している店舗でピックアップした商品を宅配専用場所にまで運ばなくてすむからだ。
実際に支払ってみてわかった『ミニプログラム』『小程序』の秀逸性
アリペイには、ウイチャットペイ同様の『ミニプログラム』である『小程序(シャオチェンシュ)』という仕組みがある。アリペイやウィチャットペイのペイメントから『ミニプログラム』を登録でき、支払いサイトから直結で、各店舗のメニューから注文をすることができるのだ。これはアリババやテンセントがミニプログラムのAPIを提供し、利用店が実際のメニューを掲載し、店頭での引き渡しや宅配を選択できるサービスを提供しているからだ。日本ではLINEが2020年より『LINE miniAPP』として提供を予定しているが、この『小程序』のサービスが始まるとサービス革命が始まりそうだ。
つまり、店頭でオーダーを受注をすることも、料金を決済することもなくなるのだ。顧客はスマートフォンで事前にメニューを選び、決済を終了した番号だけ持っていればよい。該当店舗でかざしてサービスを受けることも、宅配してもらいスマートフォンで番号を表示するだけでよい。そしてそれらの行動データはすべて、プラットフォーマーが金銭だけでなく誰がなにをいつどこで消費したのかがすべてお見通しとなる。これはもうすべての家計調査を毎日おこなっているようなものであり、リアルタイムで集計することも可能なことだろう。
中国では政府の検閲に応じるサービスだけが存続することができる。つまり中国政府はすべての国民の消費動向を掌握しながら、余分にあまった金額は、アリババが運営する『余額宝(ユアバオ)』という年利4%に及ぶ世界最大の投資信託機関を通じたり、『芝麻信用(セサミクレジット)』という個人信用情報格付けシステムで個人の格付けをおこない信用度を維持している。まさに日本の目指す『情報銀行』が政府を背景に実用化され、10億人規模で運用されている。巨大な中国政府による一元管理化においてのサービスの進化はすさまじい…。それとともに、庶民の経済性や合理化は最大化される。これはユートピアなのかディストピアなのか…?。
『デジタルコミュニスト国家』の進化は、とどまることを知らない。