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auユーザーは楽天証券が好き? 経済圏の意外な実態が明らかに

山口健太ITジャーナリスト
経済圏の意外な実態が明らかに(MMD研究所のプレスリリースより、筆者撮影)

携帯キャリアを中心にポイント経済圏の競争が激化している中で、必ずしも同じグループ内のサービスを使っている人ばかりではなさそうです。

7月29日にMMD研究所が発表した調査では、どの携帯キャリアのユーザーでも「楽天カード」や「楽天証券」をよく利用しているという、興味深い結果が出ています。

楽天カードや楽天証券は全キャリアで人気

楽天モバイルの利用者は、ポイントといえば楽天ポイント、クレジットカードといえば楽天カードと、楽天経済圏のサービスを主に利用していることが広く知られています。

それでは、他の携帯キャリアではどうでしょうか。MMD研究所は、携帯4キャリアのユーザーが、ポイントやクレジットカード、QRコード決済、銀行や証券について、どのサービスを使っているのか調査をしています。

この中で、ポイントとQRコード決済については、ドコモの利用者ならdポイントとd払い、auならPontaポイントとau PAYのように、各キャリアが提供するサービスを最もよく利用しているという、順当な結果になっています。

ポイントやQRコード決済は各キャリアが提供するサービスが1位となっている(MMD研究所のプレスリリースより)
ポイントやQRコード決済は各キャリアが提供するサービスが1位となっている(MMD研究所のプレスリリースより)

2021年の調査では楽天ポイントがもっと強かったのに比べると、各キャリアのポイント経済圏が成長し、サービス間の連携や囲い込みが進んできた印象を受けます。

ただ、auユーザーについて気になる点として、複数回答ではPontaが1位になったものの、MMD研究所によれば最も利用しているポイントを挙げる単数回答では楽天ポイントが1位になったとのこと。auユーザーにとっては楽天も身近な存在のようです。

一方、金融サービスについては楽天の強さが目立っています。クレジットカードは全キャリアで「楽天カード」が1位になり、各キャリアが提供するカードを上回っています。

銀行は、楽天以外の3キャリアでは「ゆうちょ銀行」と「三菱UFJ銀行」に続き、ネット銀行としては「楽天銀行」がトップに。そして証券会社では「楽天証券」が全キャリアで1位になっています。

クレジットカード、銀行、証券の利用状況(MMD研究所のプレスリリースより)
クレジットカード、銀行、証券の利用状況(MMD研究所のプレスリリースより)

このようにドコモ、au、ソフトバンクのユーザーは、必ずしも自分が利用する携帯キャリアが提供する金融サービスを第一には考えていないことが分かります。同様の傾向は、2023年8月にMM総研が実施した調査にも表れていました。

銀行については、全国津々浦々に店舗やATMがあるゆうちょ銀行を始め、都市銀行が便利というのは分かりますが、ネット銀行としては楽天銀行の存在が目立っています。

まだグループ内に銀行を持っていないドコモはさておき、ネット銀行として歴史のあるPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)やauじぶん銀行がランクインしていないのは、やや意外な結果といえます。

証券会社については、すべてのキャリアで1位となった楽天証券のほかに、楽天以外のキャリアではSBI証券が僅差で2位となっており、ネット証券の2強である楽天・SBIの存在感の大きさが見てとれます。

ドコモはマネックス証券を傘下に収めたばかりであり、ソフトバンク傘下のPayPay証券も新NISAへの対応で口座数が伸び始めたところです。その点、古くからネット証券として定評のあるauカブコム証券がauユーザーの利用する証券会社にランクインしていないのは、厳しい現実といえそうです。

auの金融サービス テコ入れはある?

KDDIは2019年に金融サービスをauブランドに統合しつつ、auユーザー以外でも使えるオープン戦略をとってきました。ただ、Pontaポイントを中心とした経済圏が広がっている割には、金融サービスについてauユーザーからの支持をあまり得られていないのは気になるところです。

個々のサービスはそれぞれに光るものがあり、たとえばauじぶん銀行は、ステージ制のプログラムでPontaポイントと連携、簡単な工夫で無料の振込回数を増やせるようになっており、預金を無料で移動できる三菱UFJ銀行の口座とあわせて使うのに便利な環境が整っています。

auカブコム証券は、au PAYカードを利用した投信積立において月10万円まで1%分のポイントを還元しており、さまざまな条件を付ける他社に比べると、分かりやすくおトクなサービスを提供しています。

携帯料金との連携では、auの無制限プランと組み合わせた「auマネ活プラン」が提供開始から約1年で100万契約を突破したとのこと。今後はauだけでなく、UQ mobileやpovoを含め、誰もがauの金融サービスに乗り換えたくなるようなテコ入れはあるか注目しています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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