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楽天の株主優待 今年も「モバイル回線1年無料」で盛り上がる

山口健太ITジャーナリスト
楽天グループの株価(12月27日終値、筆者撮影)

楽天グループは株主優待として「1年無料」のモバイル回線を昨年に続き提供することから、権利付最終日となった12月26日には盛り上がりをみせたようです。

この株主優待を入手し、実際に使ってきた筆者の視点から魅力を解説します。

楽天モバイルの回線を1年無料で体験できる

楽天の株主優待がモバイル回線になったのは、2023年12月の権利付最終日の「前日」です。このときは、さすがに間に合わなかった人も多かったのではないでしょうか。

当初はデータ専用のSIMとなっていましたが、権利確定後に「音声+データ」が使えるよう仕様が変わり、2024年4月以降に株主に提供されています。

なお、筆者は取材で情報を得る可能性がある企業の個別株は取引しない方針ですが、楽天グループについては短期間だけ100株を保有し、権利落ち日にすべて売却する形で株主優待を入手しています。

2023年12月時点の株主に配られたSIMカード(筆者撮影)
2023年12月時点の株主に配られたSIMカード(筆者撮影)

さて、今回の株主優待は昨年とほぼ同じとみられる内容になることが12月6日の15時半に発表されたことで、比較的時間に余裕があったといえます。

株価の動きは、一般に配当や優待目当ての買いが入りやすいとされる権利付最終日に851.3円(前日比-2.09%)に下落。逆に権利落ちとなる翌27日の始値は870.3円、終値は872.3円(前日比+2.47%)に上昇したものの、大きな動きはなかったといえます。

この回線をこれまで使ってきた印象としては、楽天モバイルの回線をしっかり体験できるものに仕上がっています。データ容量は月30GBで、無制限ではないものの、サブ回線として十分に役に立っています。

すでに楽天モバイルを契約している人の場合でも、その料金が無料になるわけではなく、新しい電話番号が割り当てられたSIMが送られてくる形になります。

楽天モバイルの一般向け回線とは異なり、ベースになっているのは法人向けのSIMです。また、楽天モバイルではなく、楽天グループがMVNOとなって株主向けに提供するという建て付けになっています。

重要事項説明書によると、楽天グループがMVNOとして提供していることが分かる(楽天グループ提供資料より)
重要事項説明書によると、楽天グループがMVNOとして提供していることが分かる(楽天グループ提供資料より)

使い勝手にもいくつか違いがあります。たとえば無料の音声通話は、個人向けの「Rakuten Link」ではなく、法人向けの「Rakuten Link Office」を使う必要があります。

通常の電話アプリによる音声通話は有料で、「後日ご利用分料金をご請求させていただく場合がある」としていますが、試しに何度か通話してみた程度では請求はありませんでした。一定以上の利用をした人にだけ請求していると考えられます。

楽天のエリアだけでなく、KDDIのローミングにもつながります。北陸新幹線や上越新幹線で走行中に使ってみたところ、東京から離れるにつれて通信できない場面は増えるものの、トンネル内でもKDDIの電波をつかむことがありました。

トンネル内でKDDIローミングの電波をつかむことも(筆者撮影)
トンネル内でKDDIローミングの電波をつかむことも(筆者撮影)

不便な点としては、楽天モバイル契約者向けの「my楽天モバイル」を使うことができず、オンラインではeSIMの再発行ができません。eSIMを別の端末に移すには、株主優待専用のコールセンターに依頼してQRコードを発送してもらう必要があるようです。

筆者は複数のスマホやタブレット端末で入れ替えて使いたいので、物理的なSIMカード(pSIM)に変更する手続きをしました。ただ、今後はeSIMのみに対応する端末が増える可能性があり、悩ましいところです。

申し込みの段取りとしては、前回は3月中旬に送られてくる株主総会の招集通知に案内が同封され、最短で申し込むと4月下旬にSIMが届きました。今回も似たようなスケジュールになると予想されます。

これから楽天グループの株を買ってみたい人の場合、次に株主優待をもらう権利が発生するのは2025年12月になります。次回の優待も引き続きモバイル回線になるか、発表を待ちましょう。

参考リンク

株主優待制度|楽天グループ株式会社

楽天の株主優待について詳細が説明されています。今回は第28期ですが、前回(第27期)の説明もまだ残っています。申し込み手順もここに掲載される予定となっています。

株主を取り込みたい経済圏 楽天はどうする?

楽天の当初の狙いとしては、既存の株主に楽天モバイルの回線品質を体験してもらうことで、モバイル事業について理解を深めてもらいたいと考えていたようです。

一方、携帯キャリア各社は株主優待で経済圏との連携を進めており、1株あたりの価格を下げる株式分割とあわせて、若年層の株主を取り込もうとしています。

楽天はこの動きにどう対応していくのでしょうか。今回注目したいのは、昨年から株主番号に変更がなければ、株主優待の回線を同じ電話番号のまま1年延長できる仕組みが導入された点です。

楽天の株を売らずに持ち続けていれば株主番号は変わらないので、同じ電話番号を使えることになります。これは長期保有を促す仕掛けといえそうです。

また、今回も株主優待のモバイル回線はSPUの特典の対象外となっているものの、モバイル回線の優待をきっかけに新たに株主になる人も少なくないでしょう。そこから楽天経済圏に誘導していく施策が出てくるかという点にも注目しています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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