お賽銭「一円玉やめて」 今年も話題に
新年の初詣などでお賽銭をする機会が増える時期ですが、神社やお寺によっては「一円玉」など少額硬貨の利用を控えてほしいと呼びかけているようです。
近年、たびたび取り上げられる話題ではありますが、背景には金融機関への硬貨の入金に手数料がかかることで、神社やお寺の負担が増えているという問題があります。
お賽銭に一円玉や五円玉 手数料で赤字?
神社やお寺は「お賽銭箱」に入れられたお金を金融機関に持ち込んで口座に入金しています。しかし、神社やお寺だからといって無料とはならず、一般の利用客と同じ手数料がかかっています。
硬貨を入金する際の手数料は、かつては無料でしたが、2020年ごろから有料化する銀行が増え、2022年1月からゆうちょ銀行がそれに続いたことで大きな話題になりました。
その後、ゆうちょ銀行は2024年4月に手数料を見直し、多くの銀行と同じく窓口では100枚まで無料になりました。ただ、101枚以上の入金に手数料がかかることは変わっていません。
たとえば一円玉の場合、100枚なら無料ですが、101枚では101円を入金するのに550円かかることになり、手数料が上回ってしまいます。五円玉ならもう少しマシですが、枚数によってはかなりの割合を手数料として引かれることになります。
とはいえ、神社やお寺は参拝客から善意でお賽銭をもらう立場であることから、「小銭は迷惑」とは言いにくいようです。そのため、掲示物などで主張していなかったとしても、実際には手数料負担に悩んでいるところがあると考えられます。
神社によっては、お釣り用の小銭を必要とする商店との間で、無料で両替する取り組みをしていたところもあります。アイデアとしては良さそうですが、余計な仕事が増えることから限界はありそうです。
金融機関での手数料を避けるため、硬貨を無料で入金、あるいは両替するさまざまなテクニックが考案されたものの、あまり良い結果にはなっていないようです。
銀行によっては、ATMで1回あたり100枚まで無料で入金できます。何度も繰り返せば理論的には無制限に入金できることになりますが、実際にやってみたところ、数え終わるまでに時間がかかり、何度も繰り返すのは現実的ではない印象でした。
スーパーマーケットのセルフレジを使う方法も知られていますが、大量に硬貨を投入することで故障も増えたとみられ、利用できる枚数に上限を設けるところも出てきています。
空港などに設置された「Pocket Change」の端末では、硬貨や紙幣を電子マネーなどに交換できます。これも大量の硬貨による故障が相次ぎ、2022年2月に日本円硬貨の取り扱いを終了する事態になっています。
米国のスーパーなどには、余った硬貨を電子ギフトに交換できる「コインスター」のようなマシンが設置されています。日本にも上陸したものの、2022年12月に撤退してしまいました。
日本には「一円を笑う者は一円に泣く」ということわざがあり、米国のように硬貨をゴミとして捨てることには抵抗を覚える人が多いかと思いますが、徐々に迷惑な存在になりつつあるといえます。
お賽銭のキャッシュレス化は進むか
お賽銭についてもキャッシュレス決済に対応する動きが出てきています。
みずほ銀行の「J-Coin Pay」は数年前からお賽銭での利用に対応していましたが、2024年12月からはPayPayも新たな仕組みを導入し、東京都港区の増上寺などで利用できるようです。
キャッシュレス化のメリットとして、アプリで任意の金額を指定できる場合、語呂合わせなどで1円単位の金額になったとしても、神社やお寺に「迷惑」になることはありません。
また、少額硬貨の利用をやめてほしいとはなかなか言い出せない神社やお寺にとっても、「キャッシュレスOK」というメッセージであれば、軋轢を生むことなく少額硬貨を減らせそうです。
悲しいことに、賽銭箱の周囲では「監視カメラ作動中」などの無粋なステッカーを目にすることもあります。キャッシュレス対応により、QRコードや決済端末が美観を損ねる心配はあるものの、安全性が高まることは間違いないでしょう。
お賽銭のキャッシュレス化にはさまざまな議論がありそうですが、本質はそこではなく、日本全国で人手不足が深刻化する中で、もはや一円玉や五円玉を数えている余裕はなくなりつつあるのが現実ではないでしょうか。
海外では現金での会計を四捨五入することで、一円玉や五円玉に相当する硬貨を廃止する動きもあります。キャッシュレスの推進とあわせて、現金をより効率化に扱うための議論も進んでほしいところです。