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「ドコモ銀行」どうやって実現? いまある選択肢を考える #専門家のまとめ

山口健太ITジャーナリスト
就任会見に登壇したNTTドコモの前田義晃社長(NTTドコモ提供資料より)

携帯キャリアにとって、通信事業と同じくらい経済圏は重要になりつつあり、各社がポイントや銀行、証券との連携を進める中、NTTドコモの社長に就任した前田義晃氏が銀行業の参入に意欲を示しているとして話題になっています。

2020年には独自電子マネーの「ドコモ口座」で不正利用の問題を起こしたこともあり、金融事業の遅れが指摘されていましたが、マネックス証券の子会社化により証券に参入。次なる「ドコモ銀行」の実現に向けて、どのような選択肢があるのでしょうか。

ココがポイント

▼ドコモは三菱UFJ銀行と組んだ「dスマートバンク」を2022年12月から提供中。既存口座にdアカウントを連携できる

デジタル口座サービス「dスマートバンク」を提供開始(NTTドコモ)

▼JR東日本は「JRE BANK」を開始。楽天銀行のインフラを活用しつつ、JRE POINTなど独自の体験を提供している

JRE BANKサービスを5月より開始します(東日本旅客鉄道)

▼LINEがみずほ銀行と進めてきた新銀行の計画は中止に。安全・安心なサービスを提供できる見通しが立たず

LINE およびみずほフィナンシャルグループ、 新銀行開業に向けたプロジェクトの中止に関するお知らせ(LINE)

▼ドコモの子会社になったマネックス証券だが、社名や企業理念、ブランドは維持しているという

2024年にマネックスが進化する!NTTドコモとの資本業務提携を発表(マネックス証券)

エキスパートの補足・見解

将来的には「給与デジタル払い」により、d払いのようなスマホ決済アプリが銀行の役割を担っていく可能性はあるものの、その給与デジタル払いにおいても銀行口座との連携は必須になっています。

最近の新しい「銀行」は、住信SBIネット銀行のNEOBANKサービスのように、既存の銀行がインフラだけ提供する仕組みを利用したものが増えています。たとえばJR東日本の「JRE BANK」は、楽天銀行のインフラを利用しつつ、楽天のポイントではなくJRE POINTを活かしたサービスを提供しています。

ユーザーにとってはあたかもJR東日本が提供する銀行のように利用できるのですが、難点があるとすれば、支店の名前は「楽天銀行 JREはやぶさ支店」のような形になります。果たしてドコモのプライドが許すでしょうか。

すでにドコモは三菱UFJ銀行の口座にdアカウントを紐付ける「dスマートバンク」を提供しています。その上で銀行業に意欲を示していることになりますが、dスマートバンクをさらに強化するか、あるいは三菱UFJ銀行と組んで新たな銀行を立ち上げるといった選択肢はどうでしょうか。

ただ、新銀行の設立は困難を極めるとみられます。みずほ銀行と組んだLINEは最初の発表から4年以上の時間を費やして中止しています。ネット銀行を取り巻く規制やセキュリティの要件は年々変化しており、延期に延期を重ねて断念するのが最悪のパターンといえます。

マネックス証券では7月5日から投資信託の「dカード積立」が始まるなど、ドコモとの連携が進んでいるものの、名前は「ドコモ証券」とはならず、マネックスのブランドを維持しています。こうした方式でドコモと組みたいという銀行が出てくるかもしれません。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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