最新観測で地球の内核の自転が反転していると判明
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「地球の内核の自転が反転した可能性」というテーマで動画をお送りしていきます。
2023年1月と、つい先月発表された研究によると、地球の内核の自転が反転している可能性が浮上したようです。
Twitterのトレンドに載るほど話題になっていたので、今回の動画で解説していきたいと思います。
●地球の内部構造
地球の内部は、異なる物質や状態からなる球状の層が幾重にも重なった構造となっています。
地表から近い順に、数十kmの深さまでは「地殻」が存在しています。
そして地殻の下から、地表から2900kmの深さまでは、固体の岩石から成る「マントル」と呼ばれる層が、さらに地表から深さ2900km~5100kmの地点までは、液体の鉄が主成分である「外核」と呼ばれる層が存在します。
そして地表から5100kmより深い最深部には、固体の鉄が主成分である「内核」と呼ばれる層が存在します。
この内核だけでも月に匹敵する大きさを持つ、超巨大な鉄の塊です。
内核における環境は想像を絶するもので、温度は5000度程度と太陽表面に匹敵し、さらに圧力は地表の364万倍もあると推定されています。
○地球内部の情報を得る方法
人類は、地球全体から見ればほんの薄い表層に過ぎない地殻の半分すら掘り進めたことがありません。
そのためこれらの地球内部の構造を直接観測したわけではありません。
その代わり人類は、地球内部の構造を知るために「地震波」を用いています。
地表付近の様々な場所で発生した地震波が地球内部に伝わり、再び地表で観測されるまでの時間を計測することで、地表からの深度ごとの地震波の伝わり方がわかります。
表示中の画像では、地球からの深度ごとの地震波の進む速度を示しています。
深度ごとに物質の構成や密度が異なるので、地震波の進む速度も異なっています。
上記画像に記載のグラフの横軸は地震波の伝達速度、縦軸は深度です。
また地震波には縦波のP波と横波のS波がありますが、P波が黒、S波が灰色の線で示されています。
よく見ると、特に深度2900km地点や5100km地点など、地震波の伝達速度が急激に変化する場所がいくつか存在します。
これは構成する物質や状態が急激に変化する場所、つまり先述の層の境目であることを示しています。
このような情報から、先述した地球内部構造と範囲が理解できます。
またS波は固体にのみ伝わりますが、外核はS波が伝わらないため、液体とみられています。
●内核は自転が反転していた!?
北京大学の研究チームは、1995~2021年にかけて発生した地震波のデータを分析した研究成果を、1月24日とつい先日発表しました。
その発表によると、なんと地球の内核の自転が反転している可能性があるそうです。
なお、内核は液体の外核によってマントル以上の固体の構造と隔てられているため、マントル以上の構造の自転周期と内核の自転周期は厳密には一致していません。
研究チームは画像右下の星の地点で発生した地震による地震波を、画像左の150度表記の地点で観測しました。
その際、内核を通った地震波と内核を通らなかった地震波を比較しました。
その結果、150度表記の地点でこのような地震波の波形が観測されました。
なお、異なる時刻に発生した4つの地震は4色に色分けされていて、「x=8」の所にあるグレーの線の右が内核を通らなかった地震波、左が内核を通った地震波の波形が示されています。
グレーの線の右の内核を通らなかった地震波はどの地震でも同じような波形が観測されています。
一方、内核を通った地震波は明らかに異なる波形が観測されています。
これは内核に何らかの変化が起こり、内核を通った地震波の到達時間に変化が生じたと考えるのが妥当です。
内核は厳密には綺麗な球体ではありません。その理由はマントル内の高密度領域に引かれているためだと考えられています。
そしていびつな形をした内核が回転すると、同じ場所で発生した地震でもその地震波の内核に対する入射角とその後の進行経路が変化し、観測地点の到達時間に差異が生じる、という風に解釈されています。
研究チームによると、1995~2009年にかけては内核を通った地震波の到達時間に変化があり、その後2009年以降は地震波の到達時間に大きな変化は見られなかったようです。
これをまとめると、1995~2009年にかけては内核の自転が地表の自転よりも少し速く、2009年頃には停止し、現在では反転している可能性まで考えられています。
同研究者は1960年代~1990年代にかけても地震波の分析を行っており、1996年に成果を発表していました。
この過去の観測も併せて考えると、このグラフのような結果が得られたそうです。
簡単に言うと、パープルのグラフの傾きが正の時は、内核の自転は地表の自転よりも速いことを、反対に傾きが負の時は内核の自転は地表の自転よりも遅いことを示します。
つまり1970年代から2009年頃までずっと内核は地表の自転よりも速かったのが、2009年頃には停止し、現在は「内核の自転の反転」を目の当たりにしている可能性があるということです。
「内核の自転が反転」と大々的に取り上げられてはいますが、実際の所は地表の自転に対して若干加速したり減速したりといった程度で、宇宙から見てダイナミックに停止したり逆回転したりしてるわけではありません。
このデータから、内核の自転の加減速の周期は約70年とみられています。そしてこの周期は、地球の1日の長さの変化の周期や磁場の変化の周期とも一致していると指摘しています。