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鉄道雑誌から消える「臨時列車の情報」 残るは一誌、しかも甲種輸送は掲載終了

小林拓矢フリーライター
東京メトロ17000系の甲種輸送(写真:イメージマート)

 鉄道雑誌では、団体臨時列車の情報や特別な車両の列車の運行情報が、以前は多く掲載されていた。ところが、その情報量がしだいに減りつつあり、しかも掲載誌も、以前は複数あったものが、いまでは一つになったという状況である。

 その上、最新号である『鉄道ダイヤ情報』2023年2月・3月合併号を見ると、「撮り鉄」が嘆きそうな件が掲載されていた。

 この号限りで、甲種鉄道車両輸送(甲種輸送)の予定を掲載しなくなるという。甲種輸送とは、輸送される車両の車輪を用いて、貨物鉄道事業者の機関車牽引で、貨物列車扱いで輸送されるもののことである。

 多くの場合、私鉄や地下鉄の新しい車両がJRの線路を用いて遠方の車両工場から私鉄等の車両基地まで輸送される場合にこの言葉は使用される。

 新しい車両が運ばれるため、注目度は高く、多くの「撮り鉄」が沿線に集まって来る。

 こういった情報は、じょじょに消えつつある。

雑誌から減る臨時列車情報

 鉄道雑誌では、長らく『鉄道ファン』『鉄道ダイヤ情報』がこういった情報を載せていた。鉄道模型雑誌でも、『月刊とれいん』が、甲種輸送の情報を掲載していた。だが『鉄道ファン』は2022年5月号を最後に特別な臨時列車の情報を掲載するのをやめ、現在は特別な臨時列車の情報を掲載するのは『鉄道ダイヤ情報』だけとなってしまった。

 鉄道雑誌は、JRからの情報をもとに、特別な臨時列車や甲種輸送の情報を雑誌に掲載し、有料のネットサービスでも情報を提供してきた。

 しかし、そもそも提供される情報が、以前と比べても減りつつあった。そんな中で、『鉄道ダイヤ情報』や『月刊とれいん』が甲種輸送の情報の掲載をやめる。

 これらの情報は、JRが掲載していいとした情報のみを掲載するようになっている。JRも、走らせる必要こそあるものの多くの人が沿線に集まって混乱するような車両の場合には、鉄道雑誌に掲載しないようになってきた。

 近年、「撮り鉄」が社会問題となっている。珍しい列車や引退間際の車両などの撮影に、多くの人が押し寄せて混乱を招いている。時刻表にふつうに掲載されるような列車でさえ沿線に人があふれるのだから、特別な列車や引退間近の車両などでは、混乱することが必ず起こることが当然想定される。

注目される甲種輸送と鉄道ファンのマナー

 そんな中で、新しい車両がやってくる場合も、また注目される。甲種輸送は、私鉄・地下鉄の車両を報道公開前に見ることができる機会であり、多くの「撮り鉄」が注目する。

 小さな鉄道事業者によっては、新型車両の晴れの日と考えている場合もあり、一時は甲種輸送をアピールするところもあった。

 しかし、近年「撮り鉄」がどんどん増えていくにつれ、甲種輸送を担うJR貨物としても、そうは堂々と甲種輸送ができる状況ではなくなってきた。

『鉄道ダイヤ情報』には、「撮影上の注意」としてマナー順守の喚起を訴える文章も掲載されている。

 団体臨時列車や甲種輸送の情報公開に鉄道事業者が積極的ではないのも、このあたりの問題が背景にある。

 それゆえに鉄道雑誌が掲載をやめたり、縮小したりしなくてはならない事態になっている。

「撮り鉄」のマナーが悪いと、団体臨時列車などの情報も将来は掲載されないのではないかということも想定される。

『鉄道ダイヤ情報』の版元は交通新聞社であり、JR各社が株主となっている会社である。それゆえにJR各社の意向に左右されることはしかたないのだが、「撮り鉄」のマナー問題が鉄道事業者を悩ませている状況では、雑誌掲載情報が減るのも仕方ないかもしれない。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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