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結婚した男女は何人目の恋愛相手と結婚しているか?何人目がベストなのか?

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

結婚相手選択ゲーム

仮に、結婚相手を探すにあたって10人の相手とお見合いする機会があったとする。しかし、以下の条件とルールがある。

・10人を横並びにしてあなたがその中から好きな一人を選択することはできない。実際の恋愛においても、10人同時に付き合うことはできないのと同じだ。

・1人ずつ順番にお見合いして、あなたはその都度、そのお見合い相手と結婚を決断するか、次の相手に移行するかを選ばないといけない。

・お見合いを続けていく中で「この人に決めた」という決断をしたら、残りの候補者とは会うことはできなくなる。

・最後まで誰も選択しなかった場合は、10人目の相手と自動的に結婚することになる。10人全員を見てから、「やっぱり5番目の人が良かった」というわがままは許されない。

さて、そういうルールで結婚相手を決めなければいけないとしたら、何人目の相手を選択するのがベストな選択だと思うだろうか?

真剣に計算した数学者による正解

それを数学的に解明したのが、数学者マーチン・ガードナーであり、「36.8%の法則」と呼ばれるものである。

提供:イメージマート

ガードナーの計算によれば、お見合い相手が10人の場合、全体の3.68人を超えないうちは、お見合いを続け(相手が10人のこの場合は3人まで決断しない)、そのあと、「それまで会った3人の中で一番良かった人」を基準とする。つまり、最初の3人はあくまで基準作りのためで、選択対象ではないということになる。

そして、本番は4人目以降で、その3人までの基準を上回ると思った相手こそあなたが選ぶべきベストな相手である確率がもっとも高いということだそうだ。

これは男性に限らず、女性でもそうで、就職採用などの場合でも同様である。この理論のもともとは「秘書採用問題」として研究されたものだからだ。

実際の夫婦の状況は?

では、実際に結婚している既婚男女の皆さんはどうだったであろうか。

今の配偶者は何人目の恋愛相手だったろうか。

とはいえ、ご夫婦の間柄でも、相手が今まで何人と付き合ってきたかをご存じの方は少ないだろう。そもそもそんな質問をしたら「なんでそんなことを聞くの?」と勘繰られ、質問に答えようが拒否しようが、結局面倒くさい場面しか生まれない予感がする。仮に、そういう話をオープンに言い合える関係性だったとしても、それが真実かどうかは確かめようがない。

そこで、20~50代の未既婚男女約1万5千人に対して行った調査結果でそれを類推したい。未婚と既婚のそれぞれ年代別に今まで付き合ってきた人数(恋愛人数)の平均値を出してみた。

それによれば、驚くべきことに、未婚と既婚とを分ける恋愛人数の境界線が、なんと「3.68人の壁」だったのだ。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

グラフにある通り、未婚男女の平均恋愛人数は、性別年代によって多少のばらつきはあるものの、50代未婚女性以外はすべて3.68人以下である。一方、既婚男女はほぼすべて3.68人以上の恋愛人数となっている。もちろん、実際の結婚に至るまで必ず10人が上限と決められているわけではないので、厳密には違うのだが、それにしても偶然とはいえ、興味深い。

当然ながら、確率として、最初に会った人が一番相性の良かった人である可能性もあり得る。が、先のグラフで提示したように、世の既婚者の過半数が3.68人目以上の相手と結婚していることも事実である。

婚活中の未婚男女は、もし今まで3人との恋愛経験がある場合、次に付き合う人が運命の相手かもしれないのだ。

結婚まで最低3人と恋愛?

だからといって、「最低3人以上との恋愛経験がなければ結婚なんてできない」などと言うつもりはない。

50代既婚者でいえば、現在の配偶者以外恋愛相手はいなかった(最初の恋愛相手が今の配偶者)という既婚者の割合は男15%、女12%も存在する。この全員がお見合い結婚だと断言はできないが、50代の世代が20代だった1985年頃は、まだお見合い結婚率が18%ほどあった。

つまり、今の50代以上の男女は、一度も恋愛経験のない状態でもマッチングさせたお見合いというシステムがあったからこそ結婚できたともいえる。

このように見てくると、生涯未婚率3割(男性)の時代というが、そもそも放置していたら今も昔も2割程度は恋愛をまったくしない可能性があり、「結婚して当たり前」という社会規範とそれを実現させる見合いシステムがなければ、皆婚時代の昔でさえ、その2割はそのまま生涯未婚として残っていたのかもしれないということも考えられる。

写真:イメージマート

自由恋愛とは…

恋愛したくてできない層ばかりならば、それは何らかの手立てが必要かもしれないが、こと恋愛は相手があることで、勉強のように自分ひとりが頑張ればどうにかなるものでもない。

そもそも恋愛というものに「興味がない・面倒くさい」という層が一定数存在するという視点も重要である。こちらの記事(→デマではないが正しくない。「結婚したいが9割」という説のカラクリ)で書いた通り、未婚男女のうち結婚に前向きなのは男4割、女5割にとどまる。それは近年急に増えたわけではなく、少なくとも1980年代から30年間以上変わっていない。

自由恋愛というのは、「自由に恋愛できる」ということでもあるが、「恋愛しないことも自由」であることを意味する。お見合いというお節介システムが消えゆく現代、未婚化が進むのは当然のことなのである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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