5月1日はすずらんの日。1日限りの和菓子サロン・ド・テ@パリ
今日は季節の話題です。
5月1日は「メーデー」。労働者のお祭りということで、パリでも労働組合主催の大規模なデモ行進がおこなわれるのが恒例になっています。
そしてもう一つ、5月1日といえばすずらんの日。この日は町中いたるところですずらんの花を売っていて、親しい人に小さな花束を贈るという慣習があります。
パリの路上で許可なく物品販売するのは普段ならば禁じられていますが、この日ばかりは例外で、どんな人でも街頭ですずらんを売ることができるのです。
そもそもこの風習はいつ頃からあるのでしょう?
少し調べてみますと、もう400年以上続いている慣習のようです。
春本番となるこの時期に愛らしい花を咲かせるすずらんは昔から親しまれていて、結婚シーズンでもあるこの季節、すずらんの花を愛する人に贈ったりすることはかなり以前からあったようです。
史実としてはっきりとしているのは、1561年から。時の王様シャルル9世が、5月1日、宮廷の女性たちにすずらんの花を贈るということが毎年の習わしになったのだそうで、それ以来、今日に至るまでフランスの風物詩として続いているというわけです。
さて、今年の5月1日、私はいつもと違う形ですずらんを愛でました。
以前、パリで活躍する和菓子職人の白石学さんのことをご紹介しましたが、その彼がこの日限定、すずらんのお菓子を愛でるサロン・ド・テを催しました。
場所はパリ1区にある「STAND TORA(スタンド・とら)」。高級ブランドが軒を連ねるサントノレ通りから一本細い道を入ったところにある大人の隠れ家のようなバーです。
実はこのお店、パリのうどん専門店「国虎屋」のオーナーが最近スタートさせたもの。「国虎屋」といえば、欧州在住者はもちろんのこと、旅人としてパリを訪れた方でも、異国で疲れた胃袋をこの店のうどんに癒されたという経験を持つ方は少なくないはずです。
今でこそパリで大活躍する日本人シェフが増え、和食の店も続々と開店していますが、20年以上続く「国虎屋」は、それらの先駆け的存在。フランス人の間でも人気はすっかり定着しています。
「スタンド・とら」は、世界的に大人気の日本のウイスキー、日本酒、そして焼酎などが楽しめる店で、席はカウンターの7席だけ。レコードプレーヤーからジャズが流れ、店の一角には炉が切ってあって、茶釜が掛かっているという、なんとも粋な空間です。
今回の5月1日限定、白石学さんのサロン・ド・テは、「国虎屋」オーナーファミリーの計らいで実現したもの。私はこの粋な空間でジャズを聴きながら、美しい創作和菓子と、白石さんが点てるお茶を彼が金継ぎした茶碗でいただくという贅沢なひとときを享受することができました。
グルメという点では、日本に負けず劣らずの自負があり、季節のイベントごとにお決まりの食べ物やスイーツがあるフランス。けれども、考えてみると、5月1日にはこれを食べる、というものはなく、2月14日のヴァレンタインデー同様、今のところは花が主役です。
とはいえ、人も世も移り変わってゆくもの。もしかしたら、(メーデーにはすずらんの和菓子を食べたくなる)などというムーブメントが起こらないとも限らず…。昨今のフランスでの日本びいきと重ね合わせつつ、そんな妄想を膨らませました。