選挙直前!ノルウェー政党の戸別訪問に密着
11日に国政選挙を控えるノルウェー。
どこの政党に投票するかまだ決めていない人の数は、64万人と国営放送局NRKは報じている(人口520万人)。
投票率の低下が心配される中、各党は一分でも無駄にしないように、必死に市民にラブコールをおくる。
投票日まで残り4日。アーナ・ソールバルグ首相が所属する保守党をお邪魔した。
この日は、投票所が閉まるまで「あと100時間!」運動がスタート。
7日(木)は、保守党が戸別訪問をする最後の日だ。同党は8月から連日、戸別訪問をして一般家庭のドアをたたき、投票を呼び掛けていた(首相も訪問することがある)。
選挙直前の金曜日と週末は、人々はリラックスモードになる。「ゆっくりと考えたいだろう」という配慮から、保守党が全国各地で夕方に戸別訪問をするのは木曜日が最後。
首都オスロにある党の会場では、ソールバルグ首相やスールアイデ防衛大臣が駆け付けた。
「残り最後の時間を、みんなでがんばろう!」、「笑顔を忘れずに」と、疲労しているであろう党員に声かけをした。戸別訪問する党員の多くはボランティアだ。
この後は、オスロ市内の地域ごとにグループに分かれ、個々の住宅を次々と訪問する。
筆者は「ノールストラン」地域を回るグループについていった。
中心地からこのエリアまでは車で移動。「僕たちは緑の環境党ではないから、車で移動だよ」と党員がつぶやいていた。
「保守党です。もう投票しましたか?なにか党の政策について疑問に思っていることはありますか?」と聞きながら、次々と家を訪問する。
- 「パンフレットはいりませんよ。私はいずれにせよ保守党に投票しますから!」
- 「首相の顔がプリントされた、そのTシャツを買いたいと思っていたのですが」
- 「まだ投票はしていません。パンフレットだけはもらっておこうかな。ありがとう」
- 「もう他の党に事前投票しました」
- 「進歩党とまた連立する可能性がある限りは、保守党には投票できないよ」
ドアは開けるが、「訪問はいりませんよ」とすぐに断る人もいた。
とある女性は、外に立つ党員とキッチンの窓から話を始めた。「まだどこに投票するか決めてはいないけれど、聞きたいことがあったの。保守党の学校政策はどうなっているの?」と、食材をまな板で切りながら質問をしていた。
ルディス・スヴィッダイ・フイエンさん(27)は、2013年に保守党の党員となった。現在はオスロ市議会に座る保守党チームの政治顧問をしている。
「できるだけたくさんの人と直接話して、投票してもらいたい。私はもう1000棟以上は回ったので、緊張はしなくなりました」。
選挙運動が始まり、まだ各党の政策が国民に浸透していなかった8月は質問が多かったそうだ。選挙直前の今は、大体の政策は把握されているので、質問は少なく、パンフレットをもらうだけのケースが多いと話す。
ラーシュ・ヨルゲン・オルセン(40)さんは、15才で保守党青年部に入党。これまで、小さな自治体で地方議員を何度か務めた。この選挙期間中には300棟ほど訪問したそうだ。
「個人の家を訪問するのは、ちょっと怖いですね」と話しながらも、次々とドアのチャイムを押していた。
ドアを開けたアンネ・マリエさんは、保守党の訪問だと知って笑顔で喜ぶ。
玄関前にいる筆者を見て、「あら、日本人なの?私は日本が大好きで、もう何回も旅行に行ったのよ!」と話す。
政党がドアをノックして訪問してくれることはどう思いますか?と聞くと、「とても嬉しいわ!特に、保守党が来てくれた時はね」と話した。
大人たちが帰宅する時間を狙い、保守党チームは夕方18~20時に訪問することが多かったそうだ。
ドアを開けた最初の人は、子どもであることも多かった。
「保守党!アーナ(首相の名前)の党だ!」。「僕も投票をしてみたい!」と、突然の訪問を喜ぶ子どもも多かった。
取材後、筆者が自宅に帰宅途中、近所の家の郵便箱になにやら紙を入れている人がいた。
緑の環境党で、オスロでは8番目の候補者として指名されているアイニ・ラングムーエンさんだった。普段はヴァイオリンの先生を副業としている。
今日は投票を呼び掛ける250枚の党のパンフレットを郵便箱に入れたそうだ。
ノルウェーでは、「移動手段」でも各党の性格がすぐにわかる。保守党は車と徒歩で移動していたが、緑の環境党は電気自転車だった。
選挙日の月曜日まであと数日。投票先を決められない、投票を考えていない「(座って動こうとしない)ソファ有権者」の票を獲得しようと、各党は最後のチャンスにかける。
Photo&Text: Asaki Abumi