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太平洋側では殺人的な猛暑に注意・大気中の水蒸気が多くなっており北陸~東北は「梅雨末期豪雨」に警戒

饒村曜気象予報士
雷雨の街並み(提供:イメージマート)

太平洋側を中心に猛暑

 令和6年(2024年)7月8日は、梅雨前線が東北地方に停滞し、この梅雨前線に向かって南から暖かくて湿った空気が流入し、晴れて強い日射があったことも加わって、西日本から東日本の太平洋側では記録的な暑さとなりました。

 7月8日に全国で気温が一番高かったのは、和歌山県・新宮の39.6度で、前日の静岡のように40度には届きませんが、体温超えの危険な暑さです。

 このほか、東京都・府中(39.2度)など、全国33地点(気温を観測している全国914地点の約4パーセント)で37度以上という、体温超えの危険な暑さでした。

 また、最高気温35度以上の猛暑日は、全国で155地点(約17パーセント)と、今年最多だった前日、7月7日の244地点(約27パーセント)には及びませんでした(図1)。

図1 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(7月9日以降は予想)
図1 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(7月9日以降は予想)

 なお、最高気温が30度以上の真夏日を観測したのが519地点(約57パーセント)、最高気温が25度以上の夏日を観測したのが750地点(約82パーセント)で、こちらも今年最多にはなりませんでしたが、夏本番の数値であることには変わりがありません。

 この殺人的な暑さは、東北地方に前線が停滞する見込みの7月8日も続く見込みです(図2)。

図2 予想最高気温(7月9日の予想)
図2 予想最高気温(7月9日の予想)

 日中は外での活動を控え、こまめな水分補給や適切な冷房の使用など、熱中症対策に努めてください。また、夜になっても気温が下がらず、熱帯夜の所も増えていますので、夜間の熱中症にも注意してください。

梅雨前線停滞で北陸から東北の大雨と太平洋側の猛暑

 気温が高くなると、大気中に含むことができる水蒸気の量が増えます(図3)。

図3 気温と飽和水蒸気量との関係
図3 気温と飽和水蒸気量との関係

 気温が20度の時、1立方メートルに17.3グラムの水蒸気しか含むことができませんが、30度になると、1立方メートルに30.4グラムの水蒸気を含むことができます。

 梅雨末期は、梅雨初期に比べて気温が高くなることから大気中の水蒸気量がより多くなり、「梅雨末期豪雨災害」が少なくないのです。

 北陸地方でいうと、梅雨入りの平年が6月11日、梅雨明けの平年が7月23日です。この期間、新潟市の最高気温は24.5度から29.9度へと5.4度上昇します。

 飽和水蒸気量でいうと、1立方メートルで約22グラムから約30グラムへと4割ほど増えます。つまり、梅雨末期は梅雨初期と同じような状況でも4割ほど雨量が多いということを意味しています。

 7月9日は梅雨前線が北陸から東北地方に停滞する見込みで、前線に向かって暖かくて湿った空気が流入しますので、8日に続いて、北日本から西日本の広い範囲で大気の状態が非常に不安定となるみこみです。

 これまでに降った大雨により、土砂災害や洪水災害の危険度が高まっている所での雨ですので、北陸から東北地方は土砂災害や低地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒してください。

 そして、7月10日以降は梅雨前線が西日本を中心に南下してきますので、日本海側の地方では150ミリ以上、所によっては300ミリ以上の雨が降る見込みです(図4)。

図4 72時間予想降水量(7月9日0時から11日24時)
図4 72時間予想降水量(7月9日0時から11日24時)

 梅雨明けのような暑い日が続いていても、ほとんどの所で梅雨はまだ明けていません。

 最新の気象情報を入手し、梅雨末期の大雨に対して十分に警戒してください。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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