ウクライナ危機があぶりだす日本の政治の貧困-参院選の争点になるべきことは?
来月10日に投開票が行われる第26回参議院議員選挙。大きな争点として、ウクライナ情勢を受けての、安全保障および改憲がマスコミ報道などでも取り上げられている。ただ、改憲しなくても、侵略戦争に対し対応できる上、ウクライナ情勢での対応というならば、エネルギー価格の高騰による経営や家計の負担増に対する支援や、化石燃料に依存しない社会や経済の脱炭素化の方が優先度が高い。また、「難民認定率が低い」と国連からも名指しされ、ウクライナからの難民認定申請者であっても、難民として認定できない、日本の難民認定審査のあり方も問われるべきだろう。
〇無用で有害な「改憲」
はっきり言えば、「火事場泥棒」だ。戦災に苦しむウクライナの人々の不幸を利用するかたちで、改憲を推し進めようとする自民党や日本維新の会などや、「平和の党」をアピールしながら、改憲の動きを止めることに及び腰な公明党には、ウクライナ現地を取材してきたからこそ、筆者は強く憤りを感じる。改憲の必要性をアピールする政治家達は、ウクライナ危機にかこつけて、「攻められたどうする?」と脅威を煽るのだが、仮にどこかの国が日本に侵攻してきたとして、現行憲法で対応可能だ。歴代政府の見解では、憲法の下でも個別的自衛権は認められており、それを行使するための必要最小限度の実力であれば憲法9条2項の禁止する「戦力」には当たらないというものであり、これについて、今日では、日本社会の中でも広く受け入れられていると言えるだろう。それならば、何故、改憲しようとするのか。それは、単なる日本の国民を護るための、必要最小限度の実力のみならず、米国が主導する戦争に自衛隊を参加させられるよう、日本国憲法第9条の1項と2項を死文化させるのが、改憲派の政党の狙いではないか。これは、一見とてもわかりづらく、自民党や維新改憲派などの改憲派の政党は「憲法に自衛隊を明記する」ことを主張しており、それについての思惑をあまり説明しようとしないのであるが、法律にある程度詳しい人ならピンとくるはずだ。つまり、法律の原理として、「後法優越の原理」というものがある。すなわち、同系統の複数の制定法では、後から別の規定を有する法律が制定された場合には前法より後法が優先されるというものだ。要は、「後法は前法を破る」ということである。
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