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ペップの発明と、3バックシステムと。「第3のCB」に左右非対称のビルドアップ。

森田泰史スポーツライター
シティのグアルディオラ監督(写真:ロイター/アフロ)

彼は、すべてを勝ち取った男だ。

現在、プレミアリーグで首位を独走しているのはマンチェスター・シティだ。そして、そのシティで就任6年目を迎えて充実のシーズンを過ごしているのがペップ・グアルディオラ監督である。

ペップの指導者キャリアはバルセロナBでスタートした。チームを4部から3部に昇格させたのち、トップの監督に就任。2008年から2011年にかけて14個のタイトルを獲得するという黄金時代を築き上げた。

■戦術の発明

また、バルセロナでのペップの功績のひとつが、戦術の発明と多彩なシステム構築である。

リオネル・メッシをファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)に据え、得点力をアップさせたのは有名だ。ただ、ここでは、ペップが試みた3バックに焦点を当てたい。

ペップの最終的な到達点は【3−4−3】のゼロトップだった。つまり、【3−7−0】のシステムだ。

バルセロナを率いたラストシーズン、クラブ・ワールドカップ決勝のサントス戦で、それは披露され優勝という結果で実を結んだ。

バルセロナ時代のグアルディオラ監督
バルセロナ時代のグアルディオラ監督写真:なかしまだいすけ/アフロ

奇しくも、昨季のチャンピオンズリーグ決勝で、シティの前に立ちはだかったのは3バックのチームだった。トーマス・トゥヘル監督のチェルシーである。

■第3のCB

チェルシーの3バックが特別だったわけではない。が、しかし、その戦い方は考察に値するものだった。

特徴的なのは第3のCB(外側のCB)である。

まずは、3バックの性質を理解する必要があるだろう。ゴール前を固めて、相手の深い位置への侵入を妨げる。マーク(マンツーマン/ゾーン)を行いながら内と外へのカバーリングをする。バイタルエリアを厚くケアできるというのが、3バックの強みだ。

リュディガーとアスピリクエタ
リュディガーとアスピリクエタ 写真:代表撮影/ロイター/アフロ

攻撃時には数的優位を作りやすい。相手が2トップシステムだった場合、3バックと2トップで「3vs2」が容易にできる。

ここから3バックのペネトレイトが始まる。3vs2の状況から、「第3のCB」がポジションを上げる。逆サイドのC Bが下がる格好で左右非対称のシステムが形成される。

相手が前線からプレスを掛けてきた場合、外側のCBの一人がポジションを上げる。あるいは自らボールを運べば相手の2トップの守備を無効化できる。

相手がリトリートで自陣に引くのなら、中盤まで上がりミドルゾーンで数的優位を作る。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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