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これが新しいF1だ! バルセロナ合同テストに新時代のマシンが登場。レッドブルの攻めた造形に歓喜の声

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
レッドブルRB18(写真:ロイター/アフロ)

新時代を迎えた「F1世界選手権」のプレシーズンテストが2022年3月23日(水)からスペインのバルセロナ近郊にあるカタロニアサーキットで始まった。

これまでオンラインのプレゼンテーションや映像撮影のための走行機会で各チームは今季の新規定に対応したマシンを発表してきたが、その多くはいわゆるショーカー的なもの。バルセロナテストにいよいよ実走行する仕様になったマシンが出揃い、本格的な今シーズンの戦いがスタートしたのだ。

レッドブルのデザインに熱い視線

開幕戦のバーレーンGPまで、各チームが充分な走行ができる機会は、今回のバルセロナテストと開幕直前のバーレーンテストの合計6日間しかない。今季は車体のレギュレーションが大幅に変更された新世代のマシンによる戦いになるが、この6日間を通じて様々なトライ&エラーが行われ、開幕戦には初日とは異なる仕様のマシンが登場することになるだろう。

レッドブルRB18
レッドブルRB18写真:ロイター/アフロ

バルセロナテスト初日に世界中のF1ファンを興奮させたのは、2021年のチャンピオンドライバー、マックス・フェルスタッペンが乗る「レッドブル」のレッドブルRB18の姿だった。SNSでは数多くの引用リツイートなどが行われ、その期待の大きさが伺える。

そのフォルムは2月9日に行われたライブ配信でお披露目されたデザインとは全く異なるものだった。チャンピオンチームが早い段階で手の内を見せないことは当然と言えるが、バルセロナを走り出した新車RB18はライバルチームと全く違う路線の「攻めた」デザインになっていた。特にサイドポッド(サイドポンツーン)は前方のインテーク部分から絞り込まれ、後方にかけて複雑な形状が見える。

プルロッドのフロントサスペンションを持つRB18
プルロッドのフロントサスペンションを持つRB18写真:ロイター/アフロ

また、フロントサスペンションは逆ハの字形のプルロッドを採用してきた。今季のレギュレーション変更を踏まえ、プルロッドを採用するチームがあると予想されていたが、「マクラーレン」の新車マクラーレンMCL36に続いて2例目となる。「レッドブル」はリアサスペンションにプルロッドを採用してきたが、RB18では逆にリアはプッシュロッドになっている。空力面も考えて、新規定に合わせて大胆なレイアウト変更を行なってきたところに「レッドブル」らしさが見える。

マクラーレンもプルロッドを採用
マクラーレンもプルロッドを採用写真:ロイター/アフロ

様々なテストを行う各チーム

フロントサスペンションのプルロッド採用で驚かせたのは「マクラーレン」と「レッドブル」の2チームのみとなったが、今季は大幅な車体レギュレーション変更により、個性豊かなマシンが登場している。似たり寄ったりのデザインになりがちだったF1が変わろうとしている。

フェラーリF1-75
フェラーリF1-75写真:ロイター/アフロ

バルセロナテストの初日は新しいシステムの確認に加えて、実車走行時の空気の流れを読み取る目的で、ピトー管を取り付けた金網のようなエアロレイクを装着したり、蛍光イエローの塗料を塗って走行するフロービジュアライゼーション(通称:フロービズ)を行うチームが多く、まずはデータ収集に徹する。

バルセロナのコースはレースではオーバーテイクがし辛いことで有名だが、中低速、高速コーナーがバランスよく配置されていることから、マシンの性能を確かめるのに最適なサーキット。ボディ全体の形状も、フロントウイングの形も、サイドポッドの大きさも全く異なるデザインになっている今季のF1で、まず速さを証明するのはどのチームか、興味は尽きない。

アストンマーティンAMR22
アストンマーティンAMR22写真:ロイター/アフロ

しかしながら、本当の勢力図が見えてくるのは開幕戦の舞台となるバーレーンでのテストになるだろう。まずはトラブルなく、できる限り多くのデータを取ることが先決だ。ちなみに初日にあまり多くの周回数を稼げなかったのは「アルファロメオ」(32周)、「ハース」(43周)で、「レッドブル」のマックス・フェルスタッペンが1人で147周も周回したことを考えると早くもトップチームと下位チームに大きな差ができてしまったと言える。

カモフラージュ柄で登場したアルファロメオ
カモフラージュ柄で登場したアルファロメオ写真:ロイター/アフロ

初日トップはマクラーレンのノリス

新しい車体、18インチのタイヤなど全く新しいレギュレーション下で行われたバルセロナテスト初日のトップタイムは「マクラーレン」のランド・ノリス。103周の周回数を一人で走ったノリスのベストタイムは1分19秒568。ちなみに2020年のテストの初日ベストは1分16秒987。

マクラーレンのランド・ノリス
マクラーレンのランド・ノリス写真:ロイター/アフロ

今年のF1マシンはタイヤを供給するピレリが「2021年に比べて0.5秒〜1秒遅くなる」と予想していることを考えれば、まだ3秒もの開きがあり、初日のタイムは全く参考にならないと言える。

トップタイムを獲得したノリスは「1番になりたくなかったよ。期待は大きいけど、数日後は今日の僕のタイムを超えてくるからね。多くのことを学んだ1日だった」とコメント。ノリスはピットレーンでストップしてしまうトラブルにも見舞われた。

F1バルセロナテスト
F1バルセロナテスト写真:ロイター/アフロ

野心的なデザインのマシンをシェイクダウン(初走行)させた「レッドブル」のマックス・フェルスタッペンは総合9番手(1分22秒246)。ニューマシン、RB18の印象について「以前のマシンとは全く違う。でも良い感じで、思っていたよりも速さがあると感じるので、これからが楽しみだ」とF1の公式インタビューに答え、笑顔を見せた。

ジョージ・ラッセルが駆るメルセデスW13
ジョージ・ラッセルが駆るメルセデスW13写真:ロイター/アフロ

一方で、新加入のジョージ・ラッセルと共にテストの時間をシェアして初日を終えた「メルセデス」のルイス・ハミルトンは総合5番手(1分20秒929)をマーク。午前中はピットレーンを歩き、各チームの新車を自分の目で偵察して周ったという。最大のライバル「レッドブル」に比べるとかなりシンプルで保守的にも見える「メルセデス」の新車W13のポテンシャルはどんなものか楽しみだ。

アルファタウリAT03に乗る角田裕毅
アルファタウリAT03に乗る角田裕毅写真:ロイター/アフロ

また、日本人ドライバーの角田裕毅は初日に121周の周回を一人で走り、総合7番手タイム(1分21秒638)を記録。「今日はできる限り多くのデータを集めなければいけなかったのですが、とても信頼性があるマシンだったので、全て達成することができました」とコメントし、良いテスト初日になったようだ。

バルセロナテストは25日(金)まで開催される。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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