F1合同テストが2月23日にスタート!大変革のシーズン開幕を前に抑えておきたいポイント
2022年、F1は重要なターニングポイントを迎える1年になる。
史上最多の全23戦で争う「F1世界選手権」の開幕を前に、2月23日(水)〜2月25日(金)にスペインのカタロニアサーキットで、開幕直前の3月10日(木)〜12日(土)に中東のバーレーンインターナショナルサーキットで合計6日間のプレシーズンテストが行われることになっているが、今回は2022年のF1を楽しむために知っておきたいことをまとめて紹介していこう。
約40年ぶりのウイングカーに!個性あふれるマシン
新しいマシン規定が導入される初年度は各チームが作る車体デザインのアプローチに違いが生まれ、個性豊かなマシンが話題になるものだ。1、2年後には似たようなデザインに落ち着くのもまた常と言えるが、今年はどのチームのデザインが正解なのかを予測しながら、開幕前のプレシーズンテストを楽しめるだろう。
【2022年のF1マシン規定 主な特徴】
・新しい空力デザイン、ウイングカーの復活
・接近戦、オーバーテイクを促進するマシンに
・18インチホイールの新タイヤ導入
・ホイールカバーの装着
・前輪ブレーキの大径化
・最低重量は790kgに増加
・パワーユニットの開発作業が凍結
2022年に導入される新しいマシンではエアロダイナミクス(空力)に関する規定が大幅に見直された。これは接近戦が起こりやすく、オーバーテイクが促進する目的で導入されたものだ。これまでF1マシンは空力パーツ(主にウイング)で走行中のマシンを路面に押さえつけるダウンフォース(下向きの力)を得るために様々な工夫をしてきた。しかし、デザインできる部分に制限が加わったことで、大雑把に言えば、空気を効率よく流すためのゴテゴテしたパーツが付けられないようになった。これで後方への乱気流が少なくなり、マシン同士が接近したバトルをできるようになる(と想定されている)。
また、制限によって失われたダウンフォースを補うためにフロア(マシン下面)の規定が変更され、下面が後方に向けて迫り上がる「ウイングカー」構造を持つマシンになった。ボディ全体でダウンフォースを得るウイングカーはグラウンドエフェクトカー、ヴェンチュリーカーなど様々な呼び方があるが、新規定ではマシン下面に流れる空気を読み取ることが開発のキーポイントだ。
新規定の導入がコロナ禍の影響で当初の2021年から1年先延ばしになったことにより、約3年近くに渡る各チームの研究開発の「答え合わせ」が行われるのが僅か6日間しかないプレシーズンテストなのだ。開発に失敗したチームが大幅に遅れを取り、大きな番狂わせが起こる可能性もある。
そして、ピレリが独占供給するタイヤのホイールサイズが13インチから18インチに大型化したことも大きな変更だ。ホイールは日本ブランドの「BBS」が今季から全チームに独占供給することが決まり、BBS製のホイールカバーも装着される。
さらに、今季のマシンは最低重量が昨年比38kg増の790kg(ドライバー込み)とかなり重いマシンになり、かつて1990年代初頭の最低重量が500kg程度(ドライバー含まず)だったのを覚えているファンはビックリしてしまう数字だろう。当然、2021年に比べてラップタイムは落ちるが、それでも500kg時代よりも遥かに速いタイムを刻むのが今のF1だ。
なお、ハイブリッドシステムを搭載し、約1000馬力を生み出すパワーユニットは今季の開幕戦以降は開発が凍結されるため、現行規定下では一旦最終形に近い形となる。
ドライバーの大型移籍は少なめの2022年だが
2014年のパワーユニット規定導入以後は「メルセデス」の独走劇が続いたF1。昨年、ようやく「レッドブル」のマックス・フェルスタッペンが新チャンピオンになったが、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が変わらぬ強さを誇示している。
今季はそんなハミルトンの相棒が変わる。新たに「メルセデス」入りを果たしたのは24歳のジョージ・ラッセルだ。3年間、「ウィリアムズ」に在籍し、2020年には代役で「メルセデス」から出場し、あと少しで優勝というところまで行った。誰もが速さと才能を認めるラッセルのトップチーム移籍は今季のドライバーラインナップで最注目のポイントだ。「メルセデス」のマシンの仕上がり次第ではあるが、若き才能が絶対王者のハミルトンにどこまで肉薄するか、あるいは凌駕するのか興味深いところだ。
一方で、「メルセデス」を離れたバルテリ・ボッタスは「アルファロメオ」に移籍。チームメイトには中国人初のF1レギュラーとなるジョー・ガンユーが乗る。また、近年は後方に沈むことが多かったかつての名門「ウィリアムズ」は元レッドブルのアレクサンダー・アルボンを起用。今季はチーム間の差が縮まることも期待されており、トップチームからテールエンダーまでチャンスがあり、目が離せないシーズンになることを期待したい。
昨年のコンストラクターズ王者は「メルセデス」が、ドライバーズ王者は「レッドブル」が獲得したが、その2強に割って入ることが期待されているのが「マクラーレン」と「フェラーリ」、そして「アルピーヌ」だ。
「マクラーレン」は昨年4度の表彰台を獲得したランド・ノリスと移籍初年度で優勝したダニエル・リカルドのコンビを継続。名門復活の大チャンスである今季に向けて集中してきただけに、今季のマシンの仕上がりは要注目。
そして「フェラーリ」もシャルル・ルクレールとカルロス・サインツのラインナップは変わらず。昨年、フェラーリ移籍初年度ながらもエース格のルクレールを上回り、自己ベストとなるシリーズ5位を獲得したサインツのレース巧者ぶりは今季も注目。
また、ルノーワークスの「アルピーヌ」は昨年、エステバン・オコンがハンガリーGPで初優勝。フェルナンド・アロンソも40歳にして表彰台を獲得した。
空力規定の大幅な変更があった2009年には新参チームの「ブラウンGP」がチャンピオンを獲ったり、パワーユニット規定導入の2014年には「メルセデス」が圧勝したりと、こういった転換期には前年まではなかった勢力図変化が起こりやすい。かつてないほど記憶に残るシーズンになった2021年を見てもわかる通り、誰もが新しいスターになる可能性を秘めているのが今のF1だ。
【2022年ドライバーラインナップ】
・メルセデス
ルイス・ハミルトン/ジョージ・ラッセル
・レッドブル
マックス・フェルスタッペン/セルジオ・ペレス
・フェラーリ
シャルル・ルクレール/カルロス・サインツ
・マクラーレン
ランド・ノリス/ダニエル・リカルド
・アルピーヌ
フェルナンド・アロンソ/エステバン・オコン
・アルファタウリ
ピエール・ガスリー/角田裕毅
・アストンマーティン
セバスチャン・ベッテル/ランス・ストロール
・アルファロメオ
バルテリ・ボッタス/ジョー・ガンユー
・ウィリアムズ
ニコラス・ラティフィ/アレクサンダー・アルボン
日本的な注目点。2年目の角田、新しいホンダ
昨年限りで日本のホンダが撤退し、寂しさを感じている人は多いかもしれない。
しかしながら、ドライバーズ王者になったマックス・フェルスタッペンが乗る「レッドブル」が搭載するのは、名前こそレッドブル・パワートレインズになったものの、実際にはホンダが製作を手がけるパワーユニットだ。もちろん、姉妹チームの「アルファタウリ」も同じパワーユニットを使う。
新カラーと共にお披露目された「レッドブル」「アルファタウリ」のマシンには「HONDA」のロゴはないが、今年からホンダのモータースポーツを一手に担う「HRC」(株式会社ホンダレーシング)のロゴが掲示されている。今後はレッドブル・パワートレインズに完全に移行していくとされているが、ホンダが完全にF1をスッパリ辞めたわけではなく、日本の技術はF1で走り続けるというわけだ。
直接的な日本とF1の繋がりという意味では、プレシーズンテストでは「アルファタウリ」の角田裕毅に注目が集まる。昨年、角田の存在が一躍注目されるようになったのは開幕前のテストだった。
今年は2年目ということで様々な経験を積んだ上でのテストになる分、角田が果たせる役割もかなり大きくなるだろう。新規定導入後の勢力図変化を掴むために、角田にとっても重要な6日間になる。全チームが振り出しに戻るからこそのビッグチャンスが待っているかもしれないのだ。
2月23日(水)〜2月25日(金)のバルセロナテストでは勢力図が少し見えるにとどまるだろう。トップチームがあえてタイムを出しにいかない可能性もあり、本格的な手の内を垣間見せるのは3月10日(木)〜12日(土)のバーレーンテストになるかもしれない。
しかしながら、「バーレーンGP」の開幕まではあと僅か1ヶ月。熱心なファンにとっては、F1関連のニュースが次々に配信される濃密な日々になるのは間違いないだろう。もちろん全てがリセットされる新規定導入の今季だからこそ、新しいファンもF1を見始める良いタイミングになるはずだ。