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インディカー開幕プレビュー!パロウが連覇を狙い、佐藤琢磨はチーム移籍で心機一転

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
インディカー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「NTTインディカーシリーズ」(以下インディカー)の2022年シーズンが2022年2月27日(日)に早くも開幕する。例年よりも半月ほど早い、異例の2月開催となる開幕戦の舞台はフロリダ州のセントピーターズバーグ市街地だ。

若手の台頭で世代交代のシーズンと言われた2021年に続き、今季も相次いで参戦を発表した新顔や若手が勢いを見せるのか、予測不能なシーズンとなりそうな2022年のインディカーをプレビューする。

佐藤琢磨はデイルコインに移籍

まずは、日本期待の佐藤琢磨の動向からご紹介しよう。2度の「インディ500」ウイナーで45歳の佐藤琢磨は今季、「デイルコイン・レーシング・ウィズ・リックウェア・レーシング」に移籍した。

今季はチームを移籍する佐藤琢磨(2021年)
今季はチームを移籍する佐藤琢磨(2021年)写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

同チームは元インディカードライバーのデイル・コインが率いるチームで、40年近い歴史を持つ老舗だ。日本のファンにはかつてヒロ松下や黒澤琢弥らが走ったこともあり、馴染みがある名前だろう。

佐藤琢磨が近年所属していた「アンドレッティ・オートスポーツ」や「レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング」と違い、「デイルコイン・レーシング」にはインディ500で優勝した経験がなく、情熱のプライベーター的な雰囲気が漂うチームだ。

しかしながら、昨年チャンピオンになったアレックス・パロウがルーキーイヤーの2020年に所属して最高位3位表彰台を獲得したし、昨年は元F1ドライバーのロマン・グロージャンがこれまたルーキーながら3回の表彰台を獲得するなど、「デイルコイン・レーシング」ではこの2年間だけを見ても、インディカー経験が少ないドライバーたちが好成績を残している。

ロード(常設サーキット)やストリート(市街地コース)で良い成績を残す傾向があり、しかもルーキーやチームを移籍したてのドライバーが好成績を残すことが多いので、13シーズン目を迎える佐藤琢磨にとっても悪くない選択肢と言えるだろう。

2017年、2020年に続くインディ500優勝にも期待したい。
2017年、2020年に続くインディ500優勝にも期待したい。写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

パロウが連覇を狙い、グロージャンがフル参戦

「デイルコイン・レーシング」の卒業生であるアレックス・パロウはディフェンディングチャンピオンとして挑むシーズンだ。今季でまだ3年目のシーズンではあるが名門「チップガナッシ」のエースとして、インディ500の初優勝を含め、シリーズ連覇に期待がかかる。ミスが少なく、決勝レースでの安定した走りはパロウの持ち味であり、オーバル、ロード、ストリート全てに強いマルチプレイヤー。昨年の3勝以上の勝利が期待できる今季、間違いなく軸になっていくドライバーだ。

アレックス・パロウ
アレックス・パロウ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

同じくデイルコイン卒業生のロマン・グロージャンは今季、トップチーム体制となる「アンドレッティ・オートスポーツ」へと移籍した。伝統のDHLカラーの28号車をドライブするグロージャンは昨年、ロード、ストリートの全13戦に限定しての出場だったが、今季はインディ500を含めた全レースに参戦する。インディカー初年度ながら、流石は元F1ドライバーと言わしめる走りでポールポジション、表彰台を獲得していったグロージャン。今季は優勝を狙える体制で、インディカーで新たなキャリアの1ページを開きそうだ。

また、昨年スポット参戦ながら「インディ500」で4度目の優勝を果たした大ベテラン、エリオ・カストロネベスは「メイヤーシャンク・レーシング」から5年ぶりにフル参戦を果たす。チームメイトには昨年まで名門「ペンスキー」で走っていたシモン・パジェノーが加わり、インディ500ウイナーでありシリーズチャンピオン獲得経験者のコンビという強力な布陣になるので注目だ。

エリオ・カストロネベス
エリオ・カストロネベス写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

また、昨年「ペンスキー」「アンドレッティ」「チップガナッシ」の3強チームに並んで2勝をマークした「アロー・マクラーレンSP」は昨年ランキング3位のパト・オワードフェリックス・ローゼンクビストのコンビを継続。全16戦中8戦でラップリーダー(首位走行)となったオワードの速さは今季も目が離せない。

ルーキーがシーズンを掻き回すか?

優勝回数でいけば3強と言われるチームがいまだに多くの勝利数を稼ぐインディカーだが、近年は3強以外のドライバー、しかもルーキーがいきなり大活躍を見せ、毎戦のように注目ポイントが増えていくのが興味深い。

先に挙げたパロウやグロージャンがルーキーイヤーから活躍したように、今年も伏兵がレースを面白くしてくれるだろう。今年はスポット参戦となる女性ドライバー、タチアナ・カルデロンを含めて6名のドライバーがルーキーとして参戦するが、要注目なのは佐藤琢磨の後釜として「レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング」からフル参戦を果たす、クリスチャン・ルンガーだ。

(クリスチャン・ルンガーのTwitter)

ルンガーは昨年までFIA-F2に参戦し、2020年には優勝も経験したデンマーク人のドライバーで、昨年はインディアナポリスのロードコースで1戦だけインディカーに出場した。初のインディカー参戦でいきなり予選4番手を獲得する速さを見せたルンガーは決勝では12位と苦戦したものの、順位を落としても追い上げてくるレースを披露し、今季のレギュラーシートを勝ち取った。アルピーヌのF1候補生だったルンガーだが、アロンソやグロージャンのインディカーでの活躍に刺激されて、自身の目標をインディカーに定めたという。

インディカー
インディカー写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

また、2020年のFIA-F2で角田裕毅らとチャンピオンを争い、フェラーリのテストドライバーとして育てられたカラム・アイロットが今季は「フンコス・ホリンジャー・レーシング」からインディカーにフル参戦。昨年も同チームから3戦にスポット参戦したアイロットだが、今季はフェラーリを離れて北米のレースに集中することになった。

(Twitter : INDYCAR)

「フンコス・ホリンジャー・レーシング」はインディカー傘下のインディライツなどで活躍したチームであるが、インディカーでは経験不足。アイロットの実力を考えれば1台体制の心もとないチームであるが、フンコスは2019年のインディ500でフェルナンド・アロンソを逆転して予選落ちさせたことでも話題になったチーム。可能性を秘めた若手、アイロットを擁してのジャイアントキリングにも期待したい。

このように近年はヨーロッパのレース環境で育ってきたドライバーが活路を見出し、いきなり活躍を見せるケースが増えてきたインディカー。オーバル、ロード、ストリートと様々なタイプのコースがあることで経験が必要とされていたのは過去の話。ヨーロッパ育ちのドライバーが増えたことで、今季のインディカーはさらに混戦に拍車がかかりそうだ。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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