なぜ?「残業できないなら辞める」と言う若者の意外な本音
■残業を求める若者たち
「残業できないなら辞めます」
4年ほど前なら耳を疑った。しかし、意外と最近は多く耳にするようになった。もちろん、こう言うのは若者だ。ベテラン社員がこんな発言をするはずがない。
「残業代が出ないなら辞めます」
とか、
「残業しないなら辞めろ」
とか、こういった発言なら理解できるだろう。しかし、
「残業したいのに、させてもらえないなら辞める」
である。管理部の責任者が聞いたら驚くだろう。「残業代が欲しいのか?」と質問したら、
「違います」
と言い返してくる。仕事に対する責任感が強く、成長するためにもっと仕事をしたい。勉強したいと言っているのだ。新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません』にも書いたが、ホワイトすぎる職場、優しすぎる環境を好まない若者が増えている。だから、
「若者に辞められると困るので、残業やめてくれとは言えません」
という上司も、現在は少なからずいる。
■自分のペース、リズムで仕事ができない若者たち
残業を嫌がる人も多いが、成長意欲が高い若者、その仕事が好きで入社した若い人は、定時で退社することを好まない。
知人の若い税理士も、
「毎日6時、7時で帰宅していたら、いつまで経っても一人前になれない」
と言っていた。営業会社に勤めた新入社員も、
「今日中にやるべき仕事があっても、帰れと言われてしまう。フリーランスになったほうがいい」
と愚痴を言う。早く慣れないと先輩社員に追いつかない。自分が思い描いたような「あるべき姿」に到達できない。だから、強制的に「タイムアップ」とされてしまうことに強い違和感を覚えてしまうのだ。
勉強でもそうだ。自分のペースがあるし、リズムがある。ノッテくるタイミングも人それぞれだ。なのに若いときは職場の都合に振り回され、リズムが狂わされる。夕方に30分、ようやく自分の時間ができたと思った矢先に、上司から
「4時半から会議に出てくれ」
「この資料を定時までに仕上げて」
などと言われる。これでは、いつまで経っても仕事に集中できない。ようやく6時ごろにフリーになったとしても、
「残業せず帰れよ。ワークライフバランスの時代だからな。お疲れさん」
なんて言われてしまう。短時間で要領よく仕事に慣れることができる若者ならともかく、そうでない若者には苦痛なのだ。
「みんなが帰ったあと、自分のペースで1時間や2時間、仕事させてほしい」
と考えるのは、むしろ健全なのかもしれない。
新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません』にも書いたとおり、若者がしっかりと仕事に没頭できるよう、環境づくりが必要だ。会議や1on1ミーティング、メール処理に時間を浪費させてはならない。とくにベテラン社員はタイパを意識したコミュニケーションを心がけよう。
そうすれば、残業を増やさなくても、仕事に熱中できる時間を十分に確保できる。