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周囲に広い雨雲を持つ台風7号は、眼がはっきりしてお盆休みを直撃 はるか東ではハリケーンから台風8号

饒村曜気象予報士
台風7号の雲(左上)とハリケーン「ドーラ」の雲(右下)(8月11日12時)

小笠原諸島の台風7号

 非常に強い台風7号が小笠原近海にあって、ゆっくりと北へ進んでいます。

 この台風は今後、非常に強い勢力を維持して小笠原諸島の東を北西へ進む見込みです(図1)。

図1 台風7号の進路予報と海面水温(8月11日21時)
図1 台風7号の進路予報と海面水温(8月11日21時)

 台風7号の進路予報は、最新のものをお使いください

 小笠原諸島では引き続き、暴風や高波、高潮、土砂災害に厳重に警戒してください。

 台風が発達する目安となる海面水温が27度と言われていますが、台風7号は海面水温が28度~29度の海域を進む予報となっています。

 このため、現在、中心気圧が940ヘクトパスカル、最大風速45メートル、最大瞬間風速65メートルの非常に強い台風ですが、小笠原諸島近海通過中に、中心気圧が935ヘクトパスカル、最大風速50メートル、最大瞬間風速70メートルへと、若干発達する見込みです。

 台風は、その後も日本の南を北上し、15日(火)から16日(水)頃にかけて、強い勢力で東日本や西日本にかなり接近するおそれがあります。

 東日本や西日本では、14日(月)頃から大荒れや荒れた天気となるおそれがあります。

 お盆休みに、台風7号が直撃する可能性があるのです。

大きな予報円

 台風の進路予報に予報円表示が使われるようになったのは、今から約40年前の昭和57年(1982年)からです。当時は、24時間先までの予報でしたが、台風進路予報(中心位置の予報)誤差は200キロもありました。

 台風の進路予報は、自然要因の変動がありますが、その後の気象衛星等の観測・解析技術や、数値予報などの予報技術の進展とともに誤差が小さくなり、現在は80キロ以下となっています(図2)。

図2 台風進路予報(中心位置の予報)の年平均誤差
図2 台風進路予報(中心位置の予報)の年平均誤差

 また、平成元年(1989年)から48時間予報(2日先予報)が始まり、平成9年(1997年)から3日先、平成21年(2009年)から4日先と5日先と予報期間が長くなっていますが、いずれの予報も確実に向上しています。

 現在の4日先の予報誤差は200キロを下回っており、40年前の24時間予報とほぼ同じ誤差です。 

 台風の予報円は、台風の中心が70%の確率で入る範囲を示したもので、その半径は、ほぼ進路予報誤差に相当していますので、気象庁では、予報技術向上とともに予報円の半径を適宜小さくしてきました。

 そして、今年、令和5年(2023年)からは、台風予報の元となっている数値予報の分解能が20kmから13kmに高解像度化したことなどから、3日先以降の進路予報に大幅な精度改善がはかられ、予報円の大きさを、これまでより絞りこんで発表しています。

 気象庁の説明によると、今年から、5日先の予報円はこれまでより40%、4日先の予報円で30%、3日先の予報円は20%小さくなるとのことです。

 予報円が小さくなることに伴って25メートル以上の暴風域に入る範囲を示した暴風警戒域も小さくなります。

 しかし、これは平均的な話です。個々の予報の中には、予報が難しくて誤差が大きい台風、つまり、予報円が大きい台風もあります。

 西日本や南西諸島に大きな被害をもたらした台風6号に続いて、台風7号も予報円の大きな台風です。

 ただ、台風の進路予報に大きな誤差があったとしても、お盆休み期間に影響を与えることには変わりはありません。最新の台風予報を入手し、余裕を持って行動変更を行うことが必要です。

台風の最接近

 気象庁では、5日先まで、台風の暴風域に入る確率を発表していますが、これを見ると、台風が最も接近する時間帯がわかります。

 台風7号による暴風域に入る3時間ごとの確率を見ると、東京都の伊豆大島では、一番大きな値が6パーセントですが、この値になるのが、8月15日の昼前から夜のはじめ頃です(図3)。

図3 台風7号による暴風域に入る3時間ごとの確率
図3 台風7号による暴風域に入る3時間ごとの確率

 つまり、伊豆大島では、8月15日の昼前から夜のはじめ頃に台風が最接近するということを示す予報でもあります。

 同様に、静岡県の遠州南(浜松市など)では、確率の値が一番高くなるのは8月15日の昼前から昼過ぎで、19パーセントと一番高くなっていますので、この頃に最接近と考えられます。

 さらに、和歌山県新宮・東牟婁(紀伊半島南端の串本町など)では、確率の値が一番高くなるのは8月15日の明け方から朝で、33パーセントと一番高くなっていますので、この頃に最接近と考えられます。

台風7号周辺の雨雲

 台風7号は、8月11日になると、台風の眼がはっきり見えるようになってきました。

 そして、同日3時には、それまでの「強い台風」から「非常に強い台風」にグレードアップとなっています。

 台風7号の近くでは、暴風や強い雨に厳重な警戒が必要です。

 加えて、台風7号の周辺にも注意する必要があります。

 小笹原諸島近海にある台風7号の円形の雲の塊の周辺には、広い範囲で雨雲が取り囲んでいます(タイトル画像)。

 これは、熱帯から暖かくて湿った空気が北上していることに対応しています。

 台風7号の動きが遅く、台風本体の雨雲はすぐには北上してこないといっても、台風周辺の雨雲は北上してきます。

 台風情報だけでなく、地元気象台が発表する注意報や警報などにも注意してください。

ハリケーンから誕生する台風8号

 台風は、熱帯で発生する低気圧(熱帯低気圧)のうち、東経180度(日付変更線)以西、赤道以北の北西太平洋(インド洋を含む)において、域内の最大風速が17.2メートル以上になったものをいいます。

 したがって、日付変更線を挟んで、台風になったり、台風でなくなったりしています。

 現在、中部太平洋にはハリケーン・ドーラ(DORA)があって西へ進んでおり、8月12日には日付変更線を越えて、北西太平洋に入ってくる見込みです(図4)。

図4 ハリケーン・ドーラ(DORA)の円形の雲と日付変更線(8月11日9時)
図4 ハリケーン・ドーラ(DORA)の円形の雲と日付変更線(8月11日9時)

 そして、北西太平洋に入った瞬間に、台風8号の発生です。

 中部太平洋から入ってきたことによる台風発生は、平均すると、2~3年に1個はあり、前回は、平成30年(2018年)の台風17号ですので、約5年ぶりと少し間隔があきました。

 ただ、台風8号が発生しても、すぐに弱まって北上する見込みですので、日本への影響はないと考えられます。

【追記(8月12日12時00分)】

 ハリケーン・ドーラ(DORA)が、8月12日9時に台風8号になりました。

 お盆休みの期間に大きな影響を与える台風7号と、台風7号の周辺に広がる雨雲に警戒が必要です。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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