マネーのプロ指摘、2021年の値上げで影響大きい「水道料金」「火災保険」
災害リスクの高い土地に住むと保険料は上がり続ける
ソニー損害保険株式会社が、全国のファイナンシャルプランナー200名を対象に、家計の支出や見直しに関する調査を実施した。
2021年1月以降に値上げが予定されている家計の支出の項目のうち、影響が大きいと予測されるものは、
第1位:(年収850万円以上の)住民税(49.0%)
第2位:火災保険・地震保険(水害含む)(47.5%)
第3位:水道料金(35.0%)
となった。このうち「水の問題」に関係する第2位、第3位について、その理由を見ていきたい。
まず、第2位の火災保険はなぜ上がるのか。
大手損害保険会社の火災保険料(水害を含む)は、来年1月から、自治体のハザードマップによる水害リスクに応じた保険料になる。
浸水リスクが低いと保険料は安くなり、高ければ保険料が上がる。ハザードマップだけでなく、損保が算定する保険料の動向からも、地域の水害リスクは明らかになる。
近年の自然災害の増加により、大手損害保険会社の保険金支払額は増えている。「平成30年7月豪雨」の発生した2018年度は約1兆6000億円の支払い、「令和元年東日本台風(台風第19号)」の発生した2019年度の支払いは約1兆円となる見通しだ。そして、今年も「令和2年7月豪雨」が発生し、多くの人が被災した。
損保会社は、大規模災害に備えた準備金を積み立てている。
しかし、毎年のように大規模災害が続けば準備金は減る。
準備金を増やすためには保険料の値上げが必要になる。
各社は19年10月に全国平均で6~7%値上げしたが、21年1月にも5%を超える値上げをする見通しで、19年度の災害を反映させた場合、21年以降もさらなる値上げが予想される。つまり、災害リスクの高い土地に住むと保険料は上がり続けると予想される。
気候変動によって激しくなる豪雨災害、土砂災害に対処するには、災害リスクの高い場所に住まないか、豪雨のたびに迅速に避難するしかない。
今後どこに住むかは非常に重要で、すでに今年8月から、家を買ったり借りたりする時に、不動産業者から水害リスクの説明を受けることになっているし、2年後には、土砂災害特別警戒区域における、新規の施設建設が原則禁止となる。
今回の調査では、ファイナンシャルプランナーの約8割が、「火災保険の値上げは一般家庭への影響がある」と考えており、家計収入の減少や値上げに備え、「火災保険の契約内容を確認・見直しすべき」と回答している。具体的には居住地のハザードマップを確認し、災害のリスクに応じて、過不足両面での見直すことが重要だ。
施設老朽化と人口減少で水道料金は上がる
次に第3位の水道料金が上がる理由を考えてみたい。
今年は、新型コロナウイルスの影響で家計への負担が増しているなか、水道料金の減免を実施する自治体が話題になった。
その一方で、4月には、茨城県水戸市、結城市などで10~20%程度の値上げが実施された。また、神奈川県横浜市や埼玉県川口市などは今年、水道料金の値上げを実施することになっていたが、新型コロナによる市民生活や地域経済等への影響を踏まえ、来年に延期することになった。
水道料金はおおまかに言えば、水源から家庭まで水が取水、浄水、給水されるコストを、利用者の数で割って算出される。だから、自治体ごとの水道料金は以下のように大きく異なっている。
さらに現在、多くの自治体で老朽化した施設を更新するためにコストは増加傾向にあり、同時に人口減少が進んでいるので、現在の水道料金では事業を維持できなくなる。
こうした実態は、各自治体の「水道ビジョン」「水道経営計画」などをWEBサイトで確認(「○○市」「水道ビジョン」と検索すれば出てくる)するとよい。そこには「人口減少による料金収入の低下」「老朽化した施設の更新がまったなし」「水道料金の値上げの検討の必要性」などの言葉が並んでいる。
長期的に経営計画を見直している水道事業も多くあり、コロナ禍での水道料金減免が、水道事業の持続を揺るがすケースもあるだろう。
では、値上げをなるべく抑える方法はないのだろうか。
中期的に考えると見直すべきは設備だ。水道は装置産業で多額の固定費がかかっている。現有施設を有効活用すること、大事に長く使うこと、無駄な設備を廃止していくこと、計画中の施設でも今後有効に使えないなら中止にすることだ。浄水場を減らす、管路をより効率的に配置する、人口減少地域に代替手段を考えるなどの工夫が必要だ。
水道の持続策は早めに手を打つほど効果が期待できる。