パレスチナ・ガザ地区に影を落とす水問題
厳しいガザ地区の水事情
ガザはイスラエルと共有する地下の帯水層の水に依存していますが、この帯水層の維持可能な年間算出水量は、イスラエルでは年間約4億5000万トンですが、ガザ地区では5500万トンにとどまっています。
加えてガザ地区は、地下水の流れの下流にあるため、上流のイスラエルによって水が汚染されてしまっています。また近年では、地下水量が減ったために地中海から海水が入り込み、地下水が塩水化しています。さらには繰り返される軍事攻撃によって水道管などの水インフラが破壊され、わずかな水も届かなくなっています。
水戦略を重視するイスラエル
一方、イスラエルは1948年の建国当時から「水の確保」を国の重要な戦略にしてきました。大量の移民への対応、周辺アラブ諸国との紛争に備えるためには水と食料の自給が必要と考えました。
1967年6月5日、イスラエルはヨルダン川の分水路とヤルムーク川の貯水池に計画されていたマカリン・ダム建設現場を空爆しました。これが第3次中東戦争の原因の1つとなりました。開戦6日目、イスラエルはアラブ側に属する重要な水源地帯、ゴラン高原とヨルダン川西岸を軍事安全保障の理由から占領しました。
その後1995年、オスロ合意を経て、西岸の水資源の8割をイスラエルに、2割をパレスチナに分配しました。オスロ合意では、数年以内に内容を見直すことになっていましたが、現在も内容は変わっていません。
近年は気候変動の影響を受け、降水量が減り、旱魃に見舞われています。イスラエルは水の再利用と海水淡水化(海水から真水をつくる)の技術開発を促進し、世界でも最高水準に達しています。地中海沿いに建てられた海水淡水化プラントでは、年間約5億8500万トンの水を生産しています。
国家として自立するには水が必要
アルジャジーラの報道によると、イスラエルでの1人当たり年間水使用量が240〜300リットルであるのに対し、パレスチナでは73リットルです。パレスチナでは不足している生活用水をイスラエルから購入しなくてはなりません。2018年にパレスチナで消費された水量3億8950万トンのうち約8670万トン(22%)がイスラエルから購入されたものでした。
ガザ地区にも海水淡水化プラントはありますが、供給量は年間410万トンにとどまっています。パレスチナでは「国家として自立を図るためには海水を淡水化することが必要」と言われてきましたが、プラントを動かすための電力供給は不安定です。
イスラエルとパレスチナの紛争に水問題が影を落としています。