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日本郵便の非正規格差判決はどこまで広がるか

城繁幸人事コンサルティング「株式会社Joe's Labo」代表

日本郵便の契約社員が正社員との格差是正を求めていた訴訟において、一部手当や休暇の有無の格差を違法と認める判決が続いています。

【参考リンク】<非正規格差判決>原告側「10割認定、うれしい」

また、この流れを受け、日本郵政グループ労働組合は2018年度春闘において、非正規従業員に正社員と同等の手当を支給することを要求するとのことです。

【参考リンク】郵政労組「非正規に手当」要求へ 同一賃金いち早く

同一労働同一賃金の実現に向けた大きな一歩だと言っていいでしょう。ただし、同一労働同一賃金が実現するプロセスについては若干誤解されている向きが多いようです。良い機会なのでまとめておきましょう。

同一労働同一賃金を実現するのは規制ではなく市場メカニズム

一般的に、同じ業務を行っている従業員同士で比較すれば、通常は雇い止めされやすい非正規雇用労働者の方が高リスクな分、そうでない正社員より高給になるはずです。実際、昨年度から正社員の昇給が頭打ちである一方、パート時給は大きな伸びを示していますが、これは雇用形態によるリスクの大小によるものと考えられます。

【参考リンク】正社員と非正規雇用労働者の賃金が逆転する日

にもかかわらず、なぜ日本郵便のように非正規雇用労働者の方が正社員より処遇が低い状況が成立するのでしょうか。それは、以下のような規制が存在するためです。

・正社員の解雇や賃下げに強い規制が課されている

・有期雇用は上限5年といった規制が課せられ、付加価値の高い業務は任されない

本来、同一労働同一賃金というのは上記のような規制を緩和し、労働市場全体が流動化した結果として成立するものです。たとえば、分不相応に貰いすぎている正社員の賃金を下げることで、雇用形態に関わらず頑張っている人の賃上げを行うことが可能となります。

能力と意欲のある契約社員は5年を超えてどんどん働いてもらうことで重要な仕事も任され、正社員以上に昇給することも可能となります。結果として同一労働同一賃金が成立するわけです。

既存の規制を温存したまま結果だけ実現しようとすれば、短期的に一部の非正規雇用労働者の処遇は改善するかもしれませんが、中長期では時給抑制や採用減といった何らかの形で、非正規雇用労働者自身が負担することになるでしょう。

人事コンサルティング「株式会社Joe's Labo」代表

1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。08年より若者マニフェスト策定委員会メンバー。

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