シリア政府との通商を再開したいアル=カーイダ、そして阻止するトルコ
貿易のアンバランス
シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構(旧シャームの民のヌスラ戦線)の通行所局長を務めるというサイード・アフマドなる人物は4月27日、反体制系サイトのドゥラル・シャーミーヤの取材に応じ、「解放区」の貿易のアンバランスを是正したいと述べた。
「解放区」とは、シリア政府の支配を脱した反体制派の支配地のこと。イドリブ県を中心とする北西部はシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握、アレッポ県北部、ラッカ県北部、ハサカ県北部はトルコが実質占領している。
アフマド氏はこのように述べている。
通行所設置の試みと住民の抵抗
こうしたなか、シャーム解放機構は4月27日、イドリブ県北部のマアーッラト・ナアサーン村とアレッポ県西部のミーズナール村を結ぶ街道沿線で、土塁や地雷を撤去し、通商用の通行所を設置する準備を開始した。
言うまでもなく、政府支配地域との貿易バランスを是正し、同地から商品を輸入するのが狙い。
しかし、現地では、マアーッラト・ナアサーン村の住民らが、新型コロナウィルス感染症の拡大を招くなどとして、通行所の設置に反対するデモを行った。
なお、シャーム解放機構は4月18日に、政府支配下のサラーキブ市に通じる通商用の通行所を設置することを決定し、準備を始めたが、住民の反発を受け、決定を撤回していた。
そしてトルコの介入
事態が緊迫化したのを受けて、トルコ軍部隊がキトヤーン村の分岐路に展開し、マアーッラト・ナアサーン村に近い政府支配地域に至る街道を封鎖、シャーム解放機構による通行路設置を阻止した。
トルコ軍はまた、マアーッラト・ナアサーン村、シャラフ村にも展開し、大型車輌の通行を禁止した。
住民に協力を呼びかけるビラを散布
トルコ軍は一方で、無人航空機(ドローン)を使ってイドリブ県内各所にビラを散布し、住民に安全と安定を確保するために協力するよう呼びかけた。
ビラ散布は、ロシア・トルコ軍によるM4高速道路(アレッポ市とラタキア市を結ぶ道路)での合同パトロールの実施に反対し、「尊厳の座り込み」と銘打って、ナイラブ村近郊で抗議行動を行っていたシャーム解放機構メンバーやその支持者を4月26日に強制排除したのを受けたものと思われる(「トルコは「聞き分けのない」シリア反体制派への締め付けを強める」を参照)。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)