トランプ政権で民間人殺害330%増、アフガニスタンでの米軍空爆―オバマ政権末期との比較
2016年の米国大統領選で、「果てしない戦争を終わらす」と訴えたトランプ氏。だが、彼が大統領になった後、アフガニスタンでは米軍の空爆による民間人死者が激増した―米国ブラウン大学のプロジェクト「戦争のコスト」がまとめた研究報告によれば、オバマ政権末期の2016年と比較して、トランプ政権では2019年までに、民間人犠牲者が330%増大したのだという。
○空爆のルール緩和が原因
2001年の米軍侵攻以来、現在も続く米軍と現地武装勢力タリバンとの紛争。トランプ政権は昨年2月、タリバン側と和平に合意したものの、そこに至るまでの犠牲は極めて大きかった。昨年末にブラウン大学政治学部長のネタ・C・クロフォード教授が発表した研究報告によると、オバマ政権末期の2016年では250人であった民間人の犠牲は、トランプ政権下の2017年に295人、2018年には548人と増加した。2019年には、700人の民間人が殺されており、これは米軍のアフガニスタン侵攻の最初の2年間を除けば、他のどの年よりも多い数だ。昨年2月のタリバンとの和平合意後には米軍による空爆は減少したものの、同年10月にも現地宗教学校への空爆で、12人の子どもが死亡し、14人が負傷するなど民間人被害は続いているのだ。こうした民間人被害の増加について、クロフォード教授は「2017年に米国防総省が空爆のルールを緩和したことが原因」だと、その研究報告の中で指摘している。
○アフガニスタン空軍による被害も深刻
米軍主導のアフガニスタンでの空爆では、2014年以降、アフガニスタン空軍も参加しているが、2016年以降、アフガニスタン空軍の空爆による民間人被害は大きくなっており、とりわけトランプ政権でその数は増大。クロフォード教授は「米国はアフガニスタン空軍に対しA29攻撃機を提供し、米軍は空爆の訓練を行っている。アフガニスタン空軍による民間人被害増大は、米国にも責任の一端がある」と指摘。また、アフガニスタン空軍の空爆による被害増大は、アフガニスタン政府とタリバンの和平交渉にも悪影響を及ぼすだろうと、クロフォード教授は懸念している。
○民間人の被害を軽視
トランプ政権はその軍事作戦全般で、オバマ政権時より民間人被害を軽視する傾向がある。英NPO「AIRWARS」の集計及び調査によれば、2017年の米軍を中心とする有志連合による中近東各国への攻撃での民間人被害は、オバマ政権時であった2016年と比較して倍増し、3,923人から6,102人の民間人が死亡したと推定されるという。イラクやシリアでIS(いわゆる「イスラム国」)拠点での攻防が激化していた時期とは言え被害は極めて深刻であり、AIRWARSは「トランプ政権が軍事攻撃における民間人保護の政策を縮小した結果だ」と評している。
○日本も対テロ戦争に加担してきた
今月20日にはバイデン氏が第46代米国大統領に就任する。ブッシュ政権が始め、今年には20年目となる対テロ戦争をいかにして終えるのか。トランプ政権が残した傷跡に対し、バイデン新政権はどう対応するのか。日米安保条約違反にもかかわらず、米国が在日米軍基地を対テロ戦争の訓練地・出撃地として使用することを黙認してきた日本*にとっても他人事ではない。
(了)
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