反重力に関する重要な新発見が話題に!反物質には反重力が働くのか?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「反重力に関する世界初の実験で、重要な事実が判明」というテーマで動画をお送りします。
2023年9月、世界で初めて反物質に働く重力の性質が実証されたと発表され、大きな話題を呼びました。
実験の結果、反物質にも通常の物質と同様に「重力」が働くことが、そして現在の理論の枠組みでは「反重力」に相当するものは存在しないことが判明しました。
●反重力とは?
そもそも反重力とはどのようなものなのでしょうか?
SFなどでよく登場する概念で、もちろんそのようなものが実際に観測されたことはありませんが、理論的に考えられている特性について簡単に触れていきます。
まず通常の重力は、質量を持つ物質がその周囲へと及ぼす万有引力のことです。
質量を持つ物同士は、万有引力によって引き付け合います。
アインシュタインの一般相対性理論では、重力は時空の歪みであると解釈します。
ある質量の大きい物体が存在すると、その周囲の時空が沈み込むように歪みます。
するとその周囲に存在する物質は質量の大きい物体に向けて転がっていく、つまり引き寄せられていくというイメージです。
それに対して反重力は、負の質量や負のエネルギーを持つ物質がその周囲へと及ぼす力であるとされており、通常の重力とは反対方向の、斥力として観測されます。
一般相対性理論において負の質量を持つ物質は、時空を持ち上げる方向に歪ませます。
すると周囲の物質は負の質量を持つ物質から遠ざかる方向へと加速されます。
つまり反重力とは、負の質量や負のエネルギーを持つ物質がその周囲へと及ぼす、重力(引力)とは反対側の「斥力」であるとイメージすると良いでしょう。
○反重力とワームホール
反重力は、理論的にその実用性が囁かれる場面があります。
その代表例として、時空の抜け穴「ワームホール」に関するものが挙げられます。
ワームホールとは2つの離れた場所を直結するトンネルのような時空構造のことです。
しかし、ワームホールの時空構造は不安定なため、すぐに潰れてしまいます。
そのため、ワームホールは現実には「通過不可能」だと考えられてきました。
しかし、1987年には「通過可能なワームホール」が存在可能であることが理論的に示されました。
研究者が考えたのは、ワームホールに負の質量をもつ「エキゾチック物質」を注入するという方法でした。
エキゾチック物質の反重力的な力はワームホールを押し広げ、その崩壊を防ぐ効果があります。
反重力はワームホールの補強材になるのです。
○実在する反重力
これまで行われてきた実際の観測により、宇宙には通常の重力とは逆のはたらきをする未知のエネルギーが実在する可能性が高いことが分かってきています。
この未知のエネルギーは「ダークエネルギー」と呼ばれており、宇宙のエネルギーの約70%を占めていると考えられています。
1929年にハッブルによって宇宙が膨張していることが発見されました。
当初、その膨張は宇宙自身の重力により減速に向かっているだろうと考えられていました。
しかし1998年には、当初の予想とは裏腹になんと現在の宇宙が加速的な膨張をしていることが明らかになりました。
この加速的な膨張の原因については、わかっていないことだらけですが、反重力的な作用をもつダークエネルギーが宇宙に満ちていることが原因である可能性があります。
●反物質に働く重力を検証
私たちの身の回りに存在する普通の物質には重力が働きますが、実は重力が働くことが実験で直接的に確認されてこなかった物質が存在します。
それは「反物質」です。
○反物質とは?
電子や陽子、さらにはそれらが組み合わさってできた原子など、私たちの日常の物質を構成する「通常の粒子」に対して、電荷などの一部の性質が、通常の粒子と反対である粒子が存在し、そんな粒子を「反粒子」と呼びます。
そして単体の反粒子や、その組み合わせで形成された物質を、「反物質」と呼んでいます。
例えば電子の反粒子である「陽電子」も、陽子の反粒子である「反陽子」も、反陽子と陽電子が組み合わさった「反水素原子」も、全て反物質の一種です。
また、反物質を語る上で外せない性質として、物質と出会うと「対消滅」という現象を起こすというものがあります。
対消滅は、物質と反物質の質量が全てエネルギーに変換される現象です。
こういった性質から、反物質は取り扱いが非常に困難です。
例えば容器に保存しようにも、その容器が通常の物質で構成されているため、反物質が触れた瞬間に対消滅してしまうのです。
○反物質には重力が働くか?
反物質は通常の物質同様に、正の質量を持っており、粒子とその反粒子の質量は同じであることがわかっています。
対消滅によって、粒子と反粒子の持つ全質量が過不足なく反応し、正のエネルギーに変換されることからも、粒子と反粒子が同じ正の質量を持っていることがわかります。
では反物質に働く「重力」は、物質と同じなのでしょうか?
一般相対性理論を含む多くの理論では、反物質にも通常の物質と変わらぬ強さの重力が働くと予想されています。
しかし反物質は一部の性質が物質と反対なので、重力の受け方も反対である、つまり「反重力」を受ける、という可能性が完全には否定されていませんでした。
すぐに通常の物質と反応して対消滅してしまうため、反物質の取り扱いが極めて困難であること、さらに反物質を生成すること自体も困難であることなどから、これまで直接的な実験で実証されたことがありませんでした。
○反物質に働く重力を世界で初検証
そんな中2023年9月、世界で初めて反物質に働く重力の性質が実証されたと発表され、大きな話題となりました。
反水素原子を用いて反物質の研究を行う「ALPHA」実験の研究チームは、「ALPHA-g」と呼ばれる縦に長い実験装置を使って、反物質に働く重力の性質を調べました。
実験方法としては、まず陽電子と反陽子を組み合わせた、「反水素原子」を実験装置内に用意します。
粒子同士の電気的な相互作用を排除するため、電気的に中性な反水素を用いています。
装置の上下部分に電流を流し、磁場を発生させ、約100個の反水素原子を真空のパイプ内に閉じ込めます。
反水素原子は-272.7度(絶対零度から0.5度高いだけ極低温)まで冷却し、運動エネルギーを極限まで下げることで、なるべくその場に留まるように工夫されています。
その後徐々に磁場を弱めると、反水素原子は落下もしくは上昇します。
その後対消滅で発生したエネルギーを検知し、落下もしくは上昇した反水素原子の割合を調べます。
もしも反物質に対しても重力が働いていれば、浮上よりも落下する反水素原子の方が多いはずです。
実験の結果、浮上する反水素原子が約20%なのに対し、落下する反水素原子が約80%であったと判明しました。
これは、仮に反物質にも重力が働く場合に想定されていたシミュレーションの結果ともほとんど合致しています。
この結果から、非常に高確率で、「反物質にも重力が働く」と特定できました。
さらに物質にも反物質にも反重力が働かないことから、現在の物理の枠組みでは「反重力は実在しない」という結論が得られました。
しかしまだ課題も残されています。
「反物質にも物質と全く同じ強さの重力が働いている」と言い切るには、今回の実験は精度が不足していました。
今後の研究で、受ける重力の差についても詳細な結果が得られることが期待されています。