台風28号が週明けに沖縄接近
台風28号の北上
強い寒気が南下し、今冬一番の寒さとなっています。
このため、夏のイメージがある台風のシーズンが終わった印象があります。
しかし、フィリピンの東海上の台風28号が、発達しながら北西進しています。
台風を動かす上空の強い風のうち、強い西風(ジェット気流)の位置は、現在、東北地方上空ですので、台風の位置よりはるか北です。
また、日本の南にある太平洋高気圧の勢力も弱く、太平洋高気圧南側の東風も弱くなっていますので、台風を西へ西へと移動させて日本から遠ざけるということもありません。
このため、24日(土)から25日(日)にかけて速度が遅くなったのち、週明けには再び北西進をして沖縄に接近する予報となっていますが、進路予報が難しいことを反映して大きな予報円となっています(図1)。
台風の統計値
気象庁では、昭和26年(1951年)以降の台風について、各種の統計を行っています。
そして、昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)までの30年間の平均値を、「平年値」として公表しています。
台風の年間発生数の平年値は25.6個、年間接近数の平年値は11.4個、および、年間上陸数の平年値は2.7個です(表1)。
ここで、「台風の上陸」は、台風の気圧が一番低い所(気圧中心)が、北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合です。
また、「台風の接近」は、台風の中心が国内のいずれかの気象官署(気象台や測候所、特別地域気象観測所など、全国で約150か所)から300キロ以内に入った場合をさします。
「台風の接近」のうち、沖縄地方、奄美地方のいずれかの気象官署から300キロ以内に入った場合が、「沖縄・奄美への接近」で、年間の平年値は7.6個です。
日本国内への年間接近数が11.4個ですので、かなり多いといえます。そして、11月の「沖縄・奄美への接近」は0.3個です。
つまり、台風が11月に沖縄に接近することはそれほどめずらしいことではなく、3年に1回くらいは11月に接近していることになります。
平成30年(2018年)の台風
今年、平成30年(2018年)の現時点までの台風は、11月22日21時に南シナ海で台風29号が発生したことで、台風発生数29個、接近数は12個、上陸数は5個となり、いずれも平年値を上回っています(表2)。
今年は、あと一ヶ月以上ありますので、発生数、接近数はまだ増えるかもしれません。
なお、タイトル画像で、右下が沖縄に接近する台風28号、左下が南シナ海の熱帯低気圧(約6時間後に台風29号に発達)です。
上陸日時が遅い台風
非常にまれとはいえ、過去に11月に台風が日本に上陸した例があります。
一番遅く上陸した台風は、平成2年(1990年)の台風28号で、11月30日14時頃に和歌山県白浜町の南に上陸しました。
気象庁が台風の統計を取り始めた昭和26年(1951年)以降では、唯一の11月の上陸台風です(表3)。
なお、台風の統計をとり始める昭和25年(1950年)以前では、明治27年(1894年)12月10日に房総半島に上陸した例(図2)や、昭和7年(1932年)11月15日に房総半島に上陸した「七五三台風」などが上陸台風とされています。ただ、これらは、現在の台風基準での上陸であったかというと、観測資料が少なく、疑問があります。
個人的な話ですが、平成2年(1990年)は、気象庁予報課の6人の予報班長の1人として、当番表に従って勤務し、台風が上陸する時には台風上陸情報を書いていました。
従って、台風が上陸するとき、台風の上陸情報を書く確率は6分の1です。
しかし、平成2年(1990年)は和歌山県に台風が4個上陸していますが、4個とも私が上陸情報を書きました。確率的には1296分の1ということになります。
後に、和歌山地方気象台長として和歌山県に赴任しましたが、この時から和歌山県に縁があったのかもしれません。
台風29号は、沖縄に接近したあと、どのような動きをするのか、現時点ではわかりませんが、11月に台風が上陸した平成2年(1990年)は、猛暑の年であったということが気になっています。
最新の台風情報の入手に努めて欲しいと思います。
タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:饒村曜(1993)、続・台風物語、日本気象協会。
表1、表2、表3の出典:気象庁ホームページ。