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今週は台風21号が沖縄県先島諸島を通過して東シナ海へ その後は秋雨前線と台風の危険な組み合わせに

饒村曜気象予報士
台風21号の雲と秋雨前線の雲、及び、その間の雲(10月27日15時)

一時的に弱まった秋雨前線

 令和6年(2024年)10月25日は、西日本から東日本に停滞していた秋雨前線の活動が弱まり、沖縄県・石垣島で31.9度など、全国の11地点(気温を観測している914地点の約1パーセント)で最高気温が30度以上の真夏日となりました(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(10月28日以降は予想)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(10月28日以降は予想)

 また、最高気温が25度以上の夏日が127地点(約14パーセント)ありました。

 ともに、10月末としては多い観測地点数で、平年より暖かいということができるのですが、9月末までの記録的な暖かさからみると、ようやく秋がやってきたということもできます。

 しかし、夏の名残である台風21号がフィリピンの東にあります。

台風21号の北上

 フィリピンの東で西進している台風21号は、風速が15メートル以上の強風域が非常に広い台風で、大型の台風に分類されています。

 この大型の台風21号が進む海域の海面水温は29度以上と、海面水温が台風発生・発達の目安となる27度以上あります。

 このため、台風21号が次第に向きを北寄りに変えながら発達し、10月30日には非常に強い台風となって沖縄の南に接近する見込みです(図2)。

図2 台風21号の進路予報と海面水温(10月28日0時)
図2 台風21号の進路予報と海面水温(10月28日0時)

 そして、先島諸島に接近する10月31日には、中心気圧930ヘクトパスカル、最大風速45メートル、最大瞬間風速65メートルとなって東シナ海に入る見込みです。

 台風21号の情報は最新のものをお使いください

 気象庁は、台風の暴風域に入る確率を3時間ごとに発表していますが、与那国島地方で確率の値が一番大きいのは、10月31日夜遅くと11月1日未明の43パーセントです(図3)。

図3 沖縄県先島諸島で台風21号による暴風域が入る確率
図3 沖縄県先島諸島で台風21号による暴風域が入る確率

 つまり、与那国島地方に台風21号が一番接近するのは、10月31日夜遅くから11月1日未明ということになります。

 石垣市も同じころ台風21号が一番接近しますが、確率の一番大きな値が27パーセントと、与那国島地方より小さな値です。

 このことは、台風21号は、石垣市と与那国島地方の間の与那国島よりを通って北上する予報であることを示しています。

11月2日以降の台風21号は?

 気象庁は、台風の進路予報を5日先までしか発表していませんが、東シナ海に入った台風21号の進路が気になる所です。

 筆者は、昔、月別の台風進路を調べたことがありますが、10月にマリアナ諸島付近で発生した台風の中には、北西進のち北東進して日本の南岸を東進するものがあります(図4)。

図4 10月の台風の平均経路
図4 10月の台風の平均経路

 そして、10月に東シナ海に入る台風はほとんどありません。

 台風21号が東シナ海に進んだ後、上空の偏西風によって向きを東に変えるとすると、図4で示している日本の南岸を東進する台風の平均経路が、少し北にずれ、西日本に接近または上陸する可能性が高いということになります。

 もし、上陸することになれば、平成2年(1990年)の台風28号に次ぐ、2番目に遅く上陸した台風ということになります。

 なお、現在までの遅い上陸台風の1位から3位は、いずれも東シナ海へ入っていません(図5)。

図5 上陸日時が遅い台風の経路図(昭和26年(1951年)から令和5年(2023年)の1位から3位)
図5 上陸日時が遅い台風の経路図(昭和26年(1951年)から令和5年(2023年)の1位から3位)

「台風と前線」という危険な組み合わせ

 今後、日本付近にある秋雨前線は、台風21号周辺からの暖かくて湿った空気の流入によって活発化する可能性があります。

 特に、台風21号の雲と秋雨前線の雲の間にある発達した雨雲の(タイトル画像)の北上には要注意です。

 「前線と台風」という、大雨が降って災害が起きやすくなる危険な組み合わせになりますので、最新の台風情報だけでなく、各地の気象台等が発表する気象情報の入手に努め、警戒してください。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページ。

図4の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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