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台風21号は予報円の真ん中を通ると台湾直撃で衰弱も、予報円の東側ならあまり衰えずに東シナ海ヘ

饒村曜気象予報士
台湾概図(線は1000メートルの等高線)

台湾は高山国(たかさぐに)

 台湾は、九州よりやや小さい島ですが、豊臣秀吉が開国を促した文書に「高山国(たかさぐに)」と称したように、面積に比較して高い山が多い国です(タイトル画像)。

 太平洋戦争以前は、日本の最高峰であったユイ山、当時の新高山(ニイタカヤマ)3997メートルをはじめとして、3000メートル以上の高峰が133座もあります。

 ちなみに、日本で3000メートル以上の高峰は12座です。

 このため、台風が台湾に接近してくると、高い山の影響を受けて複雑な動きをする例が少なくありません。

 今年、令和6年(2024年)の台風18号も、当初は、台湾を縦断して東シナ海に出るころには熱帯低気圧になるという予報でした(図1)。

図1 令和6年(2024年)10月2日6時の進路予報(左)と3日18時の台風18号の進路予報(右)
図1 令和6年(2024年)10月2日6時の進路予報(左)と3日18時の台風18号の進路予報(右)

 しかし、台湾付近で動きが複雑になり、台湾に上陸したあと、南下して南シナ海で熱帯低気圧に変わっています。

台風21号の進路予報

 大型の台風21号は、フィリピンの東にあって、ゆっくりと西南西へ進んでいます。

 この台風は今後、発達しながらフィリピンの東を西よりに進み、次第に進路を北よりに変えて、31日(木)頃は非常に強い勢力で沖縄の南を北西へ進む見込みです(図2)。

図2 台風21号の進路予報と衛星画像(10月28日21時)
図2 台風21号の進路予報と衛星画像(10月28日21時)

 沖縄では30日(水)から11月1日(金)頃は大しけとなり、非常に強い風が吹くおそれがありますので、うねりを伴った高波や暴風に警戒してください。

 気象庁は、台風の暴風域に入る確率を3時間ごとに発表していますが、与那国島地方で確率の値が一番大きいのは、10月31日夜のはじめの28パーセントです(図3)。

図3 沖縄県先島諸島で台風21号による暴風域に入る確率(左は10月28日21時の予報、右は27日21時の予報)
図3 沖縄県先島諸島で台風21号による暴風域に入る確率(左は10月28日21時の予報、右は27日21時の予報)

 つまり、与那国島地方に台風21号が一番接近するのは、10月31日夜のはじめということになります。

 前日、10月27日21時の予報と比べると、暴風域に入る確率の数値が小さくなり、一番接近する時間が少し早まっています。

 また、石垣島が暴風域に入る確率の数値は3割程度に減っています。

 このことは、台風21号の進路予報が前日より少し西よりとなり、与那国島地方から離れて通過する予報に変わったことを示しています。

 台風21号の強度予報をみると、非常に強い台風にまで発達して台湾に上陸後、急速に気圧が高くなって(衰えて)南シナ海へ進んでいます。

台風21号の中心気圧の予報(10月28日21時)

28日21時 980ヘクトパスカル(実況)

29日21時 960ヘクトパスカル(予報)強い台風

30日21時 935ヘクトパスカル(予報)非常に強い台風

31日21時 950ヘクトパスカル(予報)非常に強い台風

1日21時 996ヘクトパスカル(予報)

2日21時 1008ヘクトパスカル(予報)熱帯低気圧

 ただ、これは、予報円の中心を通った場合、台湾を横断して進む場合のものです。

 台風21号が予報円の東側を通った場合は、台湾の山々による衰弱があまりない状態で東シナ海へ進むことになります。

 予報円の西側を通った場合は、台湾の山々に加え、中国大陸による影響も加わって、大きく衰弱して東シナ海に進むことになります。

 台風21号の予報円は、比較的小さいのですが、台湾に近づくと予報円が大きくなり、台風の進路予報が難しくなることを示しています。

 同時に、台湾の山々の影響によって、台風の強度予報はもっと難しくなります。

 こまめに最新の台風情報を入手し、警戒してください

 各地の10日間予報をみると、週末にかけて傘マーク(雨)の日が多くなっています(図4)。

図4 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図4 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 これは、日本付近に秋雨前線が停滞しているためです。

 10月の台風は、日本付近に秋雨前線が停滞しているときが多く、台風が日本から離れていても、前線が活発化して大雨となることがあります。

 台風が離れている場合でも、油断できないのですが、今回の台風21号の場合も同じです。

 「台風と前線」は危険な組み合わせです。

 台風21号が予報円の真ん中を通り、台湾の山々によって勢力が弱くなり、東シナ海で熱帯低気圧に衰えたとしても、これは風についての話です。

 台風でも、熱帯低気圧でも多量の水蒸気を持ち、大雨を降らせる可能性を持って西日本に接近することには変わりがありません。

タイトル画像の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会。

図1、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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