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マツコ氏と有吉氏がバイキングの利用客に苦言! 指摘したブッフェのマナーは本当に正しいのか?

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

ブッフェのマナー違反

ホテルや旅館の朝食、レストランのランチブッフェやブッフェレストランのディナーなどで、ブッフェやバイキングを利用したことがある人は多いかと思います。その際に他の客のマナーが気になったことはありますか。

マツコ「悲しくなってくる」 バイキング会場のマナー違反に「すべて同意」「マジ正論」/grape [グレイプ]

2023年11月3日に放送されたテレビ朝日系「マツコ&有吉 かりそめ天国」で、マツコ・デラックス氏と有吉弘行氏が、バイキングを利用する客のマナーが悪いと苦言を呈しました。

数種類の野菜が並んだサラダバーをグチャグチャにしたまま放置したり、料理の肉ばかり取ったり、割ってしまった味噌汁の豆腐を避けたりと、利己的な振る舞いがあったというのです。

ブッフェの基本マナー

マツコ氏と有吉氏が指摘していましたが、そもそもブッフェには、どのようなマナーがあるのでしょうか。

1958年8月1日に、日本におけるブッフェスタイルの発祥となった帝国ホテルのバイキングが誕生しました。ブッフェのマナーは、このバイキングにおけるマナーや、バイキングのもとになった北欧料理のスモーガスボードの様式をベースとしており、どんな方でも実践できる基本マナーと、やや実践が難しい上級マナーに分けられています。

ブッフェを正しく楽しく味わうためのマナーを提案/一般社団法人 日本ブッフェ協会

基本マナーで紹介しているものは、是非とも知っていただきたいです。基本マナーに従うだけで、ブッフェでの立ち居振る舞いがスマートになります。

・自分の分だけを取る

・全て食べる

・ブッフェ台をきれいに使う

・適度に食べる

・ドリンクを飲み終えてからお替わりする

自分の分だけを取る

ブッフェはあくまでも自分で食べる分を自分が自由に取って食べるスタイルです。自分の分だけを取って、基本的に他人の分を取らないようにします。なぜならば、他の人がどれをどれくらい食べたいのかをはっきりと把握することが難しいからです。同行者の分まで取ると、食べ残した時の責任が曖昧になってしまいます。

全て食べる

ブッフェはあくまでも、好みのものを適量だけ食べるスタイルなので、食べ残さないように注意しなければなりません。ブッフェのもとになったスモーガスボードも、適量だけを取って食べるスタイル。食べ残すと、店は余計な支出が増えるため、料理の質を下げたり、種類を減らしたりするしかありません。そうなると、結局は利用者にそのツケが跳ね返ってくることになります。

ブッフェ台をきれいに使う

ブッフェ台はみんなで共有するので、きれいに使う必要があります。トングやサーバーは使ったら次の人が取りやすいように元の位置に丁寧に戻しておくべきです。ブッフェ台をきれいに使えば、より料理が美しく見え、より楽しく、よりおいしく食べられます。

適度に食べる

「ちょうどいいが いちばんおいしい」ので、限度を超えて食べて、苦しくならないように食べた方がよいです。せっかくおいしいものを食べても、こんなに食べなければよかったと、後悔してしまうのは残念。あともう一皿をやめておくなど、適度にお腹を満たし、おいしい思い出を持ち帰るのがベストです。

ドリンクを飲み終えてからお替わりする

ドリンクもブッフェスタイルの場合には、しっかりと飲み終わってからお替わりします。飲み終わらないうちにお替わりしてしまうのはいけません。ドリンクを残してしまったり、ドリンクを飲みすぎて色々な料理が食べられなくなったりしてしまいます。

上級マナー

上級マナーは、基本マナーができた上で、知っておいてもらいたいマナーです。ブッフェならではの体験を深めることができ、ブッフェをさらに楽しめるようになります。ブッフェの本質に根ざしたものばかりです。

・少しずつ取る

・色々なものを試してみる

・コースで食べる

少しずつ取る

取りに行くことが面倒だからといって、山盛りにするのはやめるべきです。せっかく、料理人が一品一品素晴らしい料理をつくってくれているのに、味が混ざってしまっては残念。料理がくっつかない程度に盛るのがよいです。もしも気に入った料理があれば、何度でも取りに行って大丈夫です。少しずつ取ることによって、適量食べることにつながったり、色々な料理を味わえたりもします。

色々なものを試してみる

少ない種類をたくさん食べるのではなく、様々なものを少しずつ食べるのが、ブッフェの楽しみ方です。ブッフェであれば、一口だけテイスティングすることもできます。新しい食の好みが発見されるかもしれません。同じものばかりを食べないで、食べたことがないものや、予想がつかないものを食べてみて、新しい食味を体験するとよいです。

コースで食べる

ブッフェ台に並んでいるものを、闇雲に取るのではなく、どの料理をどのように食べるのがよいかを考えながら取ります。ブッフェでは、基本的に好きなものから食べてよいです。ただ、軽いものから重たいものへと食べるのが、身体的にも食味的にも自然なので、前菜、主菜、デザートという順番で食べるのがベスト。自分でオリジナルコースを組み立てて、何コースも楽しめれば完璧です。

指摘した内容との比較

ここまでブッフェのマナーを紹介してきましたが、マツコ氏と有吉氏が指摘した内容は適切だったのでしょうか。

前述した「数種類の野菜が並んだサラダバーをグチャグチャにしたまま放置したり、料理の肉ばかり取ったり、割ってしまった味噌汁の豆腐を避けたりする」ことは、ブッフェのマナーでぴったり合うものはありません。しかし、基本的には「ブッフェ台をきれいに使う」に違反しています。

「ブッフェ台をきれいに使う」は、ブッフェ台に置かれている什器やテーブルウェアはもちろんのこと、そこに置かれている食べ物も含んでいるからです。したがって「数種類の野菜が並んだサラダバーをグチャグチャにしたまま放置したり」「料理の肉ばかり取ったり」「割ってしまった味噌汁の豆腐を避けたり」することは、他の人に迷惑をかける行為に該当するので、適切ではありません。

食育にブッフェ

ブッフェは、利用者が好きな時に好きなものを好きなように好きなだけ食べられます。自由な食のスタイルであり、自主性と協調性を養えるので、食育に最適です。中学や高校でも「バイキング給食」が実施されることがあります。

食品のバランスを考える(自主性)

タンパク質を含む「赤」の食品、ビタミンなどを含む「緑」の食品、糖質を含む「黄」の食品をバランスよく食べる

料理を皿に整えて盛る(自主性)

自分のお皿に丁寧に盛る

きれいに片づける(協調性)

使ったトングなどの器具を、次の人が使いやすいようにする

通常の給食では給食当番が配膳しますが、バイキング給食では自分で考えて料理を取る必要があるので、上記のような振る舞いが必要となるのです。

これらを踏まえると、「料理の肉ばかり取ったり」「割ってしまった味噌汁の豆腐を避けたり」という行為は、食育の観点からも正しい取り方ではないと理解できます。

自由と責任

ダイバーシティが尊重される現代。ブッフェは自分らしく食べられるスタイルなので、現代に相応しい“食のスタイル”であるといえます。

ただ、自由と責任は表裏一体です。自分らしく食べながら、栄養バランスも鑑み、他の利用者のことも慮ることができれば、よりよいブッフェの体験となるのではないでしょうか。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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