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阪神タイガース育成4位・川﨑俊哲(日本海L・石川)「僕が目立って活躍して、能登を勇気づける!」

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
恩師・岡﨑太一監督(左)も駆けつけてくれた

■虎入りした日本海リーグの遊撃手たち

 2025年度ルーキーたちの「新人選手入団発表会」が行われた12月9日。タテジマのユニフォームを身にまとったネオ虎戦士たちは、夢と希望に胸を膨らませて会見に臨んでいた。

藤川球児監督を囲んでガッツポーズ
藤川球児監督を囲んでガッツポーズ

 今年は独立リーグから5人が入団し、そのうち2人は日本海リーグからである。

 富山GRNサンダーバーズからドラフト5位指名の佐野大陽選手と、石川ミリオンスターズから育成ドラフト4位指名の川﨑俊哲選手。奇しくも2人は同い年でショート、背番号も同じ「1」を背負っていたという縁がある。ともにOBの鳥谷敬選手に憧れてきたというところも共通しているのだ。

 これまでは敵同士で勝利を争ってきたが、これからはチームメイトとしてポジションを争うライバルになる。

 そんな2人の入団会見に注目した。今回は、ミリオンスターズから初めて虎入りした川﨑俊哲選手を紹介する。

(佐野大陽の記事⇒「日本海リーグから阪神タイガースへ 佐野大陽(富山サンダーバーズ)は『一陽来復』で開幕1軍を勝ち取る」)

佐野大陽(右)はライバル(写真提供:石川ミリオンスターズ)
佐野大陽(右)はライバル(写真提供:石川ミリオンスターズ)

■NPBに入れた喜びと自覚

 終始、笑顔だった。小学生時代やミリオンスターズ時代など、これまでも縁のあったタテジマだが、やはりトップクラスのタテジマは違う。“虎の戦闘服”を身にまとった川﨑俊哲選手は、自然と頬が緩んでいた。

 壇上でも「幼いころからの夢だったNPB選手になれること、タイガースの一員になれることを素直に嬉しく思い、本当にこれから楽しみな気持ちでいっぱいです」と思いきり喜びを表現した。

 と同時に「NPB選手になるという自覚をもって、日々練習や私生活をしっかりやっていけたら」と気を引き締める。

 これまでとは違う。常に見られている。子どもたちのお手本にもならねばならない。自ずと意識も高まってきているようだ。

「楽しみな気持ちでいっぱい」と語った
「楽しみな気持ちでいっぱい」と語った

■誰かのために

 今年、川﨑選手を支えてきたのは地元である能登半島、そして輪島への思いだ。1月1日の地震に9月21の豪雨と大災害に見舞われた故郷に、自身のドラフト指名という明るいニュースを届けたいと懸命だった。

 ミリオンスターズの片田敬太郎コーチから授けられた「誰かのために頑張ることが、一番力を発揮する」との言葉を胸に、能登のため、輪島のためにと汗を流してきた。

 だから、ファンミーティングでの色紙には「誰かのために」と書いた。「野球はひとりでできないんで。チームメイトがいて、家族がいて、ファンがいて…。チームのために、家族のために、ファンのために」との思いを込めて、ペンを走らせた。

 地元の人々は“おらが町のスター選手”のドラフト指名を、それはそれは喜んでくれた。

 「祝福の連絡をもらいました。『能登、輪島に明るいニュースをありがとう』っていう言葉が僕は一番嬉しくて。本当によかった」。

 ほんの少し光を届けられたと安堵した。

「誰かのために」と色紙にしたためた
「誰かのために」と色紙にしたためた

■輪島を、能登を、チャリティ活動で盛り上げたい

 生を受けて高校卒業までの18年間、輪島で暮らしてきた。その故郷の町が一瞬にして、見たこともない光景に変わったことに大きなショックを受けた。

 「僕にとっては恩を返さないといけない場所。その場所が大変なことになって僕自身、悔しい部分があります。輪島の方はみんな、今も悔しくて悲しくて苦しくてっていう生活をしています。でも、くよくよせずに次に向けて進んでいる最中だと思います。僕もそれに続いて一緒に頑張っていけたら」。

 地元を励ましながら、自身も地元に励まされている。

 NPBの選手になったからには、自分にできることはなんでもやると意気込む。先日は他球団の選手たちが能登でチャリティ活動をしたことを知って感謝し、今後は「僕も参加したい。地元を盛り上げていきたい」と自ら手を挙げるつもりだという。

 復興の手助けになるようなイベントに参加し、「野球を好きになってくれる子や元気になってくれる子が増えてくれたら嬉しい」と、子どもたちとふれあっていきたいと考えている。

支配下登録を虎視眈々と狙う育成指名の4選手 (右から)川﨑俊哲、嶋村鱗士朗、工藤泰成、早川大貴
支配下登録を虎視眈々と狙う育成指名の4選手 (右から)川﨑俊哲、嶋村鱗士朗、工藤泰成、早川大貴

■輪島塗の塗師屋を営む父

 川﨑選手の父・哲史さんは輪島塗の「塗師屋ぬしや)」を生業としている。輪島塗は製造工程それぞれの専門の職人による分業制で作られるが、その受注や企画、デザイン、職人たちのとりまとめ、そして販売までトータルプロデュースしているのが「塗師屋」といわれる親方だ。“輪島塗のプロデューサー”というわけである。

 2度の大災害で輪島塗の関係者も甚大な被害を受け、哲史さんもつらい思いをしたが、息子が夢をかなえたことが励みになったという。

 「本人は今年までという覚悟でやっていたと思うけど、わたしは今年ダメでも6年目の来年もやったらいいと思っていた。今は、野球を辞めてもなんとしてでも食べていける。それならとことん夢を追いかけてほしいと思っていたから」。

 息子の夢を全面的に応援していた哲史さんは、息子以上ににこにこ笑顔で語った。

 川﨑選手も地元のPRを求められたときに「輪島はお魚がうまいんで、ぜひ輪島のフグを買ってみてください」と言ったあと、ちゃっかり「輪島塗もお願いします」と父の仕事を売り込むことも忘れなかった。

 初めてもらうお給料の使い道にも「親にプレゼントしたい」とゴルフ好きな父にはゴルフ用品を、母には「一生残るものを買いたい」と答え、親孝行することを誓っていた。

親孝行を誓う
親孝行を誓う

■一問一答

性格:「淋しがり屋」(会場が爆笑)

趣味:「いろんなスポーツ」

好きな歌手:「TWICE」

登場曲にしたい曲:「Lucky」

岡崎太一監督:「めちゃくちゃ優しくて男前な性格」

ファンに一言:「叱咤激励、よろしくお願いします!」

淋しがり屋さん
淋しがり屋さん

■能登のために全力で頑張る

 打撃に自信を持っている川﨑選手は、「直球を一発で仕留められるバッティングの強さだったり、長打力が長所」と速いストレートが大好物だ。岡﨑監督と取り組んだ打撃は今季、目覚ましく成長し、手応えを深めた。

 ただ、これからは相手投手のレベルも上がる。それに対応していくこと、さらには守備や走塁もさらなるレベルアップが求められる。

 目下の目標は支配下への昇格だが、それも「僕の中では通過点だと思っている」と言ってのけ、「レギュラーの座を奪って、しっかり1軍の舞台、甲子園の舞台で活躍できるよう、1軍に定着できるように日々やっていくだけ」と気勢をあげる。

 そして、あらためて宣言する。

 「チームのため、ファンのため、能登のために僕は全力で頑張っていきます」。

 目立つ活躍をすることが、地元を勇気づける明るい光になると信じている。「誰かのために」は、これからも川﨑俊哲の道標になる。

石川ミリオンスターズの端保聡社長(左)も大喜び
石川ミリオンスターズの端保聡社長(左)も大喜び

【川﨑俊哲(かわさき としあき)*プロフィール】

2001年5月2日(23歳)

174cm・82kg/右投左打

輪島高校

石川県輪島市出身/内野手/背番号130

座右の銘「誰かのために頑張ることが、一番力を発揮する」

【川﨑俊哲*今季成績】

39試合/打席151/打数117/安打33/二塁打2/三塁打5/本塁打3

四球27/死球5/三振25/犠打0/犠飛2/併殺打4

打点25/得点24/盗塁15/盗塁死3/失策8

打率.282/出塁率.430/長打率.462/OPS.892

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甲子園球場に隣接する新室内練習場にて
甲子園球場に隣接する新室内練習場にて

(表記のない写真の撮影は筆者)

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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