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「空白の3年間」2023年から3年間、婚姻数は確実に減少し、自動的に出生数も減少する

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

出生数以上に婚姻減

11月7日に人口動態統計の2023年上半期概数が発表された。あくまでまだ概数であり、確定報ではないが、例年概数と確定値にはそれほどの乖離がないためほぼ確定値と見てもよいだろう。

メディアの報道は、多くが出生数が同期間前年比▲4.1%であることを報じているが、むしろ着目すべきは婚姻数の減少である。婚姻数は同期間前年比▲7.6%である。

繰り返し述べている通り、出生数は前年の婚姻数で大体確実な推計が可能である。私が言っている「発生結婚出生数」というものであるが、概ね前年の婚姻数に1.5を掛けたものが翌年の出生数となる。つまり、1婚姻で1.5人の出生になる計算である。

2022年の婚姻数は約50万組であり、「発生結婚出生数」の計算によれば、2023年の出生数は約75万人と推計できる。出生数が上半期と同等の推移で下半期▲4.1%だとすれば、年間出生数は前年約77万人に対して▲4.1%で、約74万人となる。ほぼ「発生結婚出生数」通りといえる。

同様に、2023年の年間婚姻数を推計すれば、約46万組となってしまう。これは、つまりは、2024年の出生数が69万人と遂に70万人を割り込むことになるのである。

結婚に至る3年間

しかし、婚姻数が減ることは、当然なのである。少なくとも2023-2025年の3年間に関して婚姻数が増える見込みは薄い。なぜならば、2020-2022年の3年間に渡って、コロナ禍により、若者はいわば「恋愛ロックダウン」状態にさせられていたからである。

もっとも出会いが多いはずの18-24歳段階、就職や進学で、またはサークルやバイト先で新しい出会いが本来あったはずだが。2020年からの3年間はそれらがことごとく奪われてしまった。

恋愛結婚において、結婚に至るまでの交際期間は、出生動向基本調査によれば平均4.6年である。そんなに長いのかと思われるかもしれないが、これは平均値の罠である。たとえば、10年以上も付き合った上で結婚したカップルが増えればそれだけ平均値は増えてしまう。

平均値に意味はない。

中央値でみれば、以下のようになる。過去記事(世の中の夫婦は交際何年で結婚しているか?平均値ではなく中央値で見る結婚決断の分岐点)でも紹介したものだが、改めて再掲する。平均値が前述した出生動向基本調査のものと微妙に違うのは元データが異なるためである。

これによれば、子無し夫婦の場合は、夫3.12年、妻2.89年と中央値は大体3年である。結婚した夫婦の半分が付き合ってから3年後に結婚をしていることになる。

空白の3年間

話を元に戻すと、「恋愛ロックダウン」により出会いがない3年の空白期間があるということは、当然それだけ恋愛や結婚のきっかけが後ろ倒しになってしまうことになる。その影響が結果として出るのが、まさに2023年からの3年間の婚姻数なのである。

単純に後ろ倒しになるだけならまだしも、本来半分が初婚している20代のうちに出会えなかったばかりに、逆にいえば、2020-2022年の間に出会っていれば(間違って)結婚していたかもしれないカップルの結婚が消滅した可能性も高い。

とはいえ、もはや過ぎたことを後悔したところで仕方ない。

残念ながら、これからの3年間は婚姻数が減るのは必至である。それは自動的に、2024-2026年の3年間の出生数が減ることを意味する。

あり得ないが、万が一劇的に婚姻数が増えるとすれば、それは、伝統的なお見合いや結婚相談所における婚姻数が増えることだろう。なぜなら、そうした出会いの場合の交際期間は平均でさえ1年と短いからだ。

しかし、そんなことは起こりえない。仮に起きたとしても、そういったきっかけでの初婚は全体の1割にも満たないので全体を押し上げるほどの力はない。

3割の恋愛強者には関係ない話

ちなみに、コロナ禍であろうと関係なく男女の出会いを構築していたグループは存在する。学校や職場での出会いがなくても、飲み会やパーティーがなくても、能動的に恋愛関係を作れる「恋愛強者の3割」は、その出会いの場をマッチングアプリなどのデジタルサービスにおいて成就している。

写真:アフロ

2021年出生動向基本調査において、結婚のきっかけで「アプリなどで」が増えたのもそういうことなのだが、これは決してすべての未婚男女に有効なツールとはなりえない。3割の恋愛強者にとっての「街のナンパのデジタル版」でしかなく、皮肉にもリアルでモテる者だけが結果を享受できるツールでしかない。

コロナ禍が明けて、若者の生活も従来に戻り、出会いのきっかけも2019年以前に戻ってはいる。これは喜ばしい事である。これで多くの若者がリアルの場で出会い、恋愛のきっかけとしていくことを期待したいものだが、それが結婚という形で結実するのは早くても2026年以降なのである。

もうひとつ心配なのは、この3年間において恋愛関係を持たなかった若者のうち、それで「別になんとも思わない」と感じてしまった層もいることである。特に、恋愛においては、男女とも25歳までに恋愛経験がゼロであれば、ほぼそのまま生涯恋愛経験ゼロで終わる可能性が高いのだ。

恋愛をするにも最適な年齢というものがある。婚姻およびそれに依拠せざるを得ない出生はこれから3年大いなる試練の期間を迎えるだろう。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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