「金はなくてもモテる男」のおかげで「金があってもモテない男」が増産されていく皮肉
若者の恋愛離れのせいにしたがる人達
昨今の未婚化・非婚化を「若者の恋愛離れ」のせいにしたがる論は相変わらず消えないが、それは間違いである。恋愛離れも何も、昔から恋愛に寄っている人間の割合などせいぜい3割で終始一貫しており、特段最近の若者だけが恋愛から離れているのではない。
そもそも、恋愛力の有無と結婚の可否はたいして関係がない。むしろ、昔は、恋愛力があろうがなかろうが、ほとんどの若者が結婚できる「見合い」や「職場縁」という社会的お膳立てシステムがあったに過ぎない。
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にもかかわらず、そうした「恋愛離れ」論を展開する識者が減らない理由は、識者自身が本当にファクトを知らない無知である場合だけではなく、ファクトは熟知した上で、熟知しているからこそあえて「若者の価値観の変化のせいにしておいた方が都合のいい界隈」があるからである。
若者の経済力が失われた
昨今の男性の未婚率の上昇は、まず先に、前述した「結婚お膳立てシステムの崩壊」と恋愛結婚という名の「恋愛自己責任化の蔓延」により、恋愛力のない者が結婚できなくなる状態を生み出したことによる。
次いで、恋愛力のない者がかろうじて選ばれる要件であった経済力も、「失われた30年」という長い景気低迷により、それすら発揮できる機会が失われてしまった。それどころか、皮肉にも、恋愛力のある男は同時に稼げるようになり、恋愛力のない男は低年収にあえぐ格差も広がった。
つまり、未婚の男が増えているのは、7割の恋愛弱者がせめて自分の弱点である恋愛力をカバーできる経済力すら獲得できなくなったがゆえのものなのである。事実、未婚男性と既婚男性との年収差はどんどん開いていっている。
しかし、こういうと、「金がなくても結婚している男はいる」という反論が来る。
それは中にはいるだろう。しかし、そういう事例があったからといって「金がない方が結婚できる」という話にはならない。そもそも、「金がない結婚は破綻する」という事実の方が多い。
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経済的満足度と恋愛充実度
さて、個人の経済力といっても、それは「年収いくら」という絶対指標では測れない。東京の年収500万円と地方の500万円とでは違う。年収500万円でも満足という人もいれば、1500万円稼いでいても不満という人もいる。それぞれに、その人の置かれた環境によって、経済的な満足度は同じ年収額でも違うものだ。
主観的な「経済的満足度」というものを5段階評価してもらい、その満足度ごとにその人の「恋愛充実度」がどう変化するかを調べてみた。
要するに「経済的に充実していれば恋愛も充実するのか」という点がわかる。対象は、全国の20-50代の未婚男女12648人である。ちなみに「わからない」とした回答を含んでの割合である。
男女ともに「金はなくても恋愛は充実している」と回答したのは20代がもっとも多く、加齢とともにその割合はさがる。未婚男性に至っては、40代以降は1割にも満たない。つまり、「お金のないおじさん」は恋愛対象にならないのだ。まあ、それはそうだろう。
しかし、では「金があればおじさんでも恋愛できるのか?」といえばそうはならない。
「金はあるのに恋愛できない」というパターンを見てみると、男性では20-30代に比べて、40-50代は10ポイントほどあがっている。金があってもおじさんは恋愛対象ではないことになる。男性ほど如実ではないにしろ、この傾向は女性も一緒である。
40歳の壁
ここからわかるのは、「恋愛は金ではない。年齢の問題である」ということだ。明らかに、男女とも「40歳の壁」が存在する。逆にいえば、恋愛するなら、金がなくても構わないから20代のうちにやっておくべきなのだ。「若いうちは仕事に邁進して、金を稼いで…」なんてことをやっていたら、あっという間に「金があっても相手にされない中年」になってしまう。
とはいえ、「若いうちに恋愛しろと言われて簡単にできるなら苦労はしない」という恋愛弱者からの声も聞こえてきそうだ、確かにそれはそうである。しかし、恋愛弱者にお鉢が全然まわってこなくなった原因もまた経済要因だったりするのだ。
恋愛に困らない恋愛強者は、それこそ経済力がなくても恋愛している。かつては、そうした恋愛強者ほど社会人になれば若いうちに結婚していった。しかし、恋愛力があっても経済力のない若者も増えている。
結果どうなるか。
恋愛強者男性は一向に既婚者にならず、片っ端から恋愛をしまくるだけになる。特にマッチングアプリ上では無双状態になる。
そのあおりを食って、恋愛弱者女性は単に遊ばれるだけで婚期が遅れ、恋愛弱者男性はどんなに課金してもいつまでも相手が見つからなくなり、婚期を逃す。弱者男女はそうして、あたら時間を無駄に費やし、気付いたら「選ばれない40歳」を迎えてしまうという悪循環になる。
恋愛強者と恋愛弱者で対立しても意味はない。互いの利益のためには、若者全体の経済力があがることで、恋愛の循環が生まれることこそ望ましいのである。
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