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<book> 豆科植物はいかにして根粒菌と出会ったか 稲垣栄洋著『植物の不思議な生き方』

大野和興ジャーナリスト(農業・食料問題)、日刊ベリタ編集長

<book> 豆科植物はいかにして根粒菌と出会ったか 稲垣栄洋著『植物の不思議な生き方』

 コロナウイルスが猛威を振るっています。もともとウイルスと生き物との関係は微妙ですが、それは自然界全体にいえることです。この本は植物と微生物との関係をわかり易く、かつ面白く教えてくれます。ウイルスとヒトの付き合い方にも通じそうです。

 

 生物学が教えているところによると、植物は生産者、動物は消費者、微生物は媒介者、ということになっています。この三者がお互いつながりあって地球上の生命圏が維持されているわけです。親分はなんといっても植物です。

 とはいえ、別に仲良しで共生しあっている、というわけではありません。おたがい生き残るために足を引っ張りあい、蹴りあい、喰いあい、その結果新しい武器を手に入れて進化し、という繰り返しで今がある。本書はそうした生命世界のありようを、具体的に生き生きと教えてくれます。

 例えば豆科の植物には根粒菌が寄生し、空中の窒素を取り込んで固定し、豆科の植物の成長を助けます。誠にみめうるわしい関係のようにみえます。根粒菌は豆の根が出すフラボノイドという物質に導かれて根毛の先端にたどりつく。根は大歓迎して根のなかに筒状の道を作り迎え入れる。根の細胞が分裂して根粒菌の部屋になる根粒を用意する、根粒菌はここに居を定め、増殖して窒素固定を始める。その結果、豆はやせ地でも順調に成長できる。

 根粒菌は元々地味な性格で、土の中で落ち葉などを食べながら暮らしていた。それが豆科と出会い、特別室まで用意されてがぜん張り切り、一生懸命働きます。この関係を普通「共生」と呼びます。ところが現実は厳しいのです。豆だって根粒菌を養う糖分つくり出さなければならないから出来るだけ節約したい。そこで働きの悪そうな根粒菌は根の中の通り道をふさぎ、養分の供給をストップして見殺しにします。

 根粒菌はぶつくさいいますが、それだって偉そうなことはいえない。彼だってはじめは病原菌としてやってきて豆に感染し、食い物にしてやろうと思っていたのですから、まあ、どっちもどっちです。表もあれば裏もある。

 本書はこんな話が満載です。植物学者でみちくさ研究家。気軽に読みながら生命の不思議がわかってきます。

朝日文庫 214ページ 定価 620円+税

ジャーナリスト(農業・食料問題)、日刊ベリタ編集長

1940年、愛媛県生まれ。四国山地のまっただ中で育ち、村歩きを仕事として日本とアジアの村を歩く。村の視座からの発信を心掛けてきた。著書に『農と食の政治経済学』(緑風出版)、『百姓の義ームラを守る・ムラを超える』(社会評論社)、『日本の農業を考える』(岩波書店)、『食大乱の時代』(七つ森書館)、『百姓が時代を創る』(七つ森書館)『農と食の戦後史ー敗戦からポスト・コロナまで』(緑風出版)ほか多数。ドキュメンタリー映像監督作品『出稼ぎの時代から』。独立系ニュースサイト日刊ベリタ編集長、NPO法人日本消費消費者連盟顧問 国際有機農業映画祭運営委員会。

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