一周回って面白くなってきた、朝ドラ『ちむどんどん』に期待感
朝ドラ『ちむどんどん』が、一周回った感じで、面白くなってきました。
レストランのオーナー、大城房子(原田美枝子)の命令で、「新聞社」や「おでんの屋台」に“臨時出向”したことが大きいですね。
これまで、非常識や無知を恥じないままのように見えた、ヒロインの暢子(黒島結菜)。それが、ここに来て、ぐーんと成長したのです。
何より「他者から学ぶこと」の大切さを知ったおかげで、これまでもどかしかった、唯我独尊の部分が少しずつ解消されてきました。
特に、屋台での体験は、料理人としての今後を変えるはずです。
基本が大切であること。また、自分のエゴを主張するのではなく、食べてくれる人たちを思いやりながら料理を作ること。
当たり前でありながら、実はとても大事なことに、ようやく気づけた暢子。
しかも頭で理解したというより、体験して納得できたことを喜びたいです。
それに、いい言葉が、いくつも出てきましたね。
幼馴染の新聞記者、青柳和彦(宮沢氷魚)のアドバイス。
「もっと地味で、新鮮味はなくても、大切なものがきっとあるはずだよ」
沖縄県人会の会長、平良三郎(片岡鶴太郎)は言いました。
「迷子になったときは、一回入り口に戻る。それが人生の基本だ」
そして亡き父・賢三(大森南朋)は、少女だった暢子と共に料理を作りながら、教えてくれました。
「あせらず、じっくり、丁寧に。基本のだしは、当たり前で地味だけど、それが一番大事」
いたずらに新規性を追うのではなく、あくまでも基本を押さえた上で、新しいことに挑戦していく。
料理に限らず、応用の利く教訓だと思います。
脚本の羽原大介さんが、こうした「いいセリフ」を今後も随時、物語に差し込んでくれたら、とてもありがたい。
さて、トラブル生産機である兄の賢秀(竜星涼)ですが、以前働いたことのある養豚場に戻ったようです。
とはいえ、このまま地道にやっていけるかどうかは不明(笑)。「紅茶豆腐」の失敗から、多少は学んでいればいいのですが。
全体として、暢子の成長物語の側面が補強され、共感を得られるヒロインへと、より近づいてきたことは確かです。
以前、どこか違和感のあったヒロインについて、コラムでこんなふうに書きました。
「脚本も、演技も、そして演出も、暢子というヒロインの造形は本当にこれでいいのか、少し考えてみたほうがいいのではないでしょうか」
2度の“武者修行”を経て、ヒロインの印象も変わってきました。まさに一周回って期待感が出てきた、『ちむどんどん』なのです。