Yahoo!ニュース

日本メディアが報じないタンポンの大不足

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
(写真:アフロ)

まずこの記事は真面目な観点のみで書いていることをお伝えします。

現在、(州にもよりますが)米国でタンポン不足が生じています。トイレットペーパーやマスク、粉ミルクなどコロナ禍で不足したものが多々ありました。そして、その多くは供給が元に戻っています。

しかし、米国ではタンポンは小売店の棚に戻らないままです。

コロナ禍から2年が経った現在、各業者はタンポンの在庫が減少していることを述べています。さらにこの2~3ヶ月は深刻です。

小売店や卸業者にもよりますが、2020年にくらべて50~60%のタンポンの供給が減っています。またネット通販で買おうと思っても、価格がかなり上昇しています。

その不足の理由はサプライチェーンの混乱にあります。工場の重なる閉鎖、材料の高騰、そして物流の停滞です。アジアや欧州で生産したタンポンが米国に運ばれますが、物流コストがかなりの上昇となっています。またタンポンで使用される材料はレーヨン、綿、(プラスチック材料)は他の商品にも用いられるため「取り合い」になっている側面もあります。

●参考「Why Amy Schumer is getting blamed for the national tampon shortage」(https://nypost.com/2022/06/08/tampax-blames-amy-schumer-for-tampon-shortages/

ここには奇妙なねじれがあります。

というのは、この世界は経済的な論理で動いています。その意味ではタンポンの生産が支障を受けるかもしれません。ただ自動車やゲーム機などと違い、生産に支障が出たからといって女性の方々がタンポンの消費を抑制できるわけではありません。

さらにもう一つのねじれがあります。

この手の話は、なかなか公にしづらく、ゆえにタンポン不足が語られない側面があるといいます。ティッシュペーパーと同じく必需品ですから、不足を語らないのは得策ではありません。ただ心理的な制約があるのでしょうか。

現在、消費者と在庫のある小売店を結びつける試みがなされています。ただ、生理用品のような必需品をいかに生産確保していくか。コロナ禍は、もう一つの「経済安全保障」の問題を突きつけてます。

日本も男性の政治家ばかりなので、気づけばいいんですがーー。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

坂口孝則の最近の記事