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『THE SECOND』でも決勝進出! スピードワゴン井戸田の強みとは?

ラリー遠田作家・お笑い評論家
(写真:アフロ)

2022年9月、『ノンストップ!』(フジテレビ)に出演したスピードワゴンの井戸田潤が、モデルの蜂谷晏海と結婚したことを発表した。かつて大きな話題になった女優の安達祐実との結婚・離婚を経て、井戸田が新たなパートナーと人生の一歩を踏み出した。

スピードワゴンは芸歴の長い中堅芸人だが、同世代の芸人の中では後輩の若手芸人との距離が近いイメージがある。若い芸人が出るようなライブに出演することもあるし、レギュラー番組の『スピードワゴンの月曜The NIGHT』(AbemaTV)では、芸人をゲストに呼ぶことも多い。後輩芸人にとっては、優しく親しみやすい兄貴分的な存在なのだろう。5月20日放送のベテラン芸人向け漫才コンテスト『THE SECOND』でも、スピードワゴンはファイナリストに名を連ねている。

コンビの中では気取った名言をナチュラルにつぶやく「セカオザ(セカイノオザワ)」こと小沢一敬のキャラクターばかりが目立っているが、小沢は野心の薄い自由人であり、井戸田がいなければスピードワゴンというコンビが世に出ることはなかった。小沢の才能を生かし、それを支えてきた「縁の下の力持ち」としての役割は大きい。

愛知県に住んでいた頃、井戸田がトラックで小沢の自宅に乗り込んで、そのまま車に乗せて2人で上京したというのは有名なエピソードである。また、『M-1グランプリ』への出場を渋る小沢の尻を叩き、2002年に敗者復活戦を勝ち上がり『M-1』の決勝に進んだ。これが彼らの飛躍のきっかけになった。スピードワゴンがメジャーになったのは、井戸田の積極性があったからこそだった。

井戸田は「ハンバーグ師匠チャンネル」という個人のYouTubeチャンネルを持っていて、そこでは主に趣味のバイクに関する動画を配信している。すでに登録者数41万人を超えている人気チャンネルである。芸人やタレントがゲストとして出演することも多く、井戸田の人柄と人脈とバイク愛が生かされた内容となっている。

スピードワゴンは、小沢が甘ったるい気取ったことを真顔で言う漫才で人気を博した。スピードワゴンと言えば「あまーい」というフレーズで知られているが、この言葉を言っているのは小沢ではなく、ツッコミ担当の井戸田であることを忘れてはいけない。井戸田のよく通る声と迫力満点の顔芸があのネタの隠れた見どころだ。

井戸田が周囲の人々から慕われている理由は、人当たりの良さと愛すべきキャラクターにある。彼は「ハンバーグ師匠」という人物を演じるピン芸でも人気を博した。ある程度の芸歴を重ねてから、この手の間の抜けたキャラクターを全力でやり切れるのはすばらしい。井戸田の人柄と芸人としての器の大きさがうかがえる。

井戸田は同世代の芸人の間ではイジられる側に回ることも多い。番組の企画で愛車のピンク色のバイクを紹介したところ、色がダサすぎるとイジられ、「ソープランドピンク」という屈辱的な名称で呼ばれたりもした。でも、そこまで言われても不思議と悲しげに見えない井戸田の存在感がまた面白いのである。

かつて私自身が取材で話をうかがったときにも、全く気取ったところがなく、気さくな感じが伝わってきて好印象だった。もちろん芸能人の中で悪い印象の人というのもめったにいないのだが、その中でも特に温かい感じだったのを覚えている。

小沢という特殊な芸人を相方にして、スピードワゴンの歴史を作ってきた井戸田には、何とも言えない人間的な魅力がある。結婚を機にさらなる飛躍が期待できそうだ。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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