スターシップを開発中のスペースX、現役の世界最強ロケット「ファルコンヘビー」の歴史を紹介
3月14日、スペースXは次世代の新型宇宙船「スターシップ」の3度目の打ち上げを行いました。実は超強力ロケットという意味では、スペースXはスターシップ以外にも「ファルコンヘビー」と呼ばれるロケットを運用しているのです。
本記事では、ファルコンヘビーの開発の歴史、そして将来計画まで解説していきます。
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■最強ロケット「ファルコンヘビー」とは?
ファルコン9の開発に成功したスペースXは、次世代機である「ファルコンヘビー」の開発に着手します。これはファルコン9の発展型であり、3基のブースターが連結され、それぞれのブースターにクラスター化された9基のエンジンが搭載されているため、合計27基のエンジンを有しています。地球低軌道には約 64トン、火星軌道には約17トンものペイロードを輸送することができます。これは、2002年のスペースX創業時に開発した最初のロケット「ファルコン1」の100倍に到達しています。そして、アポロ計画で使われたサターンVロケットの半分弱にも匹敵するほどです。
さらに、3つのブースターは全て地上に戻るようになっており、再利用が可能です。これにより、一回の打ち上げ費用を他の大型ロケットより格段に安くすることが可能になります。もちろん、ファルコンヘビーは有人飛行も行えるように設計されています。まだ宇宙飛行士を乗せて打ち上げたことはないですが、あまりにも強力なロケットなので、搭乗するのは若干怖い気もしますね。
■最初の打ち上げで見事成功!テスラ自動車が宇宙へ?
しかし、ファルコンヘビーは当初2013年の打ち上げと発表していましたが、数多の失敗が発生しそれから5年後の1号機打ち上げを迎えることになります。イーロン・マスク氏は当初、「成功する確率は良くて3分の2、あるいは半分程かも」と弱気なコメントをしていました。
しかし予想に反して、2018年2月6日に1号機の打ち上げで見事に成功しました!そして、その時の貨物はなんとイーロンマスク氏が所有している自動車のテスラ・ロードスター!!貨物に自動車を持っていくという斬新な発想は本当に驚きました。そして、実は運転席にはStarmanという宇宙飛行士の人形が鎮座しています、非常に面白いですね!!そして、Starmanを乗せたロードスターは順調に火星軌道を超え、小惑星帯まで到達する軌道に到達しました。
ちなみに、サイドブースターは地上への着陸に成功していますが、センターコアは海上船への着陸に失敗してしまっています。
■その後も9回連続の打ち上げに成功中!
2019年の2回目の打ち上げでは、サウジアラビアの人工衛星アラブサットの軌道投入にも成功します。そして、センターコア、サイドブースターともに着陸に成功!おめでとうございます!しかし、回収船が海から陸に戻る途中で倒れてしまいました。惜しいですね。
そして同じく2019年、次は24基もの衛星を3つの軌道に投入するという非常に困難なミッションにチャレンジします。今回は、アラブサットの打ち上げで使用したサイドブースターも再利用されており、初の夜間の打ち上げでした。結果は見事成功!センターコアの着陸には失敗してしまいましたが、ペイロードを格納しているフェアリングを海上船が網でキャッチするという方法で回収にも成功しています。
4回目の打ち上げでは、二つのペイロードを搭載しました。一つは未発表の大型衛星です。詳細は公表されておりませんが、アメリカ宇宙軍による何らかの軍事衛星と推測されます。そしてもう一つは超小型衛星であるTETRA-1です。こちらも同じくアメリカ宇宙軍が所有する衛星です。TETRA-1は地球の静止軌道上で、軍事技術に関する試験開発を支援するとのことです。そして、この打ち上げも見事成功します。
その後、Viasat社のブロードバンド通信衛星や、NASAの小惑星探査機Psycheなど、連続で9回の打ち上げに成功しています。
今後も、エウロパの探査を行うエウロパ・クリッパーの打ち上げなど、既に多くのミッションが確定しているのです。2020年代後半には、NASAの月宇宙ステーション「ゲートウェイ」が建設されるため、ドラゴン宇宙船によるゲートウェイへの補給ミッションとしてファルコンヘビーが使用される予定です。今後の活躍にも大注目ですね。
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