スターシップに繋がるファルコン9の開発、ロケットの再利用を実現した驚きの開発史とは?
3月14日、人類を火星へ送り届けるために開発中の「スターシップ」が3度目の打ち上げを行いました。前回の記事ではスペースXの誕生と、意外にも破産寸前であったロケット開発時代を紹介しました。
本記事では、皆さんも良く知るファルコン9の誕生、そしてロケットの再利用を成し遂げた快挙も解説します。
史上最大の宇宙船「スターシップ」宇宙に到達するも大気圏突入後に空中分解
■スペースXの誕生とイーロン・マスク氏
火星に温室を持ち込む「火星オアシス」というプロジェクトを実現するため、ロシアから大陸間弾道ミサイルを購入したイーロン・マスク氏。しかし、資金調達に失敗し、火星オアシスは頓挫してしまいます。
これを機に、イーロン・マスク氏は自前でロケットを作ることを決意し、2002年にスペースXを設立しました。
■ファルコン9ロケットの開発と宇宙市場の席巻
スペースXが挑むのはファルコン9ロケットの開発です。輸送能力は地球低軌道までで10トンと、最初に開発したファルコン1と比べ10倍以上のパワーアップを目的としています。なお、名前は皆さんお馴染みのスターウォーズに出てくる「ミレニアム・ファルコン号」由来。9というのはロケットに付いているエンジンの数です。
ファルコン9は2010年6月の初打ち上げで見事成功!現在では数日に一基のペース
打ち上げが行われており、世界的に最も多く運用されているロケットの一つです。
輸送能力は国際宇宙ステーションなどが回る地球低軌道に最大でも20トン以上と、世界の主要大型ロケットとほぼ同等の能力を有しています。それに対して、徹底した低コスト化が図られており、打ち上げ価格は約66億円と他のロケットと比較して遥かにやすいという特徴があります。そのため、宇宙開発市場において大きなシェアを獲得しているんですね。
■遂に前人未踏のロケット再利用へ挑戦!!
スペースXは更なる挑戦を行います。それはロケットの再利用というまだ誰も成功していないことだったのです。ロケットの再利用が成功すれば、打ち上げコストをさらに下げることができます。
ファルコン9でのロケット再利用の挑戦は3回失敗してしまいますが、遂に2015年の4回目の挑戦で着陸に成功しました!そして、2016年には海上の無人船への着陸にも成功し、2017年には回収したロケットによる再打ち上げにも成功しました。失敗してもあきらめないことが重要ですね。
着陸方法は4本の脚を展開し垂直に降りていく方式です。この再利用ロケットは、回収後は点検のみで10回の再使用が可能な見込みです。再整備を行うことで、100回以上の再使用が可能になると見込まれています。
■スペースシャトルも再使用されていたけど、どう違うの?
ロケットの再利用は画期的な技術の進歩でしたが、皆さんも良くご存知のスペースシャトルももちろん再使用していましたよね?実はスペースシャトルは40年も前に実用化され、地球と宇宙を何度も行き来していました。
しかしロケットとスペースシャトルの大きな異なる点は、大気圏に再突入するかどうかです。スペースシャトルは大気圏再突入時に3000度の高温にさらされるため、高い耐熱技術を要し、そのメンテナンスに莫大な費用がかかりました。これがスペースシャトルが惜しまれながらも退役となった要因の一つです。
一方、近年開発が進められている再使用ロケットは、第1段エンジンとタンクのみを再使用しています。どういうことかというと、宇宙に到達した部分は再使用していないということです。これにより大気圏突入時の高温対策が必要なく、メンテナンス費を大幅に削減することができたのです。
ファルコン9の開発により、宇宙業界を席巻したスペースX。次は強力ロケット「ファルコンヘビー」の開発に触れていきます。次回の記事をお楽しみに!
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