史上最大の宇宙船「スターシップ」宇宙に到達するも大気圏突入後に空中分解、人類の宇宙進出を担う使命とは
スペースXが開発している世界最大のロケット宇宙船「スターシップ」が、3月14日に3度目となる打ち上げを行いました。最長となる1時間の宇宙飛行を行い、多くの目的を達成することに成功しました。
本記事では、飛行試験の結果、そしてスターシップが担う将来の使命について解説します。
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■宇宙への到達と、軌道上試験の実施
スターシップは、スペースXが開発中の世界最大の宇宙船です。スーパーヘビーと組み合わせることで、牛久大仏に匹敵する全長120メートルとなります。
打ち上げから2分44秒後、スーパーヘビーとスターシップは切り離され、スターシップは高度を上昇し宇宙空間へ到達します。二回目の打ち上げでは、宇宙空間到達後に余剰の推進薬を廃棄しようとしたところ、火災が発生し制御不能に陥り、自律破壊となっていました。しかし、3回目となる今回の打ち上げでは、スターシップは宇宙空間での安定した通信の確立に成功しました。
今回は二つの宇宙実証を行います。まずは、将来にスターシップに荷物を搭載することを想定した、世界最大のペイロード用ドアの開閉試験が実施です。このドアは、スペースXが構築している地球通信網、スターリンク衛星のために使用されるとのことです。
そして続いて、搭載燃料を機体内で移送させる試験も実施しました。スターシップはNASAにより、月着陸船にも選定されています。その際に、スターシップは地球軌道上での燃料補給船として活用されることが計画されており、今回はその技術検証を行ったのです。
■大気圏へ再突入するも、空中で分解!?
打ち上げから約1時間後、スターシップは再び地球の大気圏へ突入し、インド洋へ着水する予定となっていました。宇宙船が超高速で大気圏へ突入するとき、逃げ場がなくなった大気が圧縮され、最大1900度の高温に到達します。大気圏へ再突入したスターシップからは、鮮やかに燃え上がる機体と美しい地球の映像が映し出されていました。
しかし、それから間もなくスターシップからの信号が喪失。機体は大気圏突入の負荷に耐え切れず、空中で分解した可能性が高いとのことです。
しかし、過去の二回の打ち上げと比べると大きな進展であり、火星への有人飛行へと近づく成功を収めました。
■スターシップが担う月と火星ミッションとは!?
スターシップは、NASAが推進している月面開発プロジェクトである「アルテミス計画」においても重要な役割を担うことが決定しています。NASAによりスターシップは有人月面着陸船に選定されており、2026年に宇宙飛行士を月面へ送る使命も背負っているのです。そして2024年以降には、実業家の前澤友作氏がスターシップに搭乗し、月の裏側を通過し地球へ戻ってくる往復飛行も予定されています。
そしてマスク氏は、火星への有人着陸もこのスターシップで2020年代後半に実現することを目標としています。スターシップの開発の最終目的は、巨大なロケットと宇宙船からなる「惑星間輸送システム」を開発し、一度に100人規模の人間を火星に送り込み、そして40~100年かけて、火星に人口100万人以上の自立した文明を築くこととのことです。
壮大なスケールの使命を背負ったスターシップですが、一歩づつそのゴールに向けた歩みを進めています。これからの打ち上げにも大注目ですね。
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