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流れ星に願いを! -夏の風物詩、ペルセウス流星群が8月12日極大に-

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
四方八方へと群流星が飛ぶ様子(2016年8月12日~13日合成)提供:国立天文台

今週見ごろを迎えるペルセウス座流星群

長かった梅雨も明け、8月は家族揃って星空を楽しむ季節です。今年は木星や土星が見やすい位置にいますが、天の川や夏の星座と並んで、毎年の夏の夜空の楽しみは「流れ星」見物という方も多いのではないでしょうか?

毎年、この時期に注目されるのが、比較的安定して毎年出現する三大流星群のひとつ、ペルセウス座流星群(以下、ペルセ群と表記)です。人工光に邪魔されない暗い夜空の下では、1時間あたり数十個の流星が観測されることもあります。極大の時期が月遅れのお盆の時期ですので、夏休みとも重なり、毎年、多くの人びとが注目する流星群です。

今年のペルセ群は、8月12日(水)22時頃に極大を迎えそうです。通常の年でしたら、秋の星座ペルセウス座が空高く上がる夜半過ぎの観察をお勧めしていますが、今年は8月12日が下弦の月のため、後半夜は月明かりで見える流星の数が減ることでしょう。このため、今年は極大時刻の前後、すなわち21時前後からの観察をお勧めします。といっても、流星群が活動するのは12日の晩のみではなく、ペルセ群の場合は例年7月20日頃から8月20日頃まで出現が確認されています。したがって、極大日のみに注目するのではなく、その前後の晩で晴れていて観察出来る日があれば、夜空を見上げることをお勧めしたいと思います。

ペルセウス座の方向にある放射点(流れ星の経路を逆戻しした際に、経路が重なって集中する点のこと)は、夕方には地平線の上にあります。しかし、実際に流星がよく流れるのは、放射点の高度が上がる午後9時以降でしょう。明け方まで放射点は高くなり続けるので、月明かりの影響が無い場合は、真夜中頃から空が白み始めるまでが観察しやすい時間帯です。

今年のペルセウス座流星群の見え方 (提供:国立天文台)
今年のペルセウス座流星群の見え方 (提供:国立天文台)

流れ星の見つけ方とは?

流星(流れ星)を見る方法について説明します。流星見物では、望遠鏡や双眼鏡は必要ありません。肉眼で観察しましょう。望遠鏡や双眼鏡を使うと見える範囲が狭くなってしまうため、一般の方の流星観察には適しません。

まず、どんな場合でも屋外に出てから、暗闇に目が慣れるまで、最低でも10分間は目を慣らすようにしましょう。人間の目の瞳孔は明るい所で小さく、暗い所で大きくなりますが、その順応には時間が必要です。個人差がありますが、一般に10分以上は必要と言われています。また、地上の明るい光源(水銀灯やネオンサインのような街明り、車のヘッドライトなど)が観察中に直接、目に入ってこないように注意することが重要です。明るい光が予想される方向には背を向けたり、帽子や団扇などで光を遮るようにします。

流星は空のどこを飛ぶかはまったく予測が付きません。よく開けて空の広い範囲が、比較的暗く見える方向を注視し、目を慣らしてひたすら流星の出現を待ちます。北東の空、放射点のあるペルセウス座でのみ流星が見えるのでは全くありません。放射点近くでは、ゆっくりとした動きで短い経路のみ輝きます。一方、放射点から離れた方向では、素早い動きで長い線を引いて輝きます。したがって、放射点の位置を確認しておけば、自分の見ている方向では、どちらの方向からどちらに向ってどんなスピードでペルセ群の流星が流れるかを予想できます。

毎晩、ペルセ群のような流星群の流星(群流星と呼ぶ)のみならず、散在流星といって、どの流星群にも属さない流星が、夜空のあちらこちらをアトランダムに流れています。年間通じて、散在流星は毎晩1時間に数個以上は出現していますので、流星群出現予報のない晩でも流星を見ることが出来ます。流星が飛んでくる方向によって、ペルセ群のような群流星か散在流星かを区別することが可能です。

虫に刺されないような防虫対策をしっかり行い、リラックスした服装・姿勢で無理をせずに、なるべく長い時間観察できるように準備しましょう。ベンチや椅子を用意することや、地面にレジャーシートなどを敷いて横になるものよいでしょう。必ず、3密を避け、熱中症や防犯、車の事故等にも充分気をつけて、流星見物を楽しんでください。

流星とは何か?

流星は、宇宙空間にある直径1mm~数cm程度の塵粒(ダスト)が地球の大気とぶつかり、地球大気や気化した塵の成分が光を放つ現象です。流星には、散在流星と群流星があります。散在流星とは、いつどこを流れるか全く予測が付かない流星で、群流星とは、ある時期に同じ方向から四方八方に飛ぶようにみられる流星のことです。一方、群流星が飛んでくる方向を放射点(または輻射点)と呼びます。放射点がどの星座に含まれているかで、その流星群の名前が決まります。ペルセ群の場合、放射点はペルセウス座ガンマ星の近くにあります。

流星の多くは彗星が地球軌道上に残した塵粒(ダスト) 提供:国立天文台
流星の多くは彗星が地球軌道上に残した塵粒(ダスト) 提供:国立天文台

流星のうち金星よりも明るい流星も稀に出現します。これらは「火球」とも呼ばれ、今年7月2日未明の関東地方の火球のように隕石となって地上に落下する場合もあります。流星の起源となる太陽系内物質は主に小惑星起源のものと彗星起源のものがあります。隕石を残すような火球の場合は小惑星起源であることが普通です。一方、流星群の場合はそのほとんどが彗星起源の物質です。彗星は太陽に近づいた際、上図のように塵粒を彗星の通り道(軌道)上に放出します。もし、その彗星の軌道が地球の軌道と交差していたら、地球が毎年、その位置に来た際に、彗星軌道上に残っている塵粒が地球の大気に飛び込んできます。地球が彗星の軌道を横切る日時は決まっていますので、毎年同じ時期に流星群が出現します。この際、地球軌道と彗星軌道が交差している方向に見える星座から流星が四方八方に流れるように見えるのです。流星が飛び出す中心となる点を「放射点」と呼び、放射点のある星座の名前をとって「○○座流星群」と呼ばれることが通常です。

ペルセウス座流星群の母天体は、スイフト・タットル彗星(109P/Swift-Tuttle)で、太陽の周りを約130年の周期で公転しています。

なお、三大流星群とはペルセ群の他、1月のしぶんぎ座流星群、12月のふたご座流星群です。

参照先:

国立天文台ほしぞら情報「ペルセウス座流星群が極大(2020)」 

インターネット天文学辞典「流星」

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。国際天文学連合(IAU)国際普及室所属。国立天文台で天文教育と天文学の普及活動を担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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