「日本は虚偽の情報を流している」? 日韓首脳会談の内容を隠し通そうとする韓国政府が日本にクレーム
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領のスポークスマンである韓国大統領室はここ数日間、日本のメディアが「日韓首脳会談に関して虚偽のニュース、情報を流している」と、不快感を露わにし、すでに韓国の外交当局が日本の外交当局に「遺憾を表明し、再発防止を要請した」と語っていた。また、「度が過ぎる場合は、外交チャネルを通じて適切に対処していく」とも述べていた。
特に日本の言論機関に対しては「何の根拠もなく、書いておきながら後に事実でないことがわかってもこっそり交わしてしまう形態が日本の言論にあるのかもしれない」と、侮辱し、「韓国の言論形態はそうでないことを望んでいる」と述べ、韓国のメディアに事実でないことを書かないよう、日本のメディアに惑わされないよう釘を刺していた。
また、韓国の外交当局者は「首脳会談で岸田首相が2015年の『日韓慰安婦合意』の履行を求めた」との日本の報道に韓国メディアや野党が事実確認を求めたことに対して「国内で政争にするのは望ましくない」と述べ、「首脳会談での具体的な内容については外交慣例上、明らかにできない」と、元慰安婦問題が日本から提起されたかについての言及を避けていた。
日本では首脳会談では元徴用工問題以外にも元慰安婦問題、福島など東北・関東8県の水産物の輸入規制なども話し合われ、岸田首相が「日韓慰安婦合意」の履行と輸入規制解除を求めたと報道されているが、韓国政府は領土問題や佐渡金山のユネスコ世界遺産登録問題も含めてそれら問題で議論があったことを何一つ認めていない。
岸田首相が「日韓慰安婦合意」の履行を求めたのが事実ならば、「合意」を尊重している尹大統領としては韓国側が合意で約束した駐韓日本大使館前の慰安婦像を撤去しなければならないし、在外韓国人団体による米国、カナダ、豪州、ドイツなどでの慰安婦像建立も止めなければならない。
尹大統領が訪日前から日韓の懸案については「グランドパッケージで解決する」と公言していたのは周知の事実である。ということは日本が半導体素材の輸出規制解除に応じ、韓国を「ホワイト国(優遇対象国)」に再指定すれば、尹政権としても2013年9月から輸入を禁止している福島などの水産物の輸入も解禁しなければならないし、併せて事故にあった福島原子力発電所の「処理水」の海洋放出も容認しなければならない。どれもこれも現状では国民の反発が強く、韓国政府が難色を示している問題である。
韓国政府は「議論していない」と言い張っているが、日韓首脳会談は約85分と長時間にわたって行われていただけにこれらの懸案が話し合われないほうがむしろ不自然で、おかしな話だ。
(参考資料:日韓首脳会談の謎 日本「竹島についても話した」 韓国「話はなかった」 どっちが本当?)
思えば、「日韓慰安婦合意」の時も安倍政権が元慰安婦への「支援金」として10億円払ったのに韓国が合意事項を履行しなかったことから日本では政権与党を中心に「振込詐欺にあった」との反発の声が上がったことがあった。当時、韓国内でも「日本政府がこれほどまで不満、抗議を露わにしているところをみると、朴槿恵(パク・クネ)政権は慰安婦問題で何か裏で合意を交わしたのでは」と疑う向きがあった。
朴政権は実際には安倍政権に慰安婦問題で「前向きの対応」を約束していた。しかし、野党がこぞって反対し、加えて国民もノーを突きつけ、さらに総選挙で与党が大敗し、過半数割れしてしまい、レームダックに陥ってしまい、結局は慰安婦像の撤去問題では引くに引けない立場に追い込まれてしまった。
尹政権は朴政権同様に野党や国民の反発を恐れ、「やってもやっていない」と隠し通そうとしているならば、朴政権の二の舞になりかねない。
朴政権はかつて、ソウル駐在の産経新聞特派員を「大統領の私生活について虚偽の記事を書いた」と名誉棄損で告訴したことがあったが、勝訴したのは「産経」であって、朴政権の完敗に終わった。
今回も、クレームを付けられてしかるべきは「話し合ったのに話し合っていない」と詭弁している韓国のほうで、日本のメディア報道に非はない。